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真・恋姫†無双~北刀伝~  作者: NOマル
第一章~流星の遣い~
21/90

~群雄、生徒会長の座を狙って相争うのこと~【結成の陣】

遅れてしまいました…申し訳ありません…

今回も見てくださると嬉しいです

それでは、どうぞ!





これは、もう一つの“外史世界”の物語である……














数十もの高層ビルが立ち並ぶ、世間一般でいう都会街から少し離れた市街地。そこらに建っている家々の前にある歩道を、一人の背の小さい女の子が何やら慌てた様子で走っていた。


「はわわ〜!転校初日から寝過ごすなんて最悪です〜!!」


どうやら女の子は学生の様だ。

金髪の頭には赤色のベレー帽を被り、白を基調とした気品の良さを漂わせる制服を身に付けている。赤のラインが入っており、スカートも同じ赤色だ。首元にはリボンが着けてある。

女の子は呼吸を荒くしながら走る。


「はぁ…はぁ…きゃあっ!」

「おっと!」


曲がり角に差し掛かると、突然顔に柔らかい衝撃を覚え、女の子は後ろに飛ばされる。そして尻餅をついてしまう瞬間、誰かに受け止められた。


「ど、どうもすみま…せん…」

「大丈夫かい?」


後ろを振り返ると、そこには自分を受け止めてくれている一人の青年がいた。茶色の短髪で、中々に整った容姿をしている。女の子に見せたその笑顔は、相手を落ち着かせる。そんな雰囲気を出していた。女の子はその優しい笑みに、暫し見とれていた。


「ん?どうかした?」

「へっ?…は、はい!だ、大丈夫でしゅ!」

「それならよかった」

「すまない、怪我はないか?」

「えっ?」


もう一つの声がする方を向く。

長く艶やかな黒髪。目鼻立ちが整っており、正に美少女といった少女がいた。


(はわぁ〜…綺麗な人…)

「その制服、私達と同じ[聖フランチェスカ学園]の生徒だな」

「あ、そういえばそうだな」


青年も気づいた様で、横にいる少女に同意する。彼の服装は上半身が白で下半身が青で統一されており、小さく金色の刺繍も入っている。

彼女の方は、女の子と同じ制服なのだが、ちょっと違う所がある。女の子の赤に対して、少女はベレー帽、ライン、スカートの色が、青年と同じ青色だ。


「赤って事は…君、一年生か」

「あ、あの、私今日が転校初日で、な、なのに寝坊しちゃって、はわわっ!ってなっちゃって」

「へぇ〜、今日が初登校か」

「ならば、尚更身だしなみをきちんとしないとな」

「へっ?」

「ほら、リボンが曲がっているぞ?」


少女は少し屈み、女の子のリボンを整える。


「これでよし」

「……」


少女の綺麗な笑顔に女の子の頬は赤みを帯びていた。


「では、一緒に行こうか」

「でも…」

「学園はあっちだよ?」

「え、えへへ…はい♪」


三人は学園へ向かうべく歩を進める。


「あ、申し遅れました。私は【諸葛亮 孔明】と言います」

「孔明ちゃんか。俺は、【北郷 一刀】よろしくね」

「私の名は【関羽】よろしく頼む」


三人はお互いに自己紹介をする。

それから三人は話をしながら歩き出す。


「ん?一刀、襟が曲がってるぞ?」

「あ、本当だ」

「まったく、しょうがないな」

「ありがとう愛紗」

「………」


やれやれという風に関羽は礼を言う一刀の襟を直す。その様子は、まるで弟の世話を焼く姉の様。孔明は二人をお似合いのカップルだな、と羨望の眼差しで見ていた。

そんなこんなで話していると、同じ制服を着た生徒達が校門を通っている。


「お、孔明ちゃん。着いたよ」

「あ、ここが…」

《ようこそ!聖フランチェスカ学園へ♪》











聖フランチェスカ学園




生徒の大半が、裕福な家庭の娘という元お嬢様学園。


何故“元”なのかと言うと、一刀が前に通っていた高校が少子化の影響を受け、去年廃校になってしまったのである。これを機に、聖フランチェスカ学園は、男子学生との共学制を認める事になった。一刀もその流れで聖フランチェスカ学園に入学したのである。


