表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真・恋姫†無双~北刀伝~  作者: NOマル
第二章~新たな出会い~
27/90

~郭嘉と程イク、曹操に仕えんとするのこと~

やっと書けた……!大変お待たせいたしました

いや、めっちゃ疲れますねこれ

高三特有の忙しい毎日で投稿が遅れがちになっております。まあ、不定期投稿は前々からなんですけど……

とりあえず書き上げる事ができました!

今回はあの、熱血医者が登場します!

では、どうぞ!

橙色に染まった空。そびえ立つ山々も、夕焼け色に染まっている。一刀達一行は、森の中を歩いていた。


「う〜ん、やはりさっきの分かれ道。反対の方へ行くべきだったな…」

「このままじゃ、野宿だな」


日が沈みかけるのを見て、愛紗と一刀はそう述べる。


「鈴々、お前の占い通りにしたらこの様だ。当てにならないにも程があるぞ?」

「うぅ……」


愛紗がそう言うと、鈴々はお腹に手を添えている。


「どうした?鈴々」

「お腹、痛いのだ……」

「だから言っただろう。茶店を出る時、厠に行っておけと」

「そんなんじゃなくて、お腹がきりきりして…すごく、痛くて……っ!」

「おい、鈴々!」


お腹を押さえて、その場に蹲る鈴々。一刀は急いで近くに寄る。


「鈴々、大丈夫か!?」

「鈴々ちゃん!」

「おい、しっかりしろ鈴々!」

「ぅぅ……ぅ…」


愛紗や朱里が声をかけるも、返事を返す事も出来ない位に苦しんでいた。


「ん?あっ!」


すると、劉備が何かを見つけた。彼女の目線の先には、煙が見えていた。
















日が沈み、辺りが完全に夜へと変わった。暗闇に包まれた森。その中で、一人の男が横たわった木を椅子代わりにして、焚き火をしていた。

髪は炎の様に赤い緋色の短髪。白を基調とした服を着ている。若干褐色肌で、精悍な顔立ちをしている。

その男は目の前で燃えている焚き火を見つめながら、物思いに耽っていた。その表情は実に深刻な顔つきだった。


〈あの、すみません〉

〈ん?〉


男は声のする方を向く。白い制服を着た青年が、赤毛の女の子を背負い、連れと見える少女四人がいた。


「実は、この子の具合が悪くて、良かったら火に当たらせてもらえませんか?」

「何っ?」


一刀はそう説明すると、その男は立ち上がる。


「なら、俺に見せてみろ」

「えっ?」

「心配するな。俺は医者だ」


医者だと言うその男の指示に従い、地面に薄い毛布を敷いて、鈴々をそこに寝かせる。

男は鈴々の腹を触診していく。鈴々は余程痛いのか、顔を苦痛に歪ませる。


「昼は何を食べた?」

「鰻を揚げたのと、ご飯…後さっき、茶店でおっきな瓜を………」


鈴々がそう説明すると、男は何かに反応したように、目をキッ!と見開いた。


「ここか…!」


するとその男は、両手にそれぞれ一本の針を取り出す。


「一体、何を…?」

「病根を滅する坪に針を刺し、そこに氣を流し込む」


愛紗が聞くと、男はそう答えた。

そして男は、針を天にかざす。


「我が身!我が針と一つなり!心気同体!全力全快!病魔服滅!」


「元気にぃなぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


男の体が眩い光に包まれ、針も同様に輝きを増していく。一刀達はその光に驚きを隠せない。その氣は周りの木々の葉を激しくカサカサと揺らしている。

男は針を鈴々の脇腹、手の甲に軽く刺した。


「病魔…退散っ!!」


針をゆっくり抜いていく。一刀はその様子を見守っている。

鈴々は目をパチパチと瞬きさせ、自身の上半身を起き上がらせる。


「あ…お腹、痛くなくなったのだ!」

「えっ?本当にもう大丈夫なのか?」

「チクッ!としてピキューン!てなってハッ!て気づいたらもう治ってたのだ」


先程の事が嘘の様に、明るい声で愛紗に答える鈴々。


「恐らく食い合わせが悪くて、胃の府が引き付けを起こしたのだろう。痛みが収まったのなら、もう心配ない」

「突然押し掛けたのにも関わらず、難儀な所を救って頂き、ありがとうございます」

「俺からもお礼を言います。本当にありがとうございました」

「何、医者は病に苦しむ者を救うのが使命。礼には及ばんさ」


一刀と愛紗が礼を言って頭を下げると、男は当たり前の事をしたまで、と答える。


「申し遅れましたが、我が名は関羽」

「俺は、北郷一刀と言います」

「鈴々を治してくれてありがとうなのだ♪」

「此方は連れの公明に、劉備殿」

「諸葛公明と申します」

「劉玄徳です」

「そして最後に控えしは、常山の趙子龍」


一刀達は自己紹介を行う。


「俺の名は【華陀】旅の医者だ」

(この人が華陀か…確かに三国志で医者と言えば、この人だよな)


