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16話 ビキニアはビキニ

ストーリーはゆっくり進んでいきます。

「よっこらしょ」

ソファーに寝転んでぐーすか寝ているケンの腹にどすっと座った。


潰されたカエルのような声を出してケンは目を開けた。

「てめー何してんだ」

「何って。座ってるだけ」

「なんで、俺の上に座ってるかって聞いてんだ」

「ムカつくから。あの2人は喧嘩始めるし、ケンは寝ちゃうし…。結局何で私を連れてきたの?」

「さっき言っただろ。お前ふらふら街歩かせたら何起こるか分からないからな」

「今までそんな事なかっ・・・」

「あったのか?」


ソラが話しの途中考え込んで顔がゆがむ。


「ないない。あれは私を狙ってたわけじゃないし」

「何があった」


ケンが勢いよく起き上がって私は腹からずるっと落ちて膝に収まる。


「何もないよ!怪我してる人助けただけだし」

「お前は何もされてないんだな?」

「うん」


嘘をついた。孔明さんを狙っていた刺客から殺されかけたんだけどね。そんな事ケンに言ったら、ここから出して貰えない気がしたから。


「それで、私は何すればいいの?」

ケンの膝に座って妙に距離が近くて昨日の夜の事を思い出して恥ずかしくなる。ソラは立ち上がって椅子に座りなおした。


「イエローロウズは貴族から王族関係者も来るのは知っているな?」

「うん。あそこ入るのに身分証明書必要だもんね」


イエローロウズは高貴な方御用達のお店で、入るには貴族、王族そして金銭の余裕が確認できる身分証明書が必要だ。それ以外の人が入るには先程の人たちの紹介状が必要になる。

まぁ~私はアンナのおかげで顔パスなんだけど。


「あの店では機密情報が集まるんだよ。酒飲んで口が軽くなった奴は聞きもしねーことべらべら喋ってくれる。アンナはあの店で情報収集して貰ってんだ。んで、フィダには必要な情報は配便の書類や手紙を見て集める。それと、今ここにはいないが街の噂はシンフォに任せてる。基本この3人を中心に下の奴らを統括して貰ってんだ。」

「それで情報って集まるの?」


いつの間にかアンナとフィダはソラの向かいに座り直してお茶を飲んでいた。


「情報って不思議なんですよ。小さなピースをたくさん集めると全部が繋がってくるんです。どんな小さな事でも集まれば大きな事件に関わっていたりとか」

フィダはニコニコしながら紅茶を一飲みした。


「ケンは何してるの?」

「俺は、客に金と引き換えに情報を与える」

「場所は?ここ基地だよね?ここに呼んだら私達の身元バレバレじゃない?」

「場所はイエローロウズだ。配便に情報が欲しい人間は手紙を送って貰って俺が仕事を受ける事になったらイエローロウズの通行証と時間、日付を書いて返信して会う。もちろん覆面」

「結構手の込んだことやるね」


アンナが私に入れてくれた紅茶を飲む。おいしいと呟けばアンナはニコリと笑った。


「それでも、情報が欲しい人は自分からやってくるわ。それくらい情報って価値があるのよ」

「でも、アンナがイエローロウズで働くのは同じ女としてあまり嬉しくないよ」


ソラは肩肘をついて手元のカップのふちを指でなぞる。

「ありがとうソラ。でも、気に入らない客は夢香(ユメコウ)で眠って貰ってるわ」

「夢香?」

「眠り薬と似てるけど、眠った後興奮状態になって情事と同じ気分になるお香なの」

「アドレナリン出るって事か…そんなお香があるんだね。ナイトドラックって言うのと似てるな~なんか世の中怖い」

「王都に来る前は田舎で暮らしていたの。薬草とかには詳しいのよ。夢香も自分で作ったの。私は武術は滅法弱いから身を守るにはこれ位しかできないの」


アンナの顔に暗い影がさした気がした。


「そんな悲しい顔しないで。ソラが悲しいのは嫌よ。そうだ!ソラにも夢香あげるわ!」

「えっ。いや、い、いらない!困ってないし」

「何言ってるのよ。女も性欲はあるのよ!それより、そのナイトドラックって何?」

「い、いらないってば。そういうの興味ないし!男作る気ないし!!」


真っ赤になったソラは恥ずかしくなってうつ伏せになった。


「あら・・・。もしかしてソラ処女な「わーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!もうこの話やめようよ!!」」


立ち上がってバンとテーブルを叩いたソラ。首まで真っ赤にして若干涙目だ。男の前でこう言う話をするべきじゃない。確かに、元の世界でも周りの同級生は皆いい大人でそういう事は済んでいる。静香だって、可愛い顔して別れた彼氏と同衾している。こういう色のある話はソラは苦手で今まで避けてきた。恥ずかしいので、そっちの話をしていると真っ赤になって皆に興奮しているんだとからかわれる。それが凄くいやで安い女みたいに見られるのが嫌でたまらない。


フィダは照れているソラを流し見てケンを見ると、にやりと嬉しそうな顔をしている。どの世界の男も好きな女が処女で初めての相手が自分だととてつもなく嬉しく興奮する。


"獣の顔"だとフィダはケンの顔を見て思った。


「おい。ソラ」

「な、なに?」

「お前は、俺の傍で動け。それがお前の仕事だ」

「わかった…。私は頭冷やしてくる。街行っていい?」

「街?俺も行く」

「え、いいよ。一人で行けるし。下着とか見て回るから」

「じゃあ、私と行きましょうソラ!!女同士でデートも悪くないわ!貴族街に新しいカフェが出来たの知ってる?」

「チャイって名前だっけ?」

「東南の方にある国から来たチャイっていう飲み物が売りなんですって!美味しいケーキもたくさんあるって言っていたわ」


元の世界にもインドなど香辛料を使う国でよく飲まれている甘いミルクティーがある。それなのかな?それにしても飲み物の名前をそのまま店の名前に使うなんてセンスないわ…。


「貴族街入るには通行証が必要だよ?どうするの?」

「フィダさん。通行カード」


アンナが左手をフィダに向けるとカードを乗せる。


「・・・。フィダさんそんな生き方で本当にいいんですか?可哀想に見えるんですけど」

「私のすべてはアンナのものです」

「駄目だ。この人」


本当、都合のいい男に成り下がっているフィダさん。


「男たちは放っておいて行こうアンナ」

「そのままで行くつもりなの?」

「そのつもりだけど」

「駄目よ!!配便の仕事で行くわけじゃないんだから、お洒落しましょう!」

「私はいいよ。こっから貴族街行くにはスラム街通るしアンナ守るには私だけでも動ける格好しなきゃだし。この格好が一番矢射りやすいしさ」

「そんなのは男に任せればいいわよ!」

「下着見に行くんだってば」

「下着位いいじゃない!海水浴場ではビキニア着るんだから下着屋一緒に行くくらい問題ないわ」


ビキニアってもしかしてビキニ?この国でも海で遊ぶのかな?娯楽は結構元の世界と似てるんだ。


「さっき、二人で行くって言ったじゃん」

「途中まで行って貴族街は二人で入りましょう。そっちの方がずっと安全よ」

「・・・。分かった」

「決まりね!こっちに来て!」

「ちょ、ま。まって」


腕を掴まれ隣の部屋に連れていかれるソラ。

その様子をただただ見る事しかできないケンとヒィダ。自分たちに了承も得ずに護衛することが確定してしまった。


「強制でしょうか」

「だろうな。断ったらアンナが怖そうだしな」




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