~一刀、化け物を退治せんとするのこと~
今回は、結構長めに書いたかもしれません。読みにくいかもしれませんが、是非ご覧になって下さい。
それでは、どうぞ!
「や〜ま〜があ〜るか〜らや〜まな〜のだ〜♪か〜わ〜があって〜もき〜にし〜ない〜♪」
「おい、変な歌を大声で歌うな。恥ずかしいだろう。」
山の森の中、一刀達五人は道を歩いていた。その中で鈴々がよく分からない歌を歌い出し、愛紗が注意していた。
「何言ってるのだ愛紗。山を歩く時は、熊避けのために歌を歌った方がいいのだ。じっちゃんがそう言ってたのだ。」
「へぇ〜そうなの?」
「そうだ。こんな山の中でいきなり愛紗と鉢合わせしたら、熊が驚くだろう。」
「そうそう。こんなところで私にばったり会ったら熊が可哀想…って何でだ!!」
星のボケに愛紗がツッコミをすると、星が急ににやけた。
「な、何だ?私の顔に何か付いているか?」
「いや、公孫賛殿よりやはりお主の方が面白いと思ってな。」
「ええ〜…。」
「おいおい、程々にしとけよ?」
「それでは、面白くないであろう?」
一刀がそう注意すると、星は真顔で返事をした。
「きゃあああ!!」
「「「「「っ!?」」」」」
突然、向こうの方から悲鳴が聞こえ、五人は直ぐ様悲鳴がする方へと向かった。
悲鳴が聞こえる所に一人の女の子が木を背に立っており、山賊らしき三人組が女の子を囲んでいた。
女の子は、白に近い紫で前髪を上に持っていき少しウェーブがかかった髪で白色の服を着ていた。
山賊の方は頭らしき男とチビの男、そしてデブの男の三人である。
「酷い…私を騙したのですね。」
「別に騙しちゃいねぇよ。」
「けど、村への近道を教えてくれると言っていたのに、こんな所に連れてきて…。」
「ちゃんと近道は教えてやるよ。最も、村へのじゃなくて天国へのだけどな。」
山賊の頭は汚い笑みを浮かべながら、そう言い放った。
「天国…それでは、私を殺すつもりなのですね。」
「そうじゃねぇよ。気持ちよくして、天にも昇る心地にしてやるつもりなんですよ。」
〈お前たちの連れていってくれる天国とやらは大層良い所のようだな。〉
「それはもちろん、最高に…て、え?」
山賊が声のする方を振り向くと、そこには武器を持った五人の男女がいた。賊達も武器を構えた。
「何だおめぇら!?」
「聞いて驚け!この者こそ噂と違って、絶世の美女ではないので気づかぬかも知れぬが、黒髪の山賊狩りだ!」
「っておい!!」
星の紹介に愛紗は声を張り上げた。
「弱いものいじめをするやつは許さないのだ!」
「私も貴様らの様に無粋な言葉を吐く輩が嫌いでな。」
「同じく僕もお前達みたいな奴等は大嫌いだ!」
「残念ながら天国へは案内してやれぬが、この青龍偃月刀で地獄に送ってくれる!」
「そういうわけで、覚悟はいいか?」
五人は賊に向けて、威嚇するように言い放った。
「やれるもんならやってみやがれー!」
賊達は怯みながらも、五人に攻撃を繰り出そうとする。しかし、
「地獄へー!」
「行ってー!」
「来まーす!」
頭を一刀と愛紗が、チビを鈴々が、デブを瑠華と星がそれぞれ相手をし、賊達は呆気なく空へと飛んでいった。
「ざまみろなのだ。」
「あの、助かりました。ありがとうございます。皆さん、本当にお強いのですね。」
「い、いや〜何、それほどでも。」
賊に囲まれていた女の子が、五人にお礼を言うと、愛紗は満更でもない様子を見せていた。
「あ、申し遅れました。私はと…と…トントンです。」
「鈴々と似てていい名前なのだ。」
「そ、そうですか…。」
女の子は、自分の名前を言う際に少し考えるとトントンと名乗りだした。鈴々が名前を誉めると、トントンは苦笑いを浮かべた。
「私は、関羽。」
「鈴々は張飛なのだ。」
「趙雲です。」
「僕は月読。」
「俺は北郷一刀。よろしくね。」
五人も、それぞれ自己紹介を行った。
「トントンちゃん。町へ行きたいのなら、俺達と一緒に行かないか?」
「よろしいのですか?」
「ああ、もちろんさ。なあ?」
「ええ、さっきみたいにまた山賊に出くわしたら、大変ですからね。」
愛紗もそう言うと、他の三人も同意した。
「それではよろしくお願いいたします。」