【華陀】

史実の三国志では、一番最初に麻酔を作った人で、“五斗米道”の一員でもある。


「華陀…もしかして、五斗米道の――」

「ちっがぁぁぁぁう!!」


朱里が五斗米道、と言った瞬間、華陀は大声で否定した。


「五斗米道ではなく…」


「ゴッドヴェイドォォォォォォォォ!!…だ」


いきなりハイテンションMAXの掛け声を叫ぶ華陀。それを見て苦笑いを浮かべる一同。


「大事な事なので、正しい発音を心がけてくれ」

「わ、分かりました…」

「それで朱里。そのごと…ごっ…ごと?」

「ゴッドヴェイドォォ!だよ愛紗」


聞き慣れない言葉のせいか、愛紗が発音に苦戦していると、一刀が手本を見せた。


「おお…!素晴らしい発音だ!俺と先生以外でそんな良い発音ができる奴がいるなんて…!」

「え、いや、別に…」


なんとなく見様見真似で言った筈が、華陀がやけに感動しているので、戸惑いを見せる一刀。


「うん!北郷殿、今日から俺達は親友だ!」

「へっ!?」


肩を組んで、親友になろうと言う華陀。


「そ、そっか。じゃあ、俺の事は一刀でいいよ、華陀さん」

「おいおい、普通に華陀でいいぜ」

「分かった。よろしくな、華陀」

「おう、一刀!」


突然の事で驚きつつも、一刀の方も、こういうのも良いなと思い、お互いに強い握手を交わす。

こうして、一刀に親友が一人できたのであった。


「男の友情、というやつか…」

「そうですね〜」


星と劉備は、微笑ましく見ていた。


「っと、そうだそうだ。朱里、その、ゴッドヴェイド〜〜!というのは?」

「はい。ゴッドヴェイド〜〜!というのは、漢中を中心に奉行している道教の教団で、貧しい者に施しをしたり、病に苦しむ者を治したり、という活動をしているんです」


朱里は愛紗に五斗米道……ではなく、ゴッドヴェイドォォォォォォォォ!!の事について説明する。


「華陀さんはその、ゴッドヴェイド〜〜!の中でも一番の名医とか」

「ほう、ゴッドヴェイド〜〜!一の名医か♪」

「はい、ゴッドヴェイド〜〜!一の名医です♪」

「ゴッドヴェイド〜〜!一とは凄いですね♪」

「ゴッドヴェイド〜〜♪」

「ゴッドヴェイド〜〜♪」


朱里と鈴々は二人でゴッドヴェイド〜〜♪を可愛らしく連呼している。


「お主等、段々楽しくなってきているだろ…?」

「まあ、楽しそうだしいいんじゃない?」

「うんうん、良い発音だ」


呆れている星の横で、一刀は優しく見ていた。華陀の方も期限良く、彼女達の発音に耳を傾けていた。










焚き火を囲う様に座り、一刀達は華陀の話を聞いていた。鈴々は一刀の膝を枕代わりにして、すやすやと眠っている。一刀も鈴々の頭を撫でながら、話に参加している。


「―――“太平要術”?」

「ああ、俺はその本を探し、封印するよう教団から命を受けて、こうして旅をしているんだ」


華陀は真剣な面持ちで語り出す。


「“太平要術”というのは、只の妖術書ではなく、それ自体が妖力を持つんだ」

「妖力を持つ?」

「妖術というものは、例えその術の使い方を知っていたとしても、それに応じた力。所謂、“妖力”がなければ使う事は出来ない」

「つまり、武術の型を知っていても、それ相応の体力や見のこなしがなければ、戦いでは意味がない…ということか」

「まあ、そんなところだ」


太平要術の仕組みについて、星が分かりやすい例を挙げる。


「だが太平要術は、自ら妖力を持つが故、少しばかり妖術の心得があれば、それを用いて様々な術が使える様になる」


「そしてその妖力の源が、苦しむ民の怨鎖の声なのだ」


「乱れた世を恨み、平和を乞う力程、強い物はないからな……」


その書物の恐ろしさを語ると、劉備が手を上げる。


「あの、民の恨みの声を妖力に変えるのって、悪い事なんですか?」

「ん?」

「だって、その妖力を使って民が喜ぶ様な事をすれば、世の中良くなる様な気が……」

「ああ、そうだ。本来はその様に怨鎖の声を妖力に変え、それを使った妖術を苦しむ民を救う為の書物だったのだが……」


華陀は視線を少し落とし、焚き火の火を見つめる。


「いつしか太平要術自身が、まるで自らの意思を持つかの如く、妖力を蓄える事を目的とする様になったのだ」


「どうやら太平要術は、それを手にした者の、胸の内にある“悪しき心”を擽り、妖術で世を混乱させようと仕向けるらしい」


ゆらゆらと燃える焚き火の灯火が、華陀の瞳に儚く写し出されている。


「成程。そうすることで民の間に怨鎖の声が高まり、太平要術はより多くの妖力を蓄えられるという訳か」

「なんて恐ろしい……」

「正に負の連鎖だな……」


星がそう推理すると、朱里も一刀も太平要術の恐ろしさを知るのであった。


「それで、その太平要術がこの辺りにあると……?」

「実は、曹操が内々に太平要術を探し求めていると聞いてな」

「曹操殿が?」

「もし、既に手に入れているのなら、訳を話して、封印させてもらう。まだならその危険性を説き、入手を諦めさせるつもりだ」


愛紗は腕を組み、う〜んと唸っていた。


「どうした?」

「いや、私は曹操殿を知っているが、あの御仁の性格からして、そうした物に頼る様な方とは思えなくて……」

「確かにな……」


それは一刀も同意見だった。

ほんの少し違うとはいえ、仮にもあの“覇王”曹孟徳だ。自らの手で天下を治めようとする筈……


