閑話1
閑話です。この世界に来て間もない頃…でもないかww
朝から体調がおかしい。この世界に来て26日が過ぎた頃だろうか。朝早く起きて早めに就寝と規則正しい生活をしているせいかすこぶる体の調子が良かったのに今日は朝起きるとき体がだるかった。
ソラは毎日、この家の誰よりも早起きをする癖がついた。顏を洗ってから、まず暖炉と台所に火をつける。それから、朝食の準備をする。これが毎日の日課になっている。
暖炉に火を灯し立ち上がろうとしたら足に上手く力が入らない。視界がぼやけてそのままガタンと音を立てて倒れるソラ。
あれ…力が入んない…。床冷たい・・・。
「はよ~~~」あくびをしながら二階から降りてくるケン。いつもなら、おはようと返ってくるのに何もない。
「お、おい!」
暖炉で温まろうと視線を向けるとソラが寝間着のまま倒れている。
倒れているソラを抱き起して、顏を覗く。顏が赤く体温が高いのが分かった。額に手を持っていくとやっぱり熱があるようだった。
「あっつ…」
「ケ…ン?力、はいんない…」
「熱あるからな」
目をうっすらと開け潤んだ目でケンを見る彼女。その目に少しドキッとしたケンだが、素知らぬ顔で彼女を抱き上げる。
二階のケンの隣の部屋が空の部屋だ。ゆっくりベットにおろす。
「ったく無理してんじゃねーよ」
「うっ・・・うん。ごめんなさい」
布団をかけて薬と水を取りに行こうとしたケンの服の袖を掴むソラ。
「・・・」
潤んだ瞳に少し肌蹴た首筋でそんな事をされたらどんな男でもクラッと来る。
「薬取ってくるだけだ。今日はどこにもいかねーよ」
そういって、ソラの頭をわしゃわしゃ撫でてから薬を取りに行った。
ケンが出て行ったのを見計らってソラは力の入らない足で立ち上がる。全身の節がギシギシと音を立てて今にも崩れそう。吐きそうだし、くらくらして歪んで見える視界。でも、全身熱くて汗をかいた寝間着を着替えようと箪笥から新しい寝間着を取り出した。
寝間着のボタンを上から外していくとスルリと滑り落ちる。
「薬もって――――――――――」
バタンとドアが閉まる。
しかし、部屋のドアを開けたケンの事にソラは気づいていない。高熱が出て周りの音が遠くなっているからだ。
一つ一つの動きが全てだるいが頑張って、新しい寝間着に腕を通しベットに戻った時には目を開ける気力すらなくなっていた。
そして、いつのまにか入ってきたケンにされるがまま薬を飲まされ眠りについたのだった。
―――――――――――――――――――――――
朝いつものように朝の挨拶をしながら一階に下りると返事がないことに気づき台所の火がついてないので暖炉もついてないだろうと思い視線を向けると、あいつが倒れていた。
長い黒髪が散っているのが綺麗だと一瞬思った。
何考えてんだ俺。
急いであいつを抱き上げて額に手を置くと熱い。いつも、減らず口ばかりでムカつく女だと思ったけど俺が教える事に文句を言った事は一度もないし一生懸命なのは知っていた。でも、バカみたいに食ってたくせにここ最近食が細くなったとは思ったけどあいつ自身「あ~ダイエットダイエット!最近太ってきたからさ~」また分からない言葉を使って痩せるために食べる物を減らしているのかと思っていた。
「ケ…ン?力、はいんない…」と潤んだ目に体がびくっと反応してしまった。
「熱あるからな」とごまかす。
なんだこの色気・・・。
足に腕を通し抱き上げると、思っている以上に軽かった。こいつは街の女と比べると随分背が高いし体重もあると思っていたが、思いの外軽くて驚く。ここまで弱っていたとは気づかなかった。
あ~くっそ。なんだよ。
ベットにおろし布団をかぶせる。
「ったく無理してんじゃねーよ」
「うっ・・・うん。ごめんなさい」と言って出ていこうとする俺の袖をつかむ。
「・・・」
くっそーーーーーー!!!!さっきからなんだ、こいつの無駄な色気はよ!
潤んだ瞳と細い首筋に胸が熱くなるものがある。
薬をとってくると言って、こいつの頭を撫でてから部屋をでる。
先月買っておいた、解熱剤と水と布を持って階段を上がり、ソラの部屋のドアを開ける。
「・・・」
バタンと急いで閉める。
そしてズルズルとその場に座り込む。
「くっそ!・・・あのバカが!」
普段俺が起きるころには着替えて、髪を一つにまとめて高いとこで結んで俺があげた簪を挿している。下している髪型と普段みない寝間着の格好だけでもこたえるって言うのに、寝間着を脱いで下部下着だけ身に着けている彼女の体を見てしまった。
すらっと長い脚、細い腕、ちょうどいい丸みの肩に鎖骨の見えるところ、そして、ふっくらとした胸・・・
「あ~~~~~。これはねーだろ」
真っ赤にした顏に手を当て悶えるケン。
それからしばらく経って落ち着いた頃に部屋に入ると、着替えた彼女がベットに横になっていた。
目を閉じて苦しそうに呼吸をしている。
「薬持ってきたぞ」
体を起こしてあげて、口に薬を入れコップを口元に持っていき傾けるとゴクゴクと音を立てながら飲み干す。口から洩れた水が首筋を通り胸元に流れる。
ふっくらと膨らみが見えるそこに無意識に視線を移してケンはまた後悔する。
うあぁぁーーーーー勘弁しろこの馬鹿女!!!俺の精神どんだけ削るつもりだアホが!!
それから、彼女を横にすると静かに呼吸をして眠りについたのだった。
次の日にはすっかり元気になっていた。
「おはよう!ケン!昨日はありがとう」
夜中に落ち着いてきたソラの症状。数時間仮眠を取っていつもと同じ時間に下りていくと、元気なソラがいた。
「昨日のお礼もかねて、早起きしてパン焼いたんだよ!はじめてにしては上出来!」
そう言って、ケンの腕をつかんだ。
ビクッとするケン。
「はいはい、座って!」
食卓の椅子を引いてケンを座らせるため肩を掴む。
ビクッ。
「感謝してねソラ様があーんをしてあげる!はい!あーん」
焼きたてのパンを一口サイズにちぎってケンの口元に持っていう。
なんだよこれ!!!
「くっそーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」
真っ赤な顏を隠すため、そして込み上げてくる熱いものを落ち着かせるためテーブルに頭を打ち付けるケンであった。
―――――――――――――――――――――――
「でね、おじいさん!昨日のお礼もかねてパンをあーんしてあげたんです。友達の静香が男はあーんしてあげて喜ばない人はいないっていうから大サービスしたんです・・・そしてら、急に叫びだしてテーブルに頭打ち付けたんですよ!可笑しいでしょ!ついに気が狂ったのかなって可笑しくって私」
腹を押さえて大笑いしているソラ。
「不憫なケン…」
おじいさんが小さくつぶやいたのだった。