しかし、共学制になってからまだ間もないため、男女比率の差がかなりのものだ。大人数の女子に対し、男子の数は恐らく数えられる程度だろう。下手すれば“男尊女卑”ならぬ“女尊男卑”という感じになる可能性もあるかもしれない。男子と女子との間はそこまで親密というわけではないが、だからといって悪いというわけでもない。共学制に賛成の者もいれば、反対の者もいる。賛否両論に分かれているが、仲は至って普通である。


広大な敷地内には自然公園があり、校舎は勿論、礼拝堂、喫茶店といった充実した設備が用意されている。

基本的にはほとんどの学生が学生寮に住んでおり、愛紗達が住んでいる女子寮は、高級マンション並みの建物で、外観にもこだわっている。

一刀達男子はというと、工事現場で見るプレハブ小屋の様な建物で、学園まで十分から二十分かかる距離にある。最初は合併してから日が浅いために急遽用意した寮だが、一年経った今でもこのままである。


もうこの時点で“女尊男卑”の時代になったと言っても過言ではないかもしれない…


続いて、学年は制服の色によって違う。

赤が一年生。青が二年生。緑が三年生という風に決められている。何組かのクラスに分かれているのだが、この学校では、それとはまた違った生徒達のチーム、或いは“軍”が存在する。本来のクラス関係なしに編成されたもので、お互いの事を信頼の証である“真名”で呼びあっている。

そして、時に軍同士が己の大義の為にと、知恵を絞り、武と武で戦いを繰り広げる事もある………かもしれない


授業レベルはかなり高い方であり、今日も群雄達は勉学に励んでいる。

机と向き合い、筆を動かす生徒

話を理解し、知識を吸収する生徒

ありもしない夢を見て寝る生徒

教科書を盾に早弁をして先生に見つかる生徒等々。


結果、[聖フランチェスカ学園]はとにかく様々な生徒が存在する学園である。






そして午前の授業終了の鐘が学園に鳴り響く





昼食の取り方は生徒によって違う。

学園の食堂は基本無料であり、そこで昼を済ませるか、自分で弁当を持参するか。もう一つは、下駄箱付近に位置するパン売場でパンを購入するかである。そして現在、大勢の生徒達が並んでいる。並んでいるというよりはひどく混雑しており、運が悪い者はもみくちゃになる可能性大である。

大群の後方で、孔明は財布を手におろおろと狼狽えていた。


「ええっとあの、すいません、私もパンを…きゃあっ!」


進もうとしてもすぐに阻まれ、後ろへと弾かれる。すると、また顔に柔らかい感触を感じた。見上げると、綺麗な黒髪の少女がいた。


「関羽さん」

「また会ったな」

「えっ?」

「では、突撃開始♪」


愛紗はくるりと孔明を購買の方に振り向かせる。孔明の肩を優しく掴み、大群の間をそそくさとくぐり抜け、あっという間に到達した。


「さ、孔明殿。私は、と」


愛紗はポケットからメモらしき紙を取り出した。


二人はパンを購入し、紙袋に積んだ後、自然公園を二人で歩いていた。


「本当にありがとうございます。パンを買うのまで助けてもらっちゃって」

「なに、困った時はお互い様だ」

「所で関羽さん、もしかしてそれ全部食べるんですか?」

「えっ?違う違う、これはじゃんけんに負けたから仲間の分も一緒に」

〈愛紗に孔明ちゃんじゃないか〉


愛紗が苦笑いで答えると、横の方から一人の男子学生が走ってきた。


「一刀か、どうかしたのか?」

「いや〜日直の仕事が今終わった所でさ。休憩がてらここら辺散歩しようと思ってさ」

「そうか」

「後、愛紗。まさかだと思うけど、それ全部一人…」

「ち、違う違う!断じて違う!」


愛紗が慌てて否定すると、一刀は彼女が手にしている二つの紙袋の内の一つを手にとる。


「紙袋一つ持つよ」

「いや、私は別に…」

「いいからいいから♪」

「……かたじけない」


一刀は笑顔で大丈夫と伝える。愛紗も申し訳なく思いながら、感謝を述べる。孔明も横で二人の事を微笑ましく見ていた。


〈愛紗〜〜!!〉

「お、いたいた」


大声のする方を向くと、赤い短髪で虎の髪飾りを着けている元気な女の子がいた。女の子の後ろにある一本の木の下に愛紗達の仲間である二人の少女がいた。


「よう、鈴々」

「あ、お兄ちゃん♪」

「待たせたな、ほら」

「いただきなのだ〜♪」


鈴々は二人から紙袋を受けとると、訳の分からない歌を歌ってはしゃいでいた。鈴々は木の下まで行くと、紙袋からパンをどさどさと出していく。茶髪の少女、馬超もパンをもらい、水色の髪の少女、星は弁当を広げる。中身はメンマがぎっしりと詰まっている。