「そうか。ならば深い訳があるのかもしれんな……」

「かもな……所でさ、何で太平要術が世間に流れてるって分かったんだ?」

「太平要術は、遥か遠方にそびえ立つ“南華山”に建てられている御堂に保管されていたんだ。我々教団が見張りをつけてな」


一刀の質問に答える華陀。すると、また顔を俯かせる。


「しかしある日、何者かがその山に足を踏み入れ、その太平要術を盗んでいったんだ」


「俺や先生が駆けつけた頃には時既に遅し。御堂は破壊され、見張りの者も無惨に……」


華陀は両手を力強く握りしめている。見ている此方にも、その思いが伝わってくる。


「だから、何としてでもあの書物を封印しなければならないんだ。何としてでも……」


















―翌朝―


少なめの雲が漂う青空。小鳥がチュンチュンと囀り、森の木々は太陽に明るく照らされている。

快晴の下、一刀達は昨日出会った華陀と共に道を歩いていた。

先頭では昨日の事がなかった様に、鈴々が劉備と一緒に張三姉妹の歌を明るい声で歌っている。


「鈴々ちゃん、元気一杯ですね」

「子供は元気が一番。あの様子なら、二人も安心だろう」


華陀は一刀と愛紗の二人を見ながらそう言った。


「えっ?」

「それはどういう……」

「違うのか?俺はてっきり一刀と関羽殿の……」


またまた出たこの勘違い。

愛紗は一気に顔を赤くし、否定する。


「ち、違います!鈴々は私と姉妹の契りを交わした仲で……ていうかそもそも!私は一刀とそういう事はまだ一度も――」

「あっ!大変!」


愛紗が際どい事を言うと(一刀も赤くなった頬をかいている)、劉備が何かを見つけたらしく、向こうの方を指差した。


「人が倒れています!」

《っ!?》


全員でその方向へと駆けつける。

森の茂みを掻き分けながら行くと、一人の女性が地面に横たわっていた。女性の顔の周りには、赤い血らしきものがベットリと付いていた。

華陀は直ぐ様女性の側に座り、呼吸や心音を確かめる。


「息はあるか?それとも……」

「華陀、容態は?」


星と一刀が聞くと、華陀は目を大きくする。


「――どこも悪くない…!」


ドシャアッ!と華陀以外の全員がその場にずっこけた。


「だ、たが!それならその血は一体――」

〈――大丈夫なのです〉


愛紗の言葉を返す幼い声色。全員が後ろを振り向くと、その主らしき少女が一枚の布巾を持って立っていた。

小柄かつ華奢な体躯で、自分の身長程あるカールのかかったクリーム色の長髪。頭のてっぺんには一体の小さな人形があった。


「それは鼻血なので、ご心配には及ばないのです」


その少女は女性の近くに寄り、上半身を少し起き上がらせる。


「【稟】ちゃ〜ん。ほら、近くの小川で手拭いを濡らしてきたから、おっきしてこれでフキフキしましょうね〜」


幼児にかける様な事を言いながら、眼鏡の女性の顔を拭いていく。


「けど鼻血って……」

「その血溜まり……」

「下手すりゃ貧血所じゃないよな…?」














「先程は、お恥ずかしい所をお見せしました」


所変わって、近くの小川に移動した一行。側にあった岩に腰掛け、倒れていた女性も連れである少女と一緒に岩に座っている。


「我が名は【郭嘉】字は【奉孝】こちらは、共に旅をしている…」

「【呈イク】と申します」


すると少女、呈イクは、頭に乗せている人形の小さい手を動かす。


〔俺ハ【宝慧】皆ヨロシクナ〕

「よろしくなのだ♪」

「オォ……」

「どうしたのです?宝慧」

「イヤ、人形ノ俺ニ普通ニ挨拶ヲ返シテ来タンデ、チョットビックリシチマッテ」

「人形が喋るなんてスゴいのだ〜♪」

(やはり、さっきのはツッコミ待ち立ったのか……)


宝慧(実は呈イクの腹話術)に鈴々が答えると、星は何か惜しい気持ちになったのであった。


「実は、私とこの【風[ふう]】は、軍師として召し抱えて貰おうと、曹操様の所へ赴く途中だったのです」

「ほう、曹操殿の所に……」


郭嘉は呈イクの真名を言いながら、愛紗達に旅の理由を話していた。


「私と風は、孫子を始め、数多の兵書を読み、古今の軍略を学び、いずれは志ある人物に軍師として仕え、世の乱れを正したい!」


「と思っていたのですが、主を求める旅の最中に、曹操様の噂を聞いて[治世の能臣][乱世の“姦”雄]と言われるあの方こそ、真に今の世に必要な人物と思い定め――」

「――と、まあこの稟ちゃんは曹操さんの熱狂的な信奉者なのです」


曹操への思いを長く力説する郭嘉に変わって、呈イクが簡単にまとめあげた。


「あ、いや、別に信奉者というわけでは……」

「でも好きなのとは違いないんでしょう?」

「まだお会いした事はないので、好きというか、憧れというか……」

「できることなら軍師として曹操さんのお側に仕え、その身を捧げたいと思っている」

「そ、その身を捧げるとは大胆な……で、でももし本当にそうなったら……」


呈イクに追い打ちをかけられ、郭嘉はその思いを膨らませる。


「い、いけません!私は軍師としてお仕えするのであって決してその様な事は……た、確かに見も心も捧げるとは申しましたがそれはそういう意味では、うふ、あ、あぁ〜♪そんな強引に、で、でもその乱暴な指使いが私を狂わせるぅあぁ〜〜♪」


