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真・恋姫†無双~北刀伝~  作者: NOマル
第三章~乙女大乱三国志演舞~
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~五十猛、徐晃と親交を深めるのこと~

またまたお久しぶりです


目的地である領地に到着。曹操が用意した書状を見せ、そのまま領主である曹洪の元へと案内された。

扉を開くと、一人の少女が書類を相手に筆を走らせていた。少女は一行に気づき、筆を置いた。


「シャンさん、ご苦労様でした」


微笑みながら、金髪の少女は労いの言葉をかける。それに対し、首肯で応えるシャンこと【香風】、またの名を【徐晃 公明】。


「客人の皆様。遠路遥々、ようこそ、おいで下さいました」


椅子から立ち、スカートの裾を摘まみ上げ、淑女らしい挨拶を行う少女。


「曹家が一人、名を【曹供】。字は【子廉】と申します。以後、お見知り置きを」

「は、初めまして。糜竺と言います」

「び、糜芳です!」


曹操程ではないが、その少女の立ち振舞いは彼女と似通った部分を感じ取れる。

それを目の当たりにしたのか、糜竺と糜芳は緊張を露にしながら自己紹介を行う。

二人の初々しい様子を見て、微笑ましく見つめる曹供。


「某は五十猛と申します」

「あっ、そうですか。別に覚えるつもりもありませんが」

「へっ?」


自己紹介を行った所、何故か拒否反応を露にする。


「糜竺さん、糜芳さん。早速なのですが、御二人には私の手伝いをしてもらいたいのです」

「は、はい!曹操様からも、その様なお話だと聞いています」

「ええ。期待しておりますわ」

「が、がんばります。うまくできるか分かんないけど……」

「御心配には及びませんわ。私が“手取り足取り”、教えて差し上げます」


糜芳の頬に軽く触れ、微笑みを浮かべる曹供。何かを“含む”かの様な笑みに、少しの疑問を抱きつつも、糜竺は気にしない事にした。


「さあ!早速仕事に入って下さいな」

「あ、あの、某は?」

「あなたはそこら辺でぼ~っとしてたらいいのでは?」

「いやいや、それでは曹操様との約束に反する」

「ああもう!こっちは只でさえ人手不足だと言うのに、いちいち口出ししないで下さる!?目の前の事で手一杯なんです!」


バン!と机を思い切り叩く曹供。


「なにより男!香風さんや御二人の様な可愛らしい女の子ならばまだしも、よりにもよって男なんて、異物以外の何物でもありません!」

「じゃあ、二人はいいのか」

「ええ、お二人とも可愛らしい女の子ですから」


胸を張って、曹供はそう言い放つ。昴は顔を引きつらせ、糜姉妹は何とも言えない表情を浮かべている。


「あなたの役割は、そうですわね。さしずめ空気といったところかしら」

「はっ?空気?」

「普段は無色透明でいるのかいないのか分からない。誰かが必要とした時にだけ出てきてお役目を果たし、また消えていく」


初対面から随分と辛辣な発言をする曹供。先程から聞いていれば、何やら個人的な私情も含まれているのではないか、と推測する。


「そこまで邪険にする必要が?」


ため息交じりに、そう尋ねる。


「まあ、お姉様からの命令ですからね。でなければ、門前払いしてるところですわ」

「……そうですか」


心中でも更にため息をつく昴。彼女が手にしているぬいぐるみも気にはなるが、これ以上、何も聞かない事にした。


「して、あなたの任務ですが、香風さん――――徐晃さんと同行してもらいます」


ふと横を見ると、初めて邂逅した少女、徐晃がいた――――のだが。


「…………」

「…………」


一人、ぼ~っと立っていた。

初めて邂逅した際に見せた、鬼と対峙した時の姿とはとても思えない。


「まあ、その子はそういう性格ですが、腕は確かです」

「でしょうね」


補足する様に曹供が答え、昴も同意する。

その後、曹供から改めて説明を受けた。


「要するに、さっきの怪物……“鬼”、だったか。近頃そいつがこの辺り一帯をうろついている、と」

「えぇっ、怖っ!?」

「怖いよ~」


あの醜悪で狂暴な怪物が森林中を徘徊していると聞き、糜姉妹は顔を青ざめて身震いする。


「情報によると、洛陽から鬼が出没しているのではないか、とも言われていますわ」

「洛陽……あまり、良い噂は聞かないが……」

「圧政を強いているやら、妖術で鬼を産み出しているやら。まあ、噂には尾ひれはひれつくもの。この眼で確かめない事には、何も言えませんわ」


曹操の領地へと赴く際、行く先々で洛陽に関する悪い噂を耳にした。


曰く、董卓が権力を掌握し、悪政を敷き、暴虐非道の限りを尽くしているとのこと。


「つまり、某は徐晃殿と鬼退治をしろ、という事ですか?」

「まあ、簡単に言えば、そういう事になりますわね」


昴に与えられた任務。それは、この領地付近に生息する鬼の討伐だ。

時期は丁度、魏の幹部達が“遠征に行った数日後”。森林の中に潜み、道行く人々――――領地に入る者は襲わず、魏から出ようとする者を中心に襲いかかるとの事。命からがら生き延びた者から、その噂は広がり、力なき人々を恐怖に陥れた。

鬼が魏の陣地を取り囲んでいるせいか、交易もままならず、風評被害にも遭っている。

しかも、鬼は神出鬼没にして、地の利を得てしまっており、軍師も足りない今、無駄に兵を減らす訳にもいかない。

ある意味、魏の領内に閉じ込められてしまう、という状況。僅かにだが、魏は痛手を負っていた。


(夏候惇殿達が不在の際に出現……何かありそうだな)