すると、突然鈴々が叫びだした。


「ない!ないのだ!鈴々の大好物の[穴子サンド]がないのだ!」


[穴子サンド]とは、学園で購買されているパンの中でも人気の一つで、切り込みを入れたパンの上に穴子の切り身をトッピングしたものである。

味はよく分からないが、人気なのだから美味しいのであろう…………多分。


「いや〜、穴子サンドは売り切れで買えなくて…」

「すごい人気だもんな。俺は食ったことないけど」

「代わりに“最初はこってり、後味さっぱり”の[こっさりラーメンサンド]を買っておいたから、それで我慢してくれ」

「そんなのじゃダメなのだ!鈴々は一日一個穴子サンドを食べないとお腹から空気がもれ…ってあぁー!!」


鈴々は孔明の紙袋を見るや否や大声を張り上げる。孔明が抱えている紙袋の中には穴子サンドが一つ入っていた。


「どうして!?どうしてお前が鈴々の穴子サンドを持ってるのだ!?」

「あの、これは私が…」

「よさぬか鈴々。これは最後の一つを孔明殿が買ったものだ」


愛紗は暴走気味になっている鈴々を止める。


「でも、鈴々は毎日お昼のメインは穴子サンドって決めてるのだ!」

「ご、ごめんなさい…私そのこと知らなくて…」

「いや、孔明ちゃんが謝る事じゃないよ」

「そうだぞ?責めを受けるなら買えなかった私の方に…」

「愛紗のせいでもないって。今回はしょうがなかったみたいだし、鈴々も二人の事を許して…」

「何で何で何で何でなのだ〜!!」


沸騰したやかんのように鈴々は怒りだした。


「姉妹の契りを結んだ鈴々より、そんなやつの肩を持つのだ!?」

「お前の事を妹だと思うからこそ!姉として我儘をたしなめてやっているのだ!」

「妹が欲しがっているから譲ってくれって頼んでくれてもいいのだ!!」

「それが我儘だ!!」


二人は唸りながら睨みあう。


「おいおい、二人とも少し落ち着けって」

「はわわっ!」

「やれやれ…」


一刀は口論する二人の間に入る。孔明はどうすればいいか分からずにおり、後ろの方にいる二人もため息をついていた。


「愛紗のバカァァァァッ!!」

「あ、こら!」

「鈴々!?」


鈴々は涙目になりながら走り去っていった。


「愛紗、追いかけなくていいのか?」

「ふんっ!別に構わんさ」

(二人とも頑固だな〜…)


そっぽを向く愛紗。一刀がどうしたものかと悩んでいると、向こうの方から自分を呼ぶ声がした。


〈お〜い!か〜ずピ〜〜!!〉

「おっと、それじゃあね孔明ちゃん」

「あ、はい」


一刀は声のする方に走っていった。


「全く、食い物の事位で仲違いとは、情けない」

「[生徒会長戦]も近いってのに、こんなことじゃ先が思いやられるな」


星と馬超はメンマとパンをそれぞれ口に持っていく。


「[生徒会長戦]?どなたか生徒会長に立候補されるんですか?」

「いや、この学園はちょっと変わってて…」


[生徒会長戦]


聖フランチェスカ学園、恒例行事の一つである。

大将一人に武将二人、軍師一人を加えた四人一チームとして出場する。(因みに男女混合は認められておらず、男子は男子、女子は女子だけのチームを編成しなければならない)