どうやら、この軍師郭嘉。“コッチ”の人らしい……


「相当過激な妄想をしているようですね……」

「止めなくていいんですか?放っておくとその内誰か偉い人に怒られそうな気がするんですけど……」

「いや〜、これはもう手の施し様がない感じが……」


朱里、劉備、一刀の三人は頬を少し赤らめていた。

その場の全員を他所に、郭嘉はその吹っ飛んだ妄想を爆発させる。


「だ、駄目ぇそこは〜〜♪」


ブシャァァッ!と彼女の鼻から真っ赤な血液が吹き出てきた。そしてその鼻血は目の前にいる青年の顔面に直撃する。


「うぉぶっ!?」

「一刀!?」


滝の様に流れ出た鼻血を食らい、一刀は後ろの方にズデンッ!と転げ落ちる。横にいた愛紗は落ちた一刀を起き上がらせる。

華陀も引く位の鼻血を披露した郭嘉は両鼻に紙を捩じ込んだ。


「も、申し訳ありませんでした……」

「いや、大丈夫ですよ。このくらい」


郭嘉が謝罪すると、一刀は顔に付いている血を拭きながら苦笑する。


「そ、それほどの熱意があれば、人材好きのあの曹操殿の事。貴方達の願い、きっと聞き入れて下さるだろう」

「そう仰られる所を見ると、もしや曹操様をご存知なので?」

「ご存知処か、愛紗は曹操に股間のしっとり艶々をまさぐられた程の仲でな」

「おい星っ!」

「こ、こ、股間の…しっとり艶々…………」


星の与太を間に受けた郭嘉は、更に妄想を膨らませる。


「きゃ〜〜〜〜〜〜♪」

「稟ちゃん、トントンしましょうね〜」


出すぎたのか、プシュッと少量しか出なかった。


「こうして曹操さんのお知り合いと出会えたのも好都合。もし宜しければ、曹操さんにご紹介頂けると有難いのですが」

「まあ、どうせ通り道なので、それは構いませんが…どうであろう?劉備殿」

「そういう事でしたら、私は別に良いですよ」

〔オ〜ソレジャヨロシク頼ム〜〕


というわけで、曹操の治める町まで郭嘉と呈イクが同行することになった。


















一時的に郭嘉と呈イクを加えた一刀達一行は、目的の町へと辿り着いた。


「賑やかな町ですね〜」

「きっと曹操さんの政がうまくいっているんでしょう」


劉備が言う様に、町は賑わいを見せている。並んでいる店も繁盛している様だ。朱里のいう通り、曹操の行った政治が上手くいっている事を物語っている。


「俺はこのまま曹操の所に行くつもりだが、一緒に行くか?」

「そうですね――」

「あ、えぇ〜と!“腹が減っては戦はできぬ”と言うし、まずは腹ごしらえをしようと……!」

〔ヘッ、腹ゴシラエダトカ言ッテ今ニナッテ腰ガ引ケテンジャネエノカァ〜?〕

「これ宝慧。そういった事は図星なだけに言わずに黙っておくのですよ〜」


宝慧の言うことを呈イクが注意する(基一人芝居)。心中を察せられ、顔が真っ赤に染まる郭嘉。


「それじゃあ、とりあえず俺達は腹ごしらえするか」

「そうですね」


一刀の提案に、愛紗が同意する。


「そんじゃあ華陀。またいつか」

「おう、また会おう」


一刀は親友とガシッと友情の握手を交わす。華陀は曹操のいる宮廷へと向かった。






華陀が抜け、一行は近くの料理店へと向かった。その料理店は大変評判の良い店で、その店で働いている“一人の少女”の料理がかなりの人気を誇っていた。


「おっ、料理が来たぞ」

「うわ〜、美味しそ〜〜♪」

「いっただっきま〜〜すなのだ♪」


円形の台に並べられる豪華な中華料理を頬張る鈴々。他の一同も食を進める。


「この麻婆豆腐美味しいですね」

「この肉も美味しいのだ♪」

「これは、羊の肉ですね」

「このメンマは中々」

「どの料理も味がしっかりしてて美味いな」

〔俺ニモ俺ニモ〜〕

「宝慧はその飴で我慢するのです」


呈イクは宝慧に、いつも手に持っている渦巻き模様のピンク色の棒付き飴を持たせる。

鈴々はガツガツと目の前の料理を平らげていく。


「おいおい、また腹が痛くなっても知らんぞ?」

「そしたらまた華陀のおじちゃんにチクッ!ピキューン!てしてもらうから大丈夫なのだ」

「り、鈴々、おじちゃんじゃなくて、お兄ちゃんって言おうな?」

「お兄ちゃんはお兄ちゃんだけなのだ!」

(華陀の奴凹むだろうな〜〜……)


