一人思考する昴。同時に、この問題の裏側にいる人物も、大体の見当がついた。


「なるほど。では、徐晃殿。暫くの間、よろしく頼みます」


昴はそう言うも、徐晃はある物に視線を向けている。お腰につけた饅頭入りの袋だ。

じっと、吸い込まれる様に見つめている。


「えっと……良ければ、食べます?」

「……いいの?」

「お近づきの印に、どうぞ」


そう言うと、昴は饅頭を徐晃に手渡す。徐晃は両手で受け取り、瞳を輝かせながら、饅頭を頬張る。


「おいひい……」

「それはよかったね」

「うんうん」


ご満悦らしく、表情が綻んでいる。それを見た糜姉妹も、笑みを浮かべていた。


「では改めて、よろしく頼む」

「うん……よろしく」


こくん、と頷く徐晃。そして握手をしようと徐晃が手を出し、それに応えようとこちらも手を出す――――。


「駄目~~っ!!」


二人の間に割り込む曹供。即座に徐晃を抱き締め、壁際まで後退する。


「ああやっぱり男はケダモノですわっ!食べ物で釣って、直ぐ様女の子に触れようとするなんて!」

「いやいや、俺はただ」

「私を狙うならともかく、香風さんを毒牙にかけようものなら、即刻ちょん切ってさしあげますから覚悟なさい!」


鬼気迫る表情でこちらに指を指す曹供。“ちょん切る”という言葉に、何故か股関付近が寒く感じる。

徐晃は未だに抱擁されており、曹供の豊かな胸部に顔が埋もれていた。しかし、未だ無表情。


「いいですか、くれぐれも与えられた命令以外、余計な事はしないでくださいまし」

「いやでも――――」

「チョン切りますわよ……?」

「あ、はい」


一連の光景を、すっかり取り残されてしまった糜姉妹は、ただただ眺めるしか出来なかった。



◇◆◇◆



そんなこんなで、取り敢えずはここで宿泊する事となった昴達一行。それぞれ、宛てがわれた部屋にいる。

糜竺、糜芳の二人はやや豪華な一室。

昴も、用意された部屋にいるのだが――――。


「…………」

「…………」


互いに向き合っている二人、昴と徐晃。饅頭を黙々と食べている。一口、また一口と。


昴は思った。何故、こうなってしまったのか、と……。



◇◆◇◆



時は、少し遡る。


宿泊部屋について、話している時だった。


「あなたは其処らの草むらにでも横になってなさい」

「はぁっ!?」

「残念ながら、空いている部屋が」


またも辛辣な言葉を言われ、流石の昴も声を荒くする。否、もう丁寧口調は止めた。

抗議をしようと、曹供に物申そうとした時だった。服の裾を、少し引っ張られる。

振り返ると、徐晃がこちらを見つめていた。


「……シャンの部屋、来る?」


ピタリ、と動きが……いや、時が止まったかの様に感じた。