様々な競技で相手チームと競い合い、最後まで勝ち残ったチームの大将が会長になるという変わったシステムになっている。


愛紗は孔明に説明した。


「それじゃあ…」

「ああ。我ら四人は、関羽を大将にして、生徒会長戦に出る予定だったのだが…」

「すいません、そんな大事な時なのに、私のせいでこんなことになってしまって…」

「なに、悪いのは鈴々の方なのだから、孔明殿が責任を感じることではない」

「けど、まじでどうすんだ?張飛抜きじゃ面子が足んないぞ?」

「そうだぞ。確かにあやつはバカだが、筋金入りのバカだけあって、あの馬鹿力は武将としてそう馬鹿にできんぞ?」

「ちょっと馬鹿バカ言い過ぎじゃあ…」


馬超は苦く笑う。


「心配するな。しばらくしたら…〈やっぱり鈴々が悪かったのだ〜♪〉とか言って、泣きついて来るに決まってる」

「…だといいがな」


星の一言で、その場は少し暗くなった











数本の木々が立ち並んでいる自然公園の道を一刀は走っていた。一刀が走っている先に一人の男子学生がいた。


「遅いでかずピー」

「悪い悪い、待たせたな及川」


一刀は笑いながら前にいる男子に謝る。

金髪に染めており、眼鏡をかけた関西弁の男子学生。名前を及川 祐と言う。一刀とは中学からの付き合いで、親友であると共に悪友(ある意味)である。


「ほな行こか」

「おう」


二人は弁当を片手に道を歩く。


「どうせ、彼女である関羽はんとイチャコラ話しとって遅れたんやろ?」

「イチャコラって、愛紗とは只の幼馴染みだし、普通に話してただけだよ」

「かぁ〜これやからモテ男は!女子の殆どを虜にしておいてよう言うわ〜」


及川の言う通り。男子と女子が合併する当日。初めて顔を見合わせた生徒達。

男子の中で成績トップである一刀は、代表として挨拶をすることになった。緊張しながらも堂々と演説を行った。その際にさりげな〜く見せた笑顔(本人自覚なし)。これにより、女子生徒の殆どがズッキューン!と心打たれたのであった。

一刀は一気に女生徒の注目の的となり、一刀は質問攻めをされた。好きな食べ物は?とか、好きな異性のタイプは?等々。

何やら思春期ならではの“危ない質問”もあったがそこは省略。

その優しい人となりも影響して、一刀は女生徒の人気者となった。

密かにファンクラブもできているやらなんとやら…


そして、中学に入ると同時に離れ離れとなった愛紗とも、ここで再会できたのである。


「にしても、どうしたもんかな〜…」


一刀は小さく呟く。


「どうしたんや?かずピー。元気ないのぉ。関羽はんと喧嘩でもしたんか?」

「いや、そんなんじゃねぇんだけど」

「かずピー…」


及川は眼鏡を中指でくいっと上げる。


「すれ違っておると、大事なもん、失くすで…?」

「及川…」


空を見上げ、何やら黄昏れている友の肩に一刀はポンと手を置く。


「…………またフラれたのか?」

「ほっといてぇなぁ!!」

「これで何十回目だっけ?」

「ついに百をいきました…って何言わすねんこらぁ!!」

《せんぱ〜い!》


広い野原の上で、二人の男の子がこちらに手を振っていた。制服のラインは赤色。一年生の様だ。


「遅いじゃないですか」

「結構時間過ぎちゃいましたよ」

「ごめんごめん、それじゃあ食うか。瑠華、【猛】」


一刀は及川と一緒に二人の後輩と腰かける。一人は、綺麗な瑠璃色の髪をした男の子、月読こと瑠華。

そしてもう一人が、瑠華と同じ一年生で、名を【五十猛】(いそたける)。親しい者からは猛、或いは“もう一つの名前”で呼ばれている。

一刀よりちょっと濃い茶髪で、長さは肩にかかるか、かからない程度である。瑠華と同様、男には見えないほど可憐な容姿をしている。背は瑠華より少し高い位だ。武道もたしなんでおり、その実力は折り紙付きだとか


二人は中学で知り合い、意気投合して親友になった。一刀ともそこで出会った。男子共学制になった一年後にこの学園に入学し、二人共同じクラスである。

一刀達にとっても、文字通り“可愛い後輩”であり、二人も一刀の事を尊敬している。もちろん、二人も可愛らしい顔立ちをしているため、入学早々学年関係なしに人気を得たのであった。