一方その頃、宮廷にて……


「へぇっくしょん!!」


謁見の間へと連れられた華陀は、目の前で玉座に腰かけている曹操と対面している。ズズッと啜り、鼻をかむ。


「いやぁ、すまん。とにかくそういう訳なんだ」

「驚いたわ。[太平要術]がそんな危険な書だったなんて……」


華陀の話を聞き、太平要術の危険性を知る曹操。


「分かったわ華陀。太平要術を探すのはやめましょう」

「ああ。しかし、そもそも何故太平要術を手に入れようとしたのだ?関羽殿は、あなたは妖術に頼る様な方ではないと言っていたが……」

「貴方、関羽に会ったの?」


関羽という名に反応し、華陀に問いかける。


「ああ、旅の途中で知り合ってな。何れここへも訪ねて来るはずだ」

「そう、それは楽しみだわ……」


曹操は目を細めて、ニヤリと口角を歪める。


「所で、さっきの質問の答えだが…」

「ああ、実は、最近体の調子が良くないの。色々な薬を試して見たのだけれど、どれも効き目がなくて、それで藁にもすがる気持ちで……」

「妖術を試してみる気になったのか」

「ええ…」

「だが、見たところ重い病を患っているとも思えぬが……」

「な、ないのよ。“アレ”が………」

「えっ?何がないって?」


急に小声になりだした曹操に、もう一度聞き取ろうとする華陀。


「だから“アレ”がないのよ……」

「“アレ”がない?……っ!心配するな。それは病ではない。寧ろおめでたい事で――」

「違うわよ!」


華陀の発言を消す様に、両頬を少し赤くして全力で否定する曹操。


「女以外は閨に入れない私が孕む訳ないでしょ!?“アレ”っていうのはそっちじゃなくて…」

「ならなんだ?俺は医者だ。恥ずかしがらずに言ってみてくれ」

「だから、その、えと、“お通知”が……」

「あ〜、便秘かぁ!」

「大きな声で言わないで!!」


ハッとして理解した華陀。女性にとって恥ずかしい事を言われ、頬は更に赤みを増す。


「しかし、糞詰まり位で大袈裟な」

「だから大声で言わないでって言ってるでしょ!?もう一ヶ月もアレがないせいで、食も進まないし、肌も荒れてくるし、何よりイライラして何事にも集中できなくて……!」


口元に手をやり、唸る曹操。見たところ、相当困っている様だ。


「成程。思い切って腹を裂いて溜まっている物をすっぽり出せばスッキリするが?」

「馬鹿言わないで!腹を裂いたら死んじゃうじゃないの!!」


それはそうだ。だって、腹を切るんだもの。


「それは大丈夫。俺の調合した秘薬“麻沸散”を服用すれば、あっという間に眠りにおちて、その間は何をしようと痛みは感じない。治療してから縫い合わせれば、さして傷も残らないから、安心だ♪」

「ほ、本当に大丈夫なんでしょうね…?」


曹操は恐る恐る問う。対して華陀は……


「…………………………………………勿論、大丈夫だ」

「ちょっとぉ!!今の間は何今の間は!?」

「腹を裂くのが不安なら、針を打つという手もあるが?」

「なんだ、まともな治療法があるんじゃないそれはどうやるの?」


その治療法を問いただす曹操。そして、華陀はその方法を教える。


「まず×××を摩擦して血行を良くしてから〓〓〓に針を刺しそれを振動させて適度な刺激を与えつつ更に△△△して□□□続いて▽▽▽を◇◇◇して◎◎◎すると☆☆☆だから、最後にこの黄金の鍼を◯◯◯に深々と刺し、そこに氣を流し込めば――」