「シャシャシャシャ、シャッ、シャンさぁん!?ななななな、何をおっしゃってるんですのぉ!?」

「っ?一緒に戦うんだから、もう仲間でしょ?」

「いやいやいやいやいやいやっ!これはあくまでも仮の協力関係であって――――」

「あの饅頭……もっと食べたい」

「シャンさん!?」


曹供を無視し、徐晃はおねだりする。対する昴は、横目で糜姉妹の方を見る。


「まあ、材料は有り余ってるし、いつでも作れるよ」

「気に入ってくれて何よりだよ~」

「……との事らしい」


糜姉妹の許可を得て、昴も承諾。


「じゃあ、一緒に食べよ?」

「へっ?い、一緒にって……徐晃殿の部屋で、か?」


恐る恐る聞くと、徐晃は頷く。それだけではない。


「泊まるんなら、シャンの部屋に泊まればいい」

「いや、それは流石に……」

「ダメダメダメダメダメですわっ!?シャンさん、お気を確かに!」

「何で?シャンは気にしない」

「駄目なものは駄目なんですっ!!」


断固として、反対する曹供。時折、こちらを睨みつけ、昴はため息をつく。


「……栄華さまのいじわる」


拗ねてしまったのか、顔を反らし、頬を膨らませる。


「はうあうぁ~……シャンさんったら……なんて、なんて愛らしいお顔……」


顔を赤らめ、恍惚とした表情で徐晃を見つめる曹供。蕩け切っており、何やら興奮している様にも見える。

昴達三人は思わず、二、三歩程後退る。


(大丈夫かよ、これ?)


一抹の不安を抱かずにはいられなかった。



◇◆◇◆



という経緯で、昴の部屋にお邪魔している徐晃。

饅頭を余程気に入ったのか、黙々と食べ続けて頬を膨らませている。


「うまいか?」

「うん」


机の上にある、皿のどっさりと乗った大量の饅頭。予備も兼ねて、糜姉妹が作ってくれだ。材料も有り余っている上、更に改良を重ねるらしく、味見役としても貢献する事になった。


「ん?おい、口元」

「っ?」

「ちょっと待ってろ」


昴は手拭きを手に取り、徐晃の口元にある饅頭の餡を拭き取る。


「よし、取れた」

「ありがとう」


お礼を言い、徐晃はまたも食べ進める。

昴も饅頭を咀嚼し、改めて美味しいと感じる。


「これは売れるな」


そう呟き、饅頭をまた一つ摘まもうと手を伸ばした。しかし、その手は掴まる。横から伸びた、小さな手によって。


「徐晃殿?」

「……」


こちらの手を握ったまま、微動だにしない徐晃。じっと手を見つめている。

どうかしたのか?と、昴は怪訝そうに見ていた。


「…………あむ」


口を開き、徐に昴の指を咥えた。


「じょぉっ!?じょ、徐晃殿!?」


甘噛みしながら、口内で舌を這わせる徐晃。指先から伝わる得体の知れない感覚に、昴は思わず身を震え上がらせる。


(い、いきなり何なんだっ!?)