男子四人はそれぞれ昼食をとる。

一刀は自作の弁当。瑠華は購買で買った色々な種類のパンで、猛はおにぎり三つとおかず(玉子焼き等)。及川は


《…………》

「な、なんや?なに人の弁当を同情の目で、み、見てるんや?」

「……ちょっとおかずやるよ」

「パン半分あげます…」

「おにぎり一ついりますか…?」

「やから哀れむなやお前らぁぁぁぁ!!」













フランチェスカ学園の校舎は[教室棟]と[特別棟]の二つに分かれている。

特別棟の二階に位置する理科室。そこは囲碁部が利用している場所であり、孫策の意思を継いだ孫権率いる“呉”軍の本拠地でもある。


「甘寧、これはどういう事だ!」

「申し訳ありません、周瑜様…」


呉軍の軍師、周瑜は机をバンッ!と強く叩き、甘寧は目を伏せて謝罪する。


「私は穴子サンドを買ってこいと言ったのだぞ?それなのに間違えて、夜のおやつ[鰻サンド]を買ってくるとは、なんたる失態…!」


周瑜は鰻サンドを手にとり、わなわなと握りしめている。


「穴子サンドは購買部でも一二を争う人気商品。売り切れる前にと焦ってしまい…」

「言い訳は聞きたくない!」


周瑜は甘寧を激しく叱咤する。


「周瑜、もうそれぐらいでいいだろう?たかがパン一つでそんなに叱る事もあるまい」


孫権は教卓にもたれ、腕を組んで仲裁に入る。


「そうよねぇ。それより早くお昼御飯に…」

「し〜っ!尚香様…」

「何を甘いことを!」


周瑜の大声にシャオと陸遜はビクッと肩を竦める。


「孫権様!兵糧の確保は戦の基本。それを疎かにしては、大事を成す事など夢のまた夢」

「それはそうかもしれぬが…」

「全く、生徒会長戦も近いというのに、この体たらく。進学先も就職も決まらぬまま、敢えなく卒業されて孫策様がこの有り様を見たら、なんと仰られるか……」


周瑜は嘆くように息をつく。

今の彼女が家でテレビゲームをぐうたらやっている孫策の姿を見たら何と言うか…


「姉上の事を言うな!私には私のやり方がある!」


いつの間にか孫権と周瑜はお互いに睨みあう形になり、その場の空気が重くなる。他の三人もどうにも出来ずにいる。この二人の間に入れる者などこの場にはいなかった







午後の授業も終わり、生徒が早々に下校していく。空は夕焼けに染まり、屋上の手すりにもたれている周瑜を照らしていた。周瑜はふぅ、と静かに息を吐く。


「孫権様は甘すぎる…」


周瑜は橙色の空を見上げた。そこにはかつての主、孫策が映っていた。


「生徒会長の座を目指しつつも、志半ばでいってしまった雪蓮…」

『まだ生きてるわよ〜〜?』

「あなたの頼みだからと、これまで仕えてきたけれど…」


「我が主に相応しい器かどうか、一度確かめてみるか……」


周瑜の眼鏡が太陽に反射して、キラリと怪しく光った








ー翌日ー


昨日と同じ様に孔明は愛紗達と一緒にお昼を食べていた。


「ええっ、私がみなさんと一緒に生徒会長戦に!?」

「うむ」


孔明は詰まりかけた肉まんをゴクリと喉を通す。


「聞けば、孔明殿は人材育成で定評のある水鏡先生の塾で、将来を大いに嘱望された天下の奇才とか」


「是非我らを助けてもらいたい」

「武将はあたしと趙雲がやるからさ」

「期待してるぞ、孔明殿」


三人は、孔明にそう頼む。


「で、でも、それだと張飛さんは…?」

「ふんっ!あんな聞き分けのない虎娘。どうなろうと知ったことか」


鼻を鳴らし、つんとした顔で言う。


「実はあの後寮に帰ってから一悶着やらかしてな…」

「せ、星、余計な事は言うな!」


星が手で壁を作って小声で孔明に伝える。


「出場辞退ってのも格好悪いしさ、引き受けてくれよ」


関羽、趙雲、馬超は三人揃って正座し、右手をグーにし、左手で包む様に合掌する。


《頼む!》


“一顧”


「え?」

《この通りだ!!》


“二顧”


「でも…」

《我らの軍師になってくれ!!!》


“三顧”


これが、かの有名な名軍師を取り入れたと言われる、“三顧の礼”なのかもしれない…


孔明がはわわと弱々しく呟くと、そこへ二本のアホ毛が生えている深紅の髪をした少女がやってきた。あどけない様子で孔明の手にある肉まんを見つめる。


「肉まん…美味しそう……」

「あの、よかったらどうぞ…」


孔明は肉まんを手渡す。


「セキトにも…」


少女は渡された肉まんを半分にちぎって、足元にいる赤いスカーフを巻いた子犬にあげる。子犬は肉まんにかぶりつき、少女も両手でもぐもぐと頬張り、ツンと立った二本の触角みたいな毛がピコピコと動いている。