「そんな事ぉぉぉ…………!!」




「出きるかあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




そりゃこうなる。


「うわっ!」

「うううぅぅぅぅ……!!」


宮廷の門の前に追い出された華陀。後ろを振り向くと、怒りの氣を纏わせた覇王が得物である大鎌[絶]を振りかぶっていた。


「ちょ、ちょっと待て!これはあくまでも治療であって、別に妙な下心があっての事では――」

〈華琳様っ!何事です!?〉


そこへ、部下である夏候惇が数人の親衛兵を連れてやって来た。


「春蘭!その男を捕らえて首を跳ねなさいっ!!」

「はっ!直ちにっ!」


怒気を含んだ声で、荒く命令する。夏候惇は命を受け、華陀を標的に捉えた。


「うわわわわわぁぁぁぁぁっ!!」


華陀は慌てて宮廷前の階段を駆け下り、春蘭率いる親衛隊から砂煙を出しながら逃げていった。


「全く!何なのよあの薮医者…!」

〈――華琳様〉


横から軍師である筍イクが声をかける。


「なぁに?」

「関羽が目通りを願ってきましたが、どう致しましょう?」

「えっ?関羽が?」


先程の怒気がすっかりなくなり、表情がパアッと明るくなる。


「何でも、仕官を望んでいる者を紹介したいとか…」

「いいわ。それじゃあ、直ぐ謁見の間へ」

「はい――」

「いえ、待って。良いことを思い付いたわ♪」


曹操は朱色に染まった頬をかきながら、ニヤニヤと歓喜の笑みを浮かべるのであった。















普通、その国の王に仕官を願う時は謁見の間を通して行うものである筈……

愛紗、そして仕官を願う郭嘉と呈イクは曹操の所へと赴いたのだが、今いるその場は謁見の間ではなく、湯気がモクモクと立つ、かなりの広さを持つ温泉。


「久しぶりね。関羽」

「そ、曹操殿。どうしてこんな所で会おう等と……」


曹操は既に湯船に浸かっており、愛紗と横に並んでいる郭嘉と呈イクは衣服のない体を、タオル一枚で包んでいる。郭嘉に至っては風呂場でも眼鏡をかけており、レンズが完全に曇っている。


「その二人が、私に仕官したいと望んでいる者達ね?」

「お……お目通りをお許し頂き、か、感謝申し上げます!か、郭嘉と申します!」

「呈イクと申します」


ファンが憧れの人に会った時の様に、たじたじになる郭嘉。それに反して呈イクは冷静に返答する。


「こうして一糸を纏わぬ姿で会ってこそ、相手の身なりに左右されることなく、その人物の本質を見極められるというものよ」

「は、はぁ……」


正論の様な事を言う曹操。しかし、本当にそれだけなのだろうか……


「さあ、あなた達も湯に入りなさい」

「それでは……」

「お待ちなさい」


タオルを巻いたまま、湯船に浸かろうとすると、曹操に止められた。


「湯の中には手拭いを入れぬのが風呂での礼儀と言うものよ」

「いや、だが……」

「礼儀を守れぬなら、話はここまでよ」

「うっ……」


それを言われると、言い返せない。愛紗は恥じらいながら仕方なく巻いているものを取る。曹操はフフッと頬を緩ませる。

そのまま湯に入り、郭嘉と呈イクも続いて入る。


(こ、これは曹操様、想像以上にお美しい……♪湯船で眼鏡が曇っているからいいものの、もし直に裸身を見ていたら……)


ツウーッと鼻の穴から一筋の赤いものが垂れている。


(い、いかん、また鼻血が……!)