突然、自らの手を咥え始めた徐晃。困惑しながら、早く終わらないものかと、昴は切に願った。

やがて、口からの拘束が解かれ、昴は椅子にぐったりともたれる。


「ど、どうしたってんだ……!?」

「…………ひっく」


しゃっくりが聞こえた。音源からして、目の前の徐晃しかあり得ない。

ふと、その顔を見てみれば、うっすらと赤みを帯びている事に気づく。瞳も焦点を定めておらず、茫然とどこかを見つめていた。


「……ひっく」

「もしや……酔ってる?」

「よっ……てぇる……?」


首を傾げ、しゃっくりを上げる徐晃。そのまま机に乗り上げ、四つん這いになる。


「おいおいおい、机の上に乗るのは、その、礼儀が良くない!ていうか、本当にどうしたんだ!?」

「どう……したん…だぁ……?」

「後、あんまり近寄るのは――――うおっ!?」


足が縺れ、昴は椅子を巻き込んで後ろ向きに倒れてしまう。咄嗟に受け身を取り、大事には至らなかった――――のも束の間。


「とうっ」

「おふっ!?」


無防備となった昴の胸目掛け、徐晃が猫の如く飛び掛かった。そのまま覆い被さる様な状態になってしまう。


「ん~………………すやすや」

「って、寝た!?」


自分の体の上で寝てしまった。抱き枕にされ、何とか引き剥がそうとするも、微動だにしない。両腕も巻き込まれており、打つ手なし。


「マジかよ……」


諦めて、天井を見るしかなかった。


「こんな所、誰かに見られたりしたら……はぁ」


特に、あの曹供に見つかれば、宣言通り、“切られて”しまうだろう。途端に股関が恐怖で震えてしまう。


決して、少女に抱きつかれているからではない。

決して、少女に抱きつかれているからではない。


そして、昴は誰も来ない様、天に祈る。


「頼む、誰か来ませんように――――」

「入るよ~!」


その頼みを、天は聞き入れなかった。


「ごめんごめん!間違えて“大人用”の饅頭を出、し……て…………」

「なになに?どうした、の…………わぁ」


何か用事があったのだろう。糜竺、そして糜芳の姉妹が入室。そして、昴の現状を見るや否や、表情を一変。二人とも、気まずそうに目を泳がせている。


「あ、いや、これは」

「えっとぉ、猛もさ?男の子だし、その……“そういう事”したくなるのは、分かるんだけどぉ……出会ってすぐの子にちょっかい出すのは」

「待て待て待て待て!違うっ!これには訳が」

「猛君、こんなに小さい子がいいんだ~。大好きな妹ちゃんに似てるから?ふぅん、ふ~~~ん?」

「違う違う違う違う!断じて違う!妹が大好きなのは天に誓ってはっきりと大声で言えるが、俺に幼女趣味はないっ!」

「この状況じゃ説得力皆無だよ」

「妹好き(シスコン)極まれりだね」


そう言うと、姉妹は顔を揃えて頷く。

ここは空気を読んで、邪魔者は退散するとしよう。


「まあ、安心して?曹供様には言わないでおくからさ」

「知ったら発狂するだろうしね」

「ちょ、待って!おいっ、話を聞いて」

「因みに聞くけど、合意なんだよね?見た感じ、懐かれてるっぽいし」

「きっと大丈夫だよ。あっ、でも静かにね?その部屋の外まで聞こえちゃうと……ね?」

「だから、違うんだって……」

「そうだそうだ……後で感想教えてね?」

「電々も~」

「はぁああああああああ!?」


悪戯っ子の様な笑みを浮かべ、手を小さく振りながら、二人は扉を徐に閉めていく。


「「では、ごゆっくり~~」」

「ま、待って――――」


バタン、と、扉は閉められた。



◇◆◇◆



その頃、曹操の城の牢屋にて。


「…………」


突如、窓の鉄格子に手をかけ、夜空を見つめる胡花。ただ、その背中は、どこか怖い。

同室である香里は、恐る恐る、尋ねてみた。


「あの、胡花さん?どうか、されましたか?」

「いえ……ちょっと、自分の立ち位置が“危うい”かなって……」

「あ、危うい?立ち位置?」


何が?と、問いかけようと思ったが、胡花が掴んでいる格子が“握り潰されかけている”のを目にし、香里は黙った。


それから数時間、その牢屋は緊迫に満ちる事となった。


ギリギリ、何とか今年最後の投稿出来ました。


来年も、どうぞよろしくお願い致します

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― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりです。 新たな恋姫キャラ、栄華がキターーー!! それにしても、猛の位置が段々と一刀に近づいてきましたね。 そのせいで、胡花のことが一瞬怖かったです。 それでは、遅くなりまし…
[一言] 更新お待ちしてました。良いお年を❗
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