「ば、馬刺しサンドも食わないか…?」

「こ、こっさりラーメンサンドも、上手いぞ〜…?」

「め、メンマなぞどうだ?」


どこか愛らしい仕草にキュンとする四人。


「なんだか…」

「訳が分からぬが…」

「小動物が食べてる様で…」

「和むな〜…」


“ホワワァ〜〜〜ン♪”


その場はお花畑の様な穏やかな雰囲気に包まれた







校舎の屋上にて、四人の男子学生が円を作る様に集まっていた。彼らの中心にはトランプのカードが束になっている。


「二と八切り、一、はい上がりっと」

「なんやとぉぉぉっ!?」


瑠華が最後のカードを置くと、及川は目と声を大にして叫んだ。

そう、四人はトランプゲームの一つである、大富豪を行っている。

因みに及川の手札は、スペードの三、ダイヤの四のたった二枚。明らかに勝敗は見えていた。


「あ〜あ、またお前最下位じゃねぇか」

「及川先輩弱すぎですよ」

「“お・や・く・そ・く”お約束ですね」

「流行語アレンジすな!腹立つわこのクソガキ!」

「先輩、もうちょっと頭を使わないと…」

「やかましいっ!今度こそお前らを富豪の座から引きずり下ろしたるわぁ!」

「貧民、いや大!貧民の先輩が出来るんですか〜?」

「ワイの本気見したるわボケェ!」


二人の後輩になめられた及川はカードを揃えると、気合いを入れる様に、シュバババッ!と目にも止まらぬ速さでシャッフルする。ディーラーのみたいにカードをシュッと全員にそれぞれカードを渡す。