「それじゃあ、まず呈イクとやら。貴女は今の世の中をどう見ていて?」

「はい。嘗て天下を覆うまで葉を繁らせた大樹も、今は根本から腐り始めています。徒に高みを目指し、枯れ始めた木に登るより、いつか訪れる芽生えの時を待って、じっと寒い冬を耐える種の様に、ここは力を蓄えべきかと」

「そして、いずれは倒れる大樹に変わり、自らが新しい大樹となる、か……」


呈イクの言葉に答える曹操。

彼女の心にも届く程のものだったらしい。


「さて、もう一人の貴女は確か……」

「はい、か、かかか郭嘉です!」

「これから私が進むべき道について、貴女の意見を聞かせて貰えるかしら……?」


美しい笑みに見惚れ、郭嘉は更に顔を紅潮させる。


「わ、わわわ私が、かか考えまするは――」


完全にパニックに陥っている郭嘉。若干呆れた表情を浮かべる曹操。



――――――ッ!



曹操は上を向いた。

それと同時に、何かが上から降ってきた。


「っ!」


ドボンッ!と水飛沫が飛び、曹操は瞬時に避ける。偶々そこにいた郭嘉に覆い被さる様になった。曹操に抱きつかれてる状況になり、郭嘉の心情は正に有頂天に到達した。

上から飛来した物体、黒装束を纏い、短刀を手にしている。曹操の命を狙う者が仕向けた刺客である。


「っ!」

「はぁっ!」


刺客が曹操に襲いかかろうとすると、横から愛紗が助太刀に入る。


「は〜〜〜♪」

《っ!?》


ブシャアアッ!と限界を越えた郭嘉の鼻から放たれた赤い鮮血が相手にかかり、視界を潰した。


「う、くっ!」

「でぇいっ!」


目潰しを喰らい、狼狽える刺客に飛び掛かる愛紗。曹操は郭嘉の見ると、彼女は鼻血を出したまま気絶してしまった。










事なきを得て、場所は謁見の間へと移された。


「ふぅ、やれやれ。ひどい目にあったわ」


寝間着姿で玉座に座る曹操。


「関羽、また貴女に助けられたわね」

「礼ならば私よりも、郭嘉殿に言われるが良かろう」


自分ではなく郭嘉殿にと、愛紗は曹操に言う。


「しかし、曹操殿も相変わらず敵が多いようだな」

「しょうがないわ。間違った今の世で正しい事をすれば、それを快く思わない者から命を狙われるのは当然よ」


この様な事は日常茶飯事だと堂々と答える曹操を見て、フッと小さく笑う愛紗。


「所で呈イク。貴女は私と共に語るに足る人物の様ね。これから私の軍師として働いて貰えるかしら?」


郭嘉と呈イクの二人は顔を見合わせて、歓喜の表情を浮かべる。呈イクは曹操と向き合い、手を合わせる。


「仰せのままに」

「郭嘉、鼻血で刺客の目を眩ました技、見事だったわ」

「へぇっ!?あ、いや、あれは……」

「その技を生かし、親衛隊の一員として、これから私を守って頂戴ね」

「……は?親衛隊?軍師じゃなくて、その、親衛隊って……」

「期待しているわよ」

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」



こうして、呈イクは軍師として、郭嘉は軍師……ではなく、親衛隊の一員として、曹操の元についたのであった。

























日が段々と傾いていき、もうすぐで夜になるという夕暮れ時、それでも人々は賑やかに過ごしている。

そんな人々の様子を見ながら、町を散歩している一人の青年がいた。


「――流石は曹孟徳。政治がきっちりとしているんだろうなぁ」


青年、一刀はポケットに手を入れ、キョロキョロと左右を見る。

史実でもそうだった様に、この世界の彼女も国を治める為の政に抜かりは一切見られない。この町でも一時の平和を過ごしている人々がいる。


しかし、その平和はいつか崩れ去るかもしれない……


「…………」


その場に立ち止まり、夕焼けの空を見上げる。華陀から聞かされた太平要術の力。

“あの乱”のきっかけもそれだった。もし張三姉妹がそれを手に入れているのだとすると、それが起こるのもそう遠くは……


「ああもう!やめたやめた」


いつ起こるか分からないものを考えても埒が明かない。一刀は頭をガァッとかきむしると、前へと足を動かす。


「そろそろ、愛紗を迎えに行かないとな」


宿を知らない彼女の為に、曹操のいる宮廷に向かう。










その時……


「っ!?」


殺気を感じる。


背筋に冷たい汗が流れ、その場に立ち止まってしまった。後ろから感じる視線。小刻みに震え、得体の知れない恐怖を抱きながら、意を決して後ろを振り向く。


〈………………〉


流れ行く雑踏の中、そこに男はいた。

黒い外套を羽織り、顔には白と黒の混じった陰陽の仮面をつけている。通行人の人々は気づいていないのか、その男を素通りしている。

その男と目が合った瞬間、変な感覚に襲われた。周りの時間がゆっくりと流れている、或いは自分とその男だけ別次元の世界にいるような……


《………………》


頭から頬、そして顎に流れ落ちる一筋の汗。目の前の恐怖に押し潰されない様、体に力を入れる。男は何もする事はなく、ただ見ていた―――。

仮面の目穴から見える紅い瞳と見つめ合うこと、約一分…いや、それ以上の時間を過ごした様に思える。

そして男は―――





―――笑った…





戦慄が走った。


不意に前を通行人の一人が通りかかった。そして過ぎ去った後、その男の姿は何処にもなかった。


「―――っ!はぁっ!はぁ……!」


仮面を被っていて表情は見えなかったが、目で分かる。確かに笑った。とても冷酷な笑みを浮かべていた。

両膝に手を置き、肩を揺らして荒い呼吸を整える。顔を少し上げ、男のいた所を見る。


「くそっ、何なんだよ一体……!」


しかしこれだけは分かる。

奴は何かをしでかす。何か、良からぬ事を……

もしかしたら、奴が【貂蝉】の言っていた、“闇”


もしそれが本当だとしたら、ここにいる人達も、街も国も、そして何より、俺の大事な―――


〈一刀?〉


聞き覚えのある声が耳に入り、その方向を向く。長く綺麗な黒髪を持つ、大切な仲間だ。


「どうしたのだ?こんな所で……」

「愛紗……!」


青年は少女に近づき、強く抱き締めた。


「ちょ、か、一刀!?」

「ごめん、少し、このままでいさせてくれ……!」


いきなり抱きつかれ、顔を赤くして慌てる愛紗だったが、一刀の体が微かに震えているのを感じ取ったのか、抵抗はしなかった。


数分経ち、ようやく抱擁を解いた。


「ごめんな、突然こんなこと……」

「い、いや、別にそれは……」

「愛紗……」


両肩に手を置き、綺麗な瞳を見つめる。真剣な面持ちで見つめられ、身構える愛紗。


「俺、絶対愛紗の事守るから」

「一刀……」

「愛紗だけじゃない。鈴々、星、朱里、劉備。そして街に残っている翠や紫苑と璃々ちゃん、瑠華は俺の大切な人達だ。だから必ず俺が守ってみせる」


一刀から強い志を感じとり、愛紗も笑みを浮かべる。


「……何があったかは分からぬが、ありがとう一刀」


少し俯くと、顔を見上げ、美しい笑顔を見せる愛紗。


「只、そういう台詞は時と場所を考えて言ってもらえたらいいのだが……?」

「へっ?………………あ」


また顔を真っ赤にして、下に俯かせる愛紗。

ふと周りを見渡すと、街の人々の視線を一気に集めていた。顔を赤らめる人もいれば、ニヤニヤと傍観する人もいる。街中で堂々と抱擁してしまった事にやっと気がついた。


(は、恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!)


心の中で叫び、のたうち回っている。


「……か、帰ろうか愛紗」

「え、ええ……」


二人は顔を赤くしたまま、小走りで逃げるようにその場から去っていった。


夕陽は二人の姿を照らし、長い影を作っていた。心なしか、その影はほんの少し繋がっている様に見えた。







一刀と華陀展開早かったですかね?でもこの二人はやっぱり良き親友でいてほしかったんで、無理矢理ですがご了承下さい

原作の部分が目立ったせいか一刀の出てる部分が少ない……

ということで最後の部分を書いてみたのですが、如何だったでしょうか?本当に悩みます。一刀をどの部分に入れるかどうか……

後、文も長すぎたかな?読みにくかったらすいません

次回も出来次第投稿という形になると思います。こんな僕ですが、最後まで応援してくださる事を願っています!

次回も是非ご覧になってください

それでは!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