カードを手に取ると、手札を目で追い、手持ちのカードを確認する。


「ゲームスタートや!」

《はいはい…》


何回目か数えるのも忘れる位やりつくした大富豪をまた行う四人。それだというのに及川は一勝も出来ていなかった。勝負運がないのだろうか。

ルール通り、カードを順番に置いていく。及川、猛、瑠華の順番で回していき、一刀の番になった。しかし、一刀はカードをボーッと見たまま動かない。


「先輩、先輩の番ですよ?」

「ん?…あ、ああ悪い悪い」


瑠華に促された一刀は、一枚のカードを出す。


「本気でどないしたんや?かずピー」

「さっきから俯いてばっかりで、何かあったんですか?」

「僕達でよかったら、聞きますよ?」

「うん、ありがとう。実はさ……」


自分を心配してくれる三人に感謝し、一刀は顔を上げる。そして、悩みの種を打ち明ける。


「う〜ん、関羽はんと張飛ちゃんがな〜」

「喧嘩しちゃったんですか…」

「そうなんだよ」


四人は手を休め、ゲームを中断していた。

後輩二人が思い出したように答える。


「そういえば鈴々、教室でやたらとやけ食いしてた」

「ああ、あれは完全に拗ねてるな。見てて分かるよ」

「関羽はんとは話したんか?」

「話したんだけど、相も変わらず…」


一刀はやれやれと肩を落とす。


「生徒会長戦に出るんやろ?早いとこ、溝埋めなアカンのちゃうん?」

「あの二人も二人で似てる所があるからな〜。お互い頑固な所とか」

「なるほどな〜、かずピーはよう見とるな〜」

「まぁね。だから、ほっとけなくてさ」


一刀は笑いながら頬をかく。他の三人は、やっぱりなと見合って頷いた。

これが親友、先輩の良い所だ。


「やからって悩みまくって倒れでもしたら洒落にならんで?」

「大富豪で気持ちを落ち着かせたらどうです?」

「その方がいいですよ」

「…そうだな。ありがとう、みんな」


気にかけてくれる親友と後輩に、一刀は礼を言う。

全部話したおかげか、楽しくやることができた。


「そういや、今年の生徒会長戦も女子ばっかやな」

「そうなんですか?」

「おん。合併してまだ一年しか経ってへんからな〜。今や女子有利の時代と言ってもおかしくないで?」


カードを出し入れしながら、生徒会長戦の事を話題に出す。


「誰か、男子で生徒会長に立候補する人いないんですかね?」

「おらへんやろ〜、そんな勇気のある奴。力のない男は、力ある女子に蹴落とされるだけなんやって」

「なんか、聞いてると恐ろしいですね…」

「うん…」

「そういうもんや、少年達よ…」


どこか先輩面している及川(まあ先輩なのだが)。後輩二人もこの時だけはちゃんと聞いていた。


「まあ、今年も女子の前にひれ伏せなあかんってことやな」

「社会の厳しさを改めて思い知らされましたよ」

「確かに、最低でも四人必要ですもんね」

「やろ?生徒会長戦に出ようと思う男子なんかおるわけ…ん?」


及川はそこで言葉を止めた。順番が来たというのに、どこか思想の表情を浮かべている彼を見て、後輩二人も疑問に思った。


《先輩?》

「おーい、今度はなんや?出せるカードないんか?」

「それだ…」

《えっ?》

「それだっ!!」


一刀は手持ちの四枚のカードを真ん中の束に叩きつけた。三人は突然の反応に驚き、呆然とする。


「ど、どうしたんですか?」

「及川、生徒会長戦の申し込み。まだ間に合うか?」

「へっ? 」


間の抜けた返事をした及川は、すぐに返答を返す。


「いや、今日の放課後までやから、まだいけるんと…ちゃう?」

「そうか…ならやるか」


瞳には決意が込められており、作戦を考えたイタズラ小僧の様にニヤリと口角を上げる。


《(まさか……)》


三人の思考は一致した。ピッタリと。


(いたよ…)

(ここにいた…)

(戦いに身を投じる勇敢な男子が一人ここにおったわ…)


一刀は真剣な面持ちで三人と向き合う。三人は少し身構える。だが、何となく予想がついていたのか、アイコンタクトののち、すぐに彼と同じ様な笑みを浮かべる。


「みんな……頼みがある!」


叩きつけられた四枚のカードは表を向いて並んでいた。


左からスペード、ダイヤ、ハート、クラブの四のフォーカード




ーーー[革命]ーーー





ー放課後ー


それぞれの群雄が明日の準備を行っていた。


そんな中、“ゼブラマスクを被った女性”が、一人だけ謎の動きを見せていた












ーーーそして、その日がやって来た。


〔さぁ!晴れ渡る空の下!聖フランチェスカ学園の日がやって参りました!〕


司会の陳琳の声がマイクを通して空に届く。

愛紗が大将の関羽軍も、新軍師である孔明を仲間に引き入れた。


〈関羽〉


気合いを入れていくぞ!と言うときに、横から声がした。そこには曹操率いる魏軍の面々がいた。


「良い軍師を見つけた様ね」

「曹操殿」

「水鏡塾の“伏龍”を引き入れるなんて、流石ね」


曹操は孔明を見ながらそう評する。


「へぇ〜…」

「天下の奇才とは聞いていたが…」

「お主があの“伏龍”とは…」


愛紗、星、馬超の三人は、感嘆の言葉を出し、孔明は恥ずかしそうに下を向いた。


「でも、私は負けないわよ。関羽、あなたのしっとり艶々を手に入れるためにね♪」

「えっ!?」


聞いての通り。曹操は百合少女である。

愛紗は顔を赤くして俯く。


「華琳様ったら〜…」

「私達というものがありながら〜…」

「まあまあ、姉者」


曹操の部下、夏侯惇、夏侯淵、荀イクの三人。勿論、三人とも彼女と同類である。




〔これより開会式が始まります!尚、今回は解説に養護教諭の黄忠先生をお招きしています〕

〔よろしくお願いします〕


司会の陳琳の隣に黄忠が座る。


〔まずは全選手、入場!〕


高らかに鳴り響く銅鑼の音と共に、群雄が行進する。それぞれのチームには、誘導として先頭に、プラカードを持ったメイドが歩いている。

司会の陳琳は各チームの紹介を行う。


一チーム目、入場


〔学年の美少女は全て私の物!ガチ百合クイーン!“曹操”〕

〔バランスのとれた戦力に鉄の忠誠心。今回の優勝候補筆頭でしょう〕


二チーム目、入場


〔暴虐不断!悪逆非道!死の天使!“董卓”〕

〔華雄に呂布と戦力は揃っているのですが、全体の統率がとれていないのが危ない所でしょうか〕


三チーム目、入場


〔姉上の意志は私が継ぐ!よく分からないが額のマークは伊達じゃあない!“孫権”〕

〔軍師にエースの周瑜を外して、控えの陸遜を出してきたのが注目ですね。後、本当に何なんでしょう?あのマーク〕


四チーム目、入場


〔もう影が薄いとは言わせない!白ブルマ将軍!“公孫賛”〕

〔一匹狼を集めた急造チームですが、“ゼブラ軍師”と名乗る謎の人物が気になりますね〕


五チーム目、入場


〔しっとり艶々なのは髪だけじゃあない!全ての挑戦、受けて立つ!“関羽”〕

〔新加入の軍師、孔明がどこまでやってくれるか楽しみです〕


六チーム目、入場


〔三馬鹿から四馬鹿へ!新たに張飛を配下に収め、意気軒昂な“袁紹“〕

〔無謀にも知力三十四の顔良を軍師として、関羽軍を離脱した張飛を武将に迎えたのですが、果たしてそれが吉と出るかどうか…〕


司会の紹介に、驚きの表情を見せる愛紗達。鈴々は、ニヤ〜っと挑発するような笑みを愛紗に見せた。愛紗は眉に皺を寄せる。


これで全チームの紹介が終了、と思いきや


〔続いて、最後のチーム!なんと今回は、男子チームが初出場致します!〕


他のチームと観客達がザワザワと騒ぎ出した。初の男子出場という事に皆驚きを隠せない。

そして、七チーム目、入場


〔女子だらけの戦いに勇敢にも立ち上がった男子のリーダー!イケメンで有名な女たらし!“北郷 一刀”!〕

「女たらしは余計だろ!?」


一刀は大声で抗議する。紹介が終わった直後、好意の声援、拍手喝采が巻き起こった(特に女子から)。


〔強いカリスマ性を持つ大将と、パワーとスピードを得意とする一年生二人。全男子の代表として、この三人には頑張ってほしいですね♪〕

「黄忠先生!ワイの事は〜!?」


完全に忘れられてる及川であった。


「にしても、えらい人気やな〜。流石かずピーやで」

「ちょっと恥ずかしいけどな…」

「でも、男子が出場するのって、僕達が初めてなんですよね?」

「まあそうなるな」

「なんかすごい事になってきたね〜」


一刀を先頭に、瑠華、猛、及川の順番で進んでいる。初めて出る行事に緊張しながらも、全員の気持ちは落ち着いていた。

そんな彼らを、愛紗達は遠くから見ていた。


「一刀も出るのか…」

「か、関羽さん。大丈夫ですか?」

「何がだ?孔明殿」


恐る恐る聞いてくる孔明に、愛紗は首を傾げる。


「だって、恋人の北郷さんと戦う事に…」

「えぇっ!?な、何を言って…」

「え?違うんですか?」


キョトンとした表情を浮かべる孔明。愛紗は頬を赤くして、両手を左右に素早く振って、否定する。


「ち、違う違う!一刀とは只の幼馴染みで!別に、男女の関係とかじゃあ…」

「しかし、何れはそうなりたいと願う、愛紗であった」

「星!余計なことを言うな!」


慌てて、星の言葉を揉み消す愛紗。チラッと男子の方を見てみると、女子からの応援に恥ずかしそうに照れている幼馴染みの姿があった。その様子を見て、無意識にムッとした表情を浮かべるのであった。


〔それでは、開幕に際して学園長からのお言葉です!〕


選手全員が並び終えると、スーツを着た強面の一人の男性がマイクの前に出る。

色黒の禿げ頭で、両耳の上に三つ編みされた髪が生えている。


「えぇ〜ウォッホン!儂が、この聖フランチェスカ学園の学園長…」


一瞬、力んだと思いきや、服がビリビリと破け、筋肉隆々の肉体が露になった。


「貂蝉よ〜ん♪うっふぅ〜ん♪」


途端に全校生徒がずっこけた。


「みんな〜♪生徒会長戦がんばってねぇ〜ん♪」

「あ、相変わらずだな…貂蝉学園長」

「ほんまやな…」


一刀と及川は揃って顔を引きつる。


「かわいい男子達ぃ〜、初めて出場する行事だけど、精一杯がんばってちょうだぁ〜い♪応援してるわぁ〜ん、ムチュッ♪」


貂蝉のえげつない投げキッスが男子を襲う。


「危ねっ!」

「おっと!」

「うわっ!」

「ぐはっ!や、やられた……ガク」

《及川(先輩)!!》


もろに受けてしまった及川。北郷軍、いきなり負傷者が


「生きとるわ!」


…出なかった様だ。


「え〜、学園長のありがた〜いお言葉を貰って、さぁ、開幕!」




―聖フランチェスカ学園〔生徒会長戦〕開・幕!!―



内容が多くなってしまい、二つに分けることにしました。

次回は、ちょっとだけ設定を変えるつもりです。

次回も楽しみに待ってくださると嬉しいです♪

それでは!

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