一方、とある大きな屋敷の中、廊下を一人の女の子が歩いていた。髪は緑色で三つ編みを二つに結んでいて、眼鏡をかけておりその奥に見える眼は若干吊り目で、名を【賈駆】と言う。今のその様子はイラついてる様に見える。
「あの子ったら、また抜け出したのね。全くもう。」
「おや、賈駆ではないか。浮かぬ顔でどうした?」
「華雄将軍。」
廊下の角で、賈駆は一人の女性と出会った。銀髪のショートカットで名を【華雄】と言う。
「月が…董卓様が、またいなくなってしまって…。」
「というと、また例のあれか?お忍びで、下々の暮らしを見て回るという。」
「ええ。はぁ〜、町の治安が悪くなっているこんな忙しい時に〜!」
「賈駆よ。心配ばかりしていると早死にするぞ?」
「華雄将軍、あなたは悩みがない分、長生きしそうねぇ?」
「ま、体は鍛えているからな♪」
賈駆の言葉に華雄は腕を組みながら答えた。賈駆もその様子を見て、溜め息をついた。
一刀達は山を越えると、町への一本道に出た。そして、トントンは町へ行く理由を話始めた。
「え?化け物?」
「はい。ある日、村の庄屋様の門に白羽の矢が打ち込まれ、それに結びつけられていた文に、
[今宵、村の外れの御堂に食べ物を供えよ。でなければ、村に災いが降りかかるであろう。]
と書いてあったとか…。最初は、いたずらだと思い、そのままにしておいたのですが、朝になって見ると、山から運んできたのか、門前に大きな岩が忽然と置かれていて。これは人の仕業じゃない。化け物の仕業だと…。」
トントンが話していると横で愛紗と鈴々が少し震えていた。
「それで、急いでその夜、御堂に食べ物を供えたら、それから七日に一度の割合で矢文が打ち込まれるようになったとか…。」
「何と奇怪な…。」
「…うん。」
「でも、これは町での噂。本当かどうか確かめたくて…。」
「でも、トントンちゃん。どうして君がそこまでして?」
「え?そ、それは、その…」
一刀がそう聞くと、トントンは急に慌てだし、あたふたし始めた。
「“さっきの名前の時といい、この子は一体…?”」
「何なのだ!?あれ!」
自分の名前を言うときはすぐに言えるはずなのに、彼女は明らかに考える素振りを見せてから名前を言った。一刀はこれが気になっていた。一刀がトントンについて考えていると、鈴々が急に村の方を指さしながら、叫んだ。
一刀達は村の方へ向かった。村へ着くと、屋敷の門の前に大きな岩が置いてあった。門が隠れる位のでかさで重さも相当のものだと予想できる。
「きっと、これが化け物の置いていった岩なのですね。」
六人は、村の庄屋の屋敷の客間で話を聞くことにした。
「庄屋様。それでは化け物が出るというのは本当だったのですね。」
「はい。困り果ててお役人様に訴えて見たのですが、化け物などいるはずがないと逆にお叱りを受ける始末…。」
「そんなひどいことを!?」
トントンは急に声を上げ、立ち上がった。一刀達が彼女の反応に驚いていると、トントンは我に帰ったのか、座り直した。
「コホン。それで、村の力自慢や旅の剣客などに頼んで化け物を退治してもらおうとしたのですが、いずれも惚々の手で逃げ帰って来て…」
「そ、そんなに恐ろしい化け物だったのですか?」
愛紗が庄屋に恐る恐る聞くと、庄屋はコクリと頷いた。
「しかと見た者はいないのですが、ある者は身の丈三十で赤く光る眼をしていたと言い、またある者は鋭い角と牙を生やしていたと言い、全身毛むくじゃらで恐ろしい唸り声をあげていたと言う者もおり、一体この村はどうなってしまうのか…」
庄屋の話を聞いていると、愛紗と鈴々は化け物を想像していたのか、若干震えていた。
「こんな時こそ、我らの出番だな。」
「そうだな。」
「うん。」
「「えぇ!?」」
星の言葉に一刀と瑠華が同意する中、愛紗と鈴々が声を上げた。
「ん?どうした?お主達から言い出すと思っていたが…。」
「俺もてっきり…。」
「うんうん。」
星と一刀と瑠華は呆気にとられていた。
「引き受けてくれますか?」
「しかし、相手は正体不明の化け物。」
「この方たちは、恐ろしい山賊を倒すほどお強くて、自分の腕に自信がおありなのでしょう。」
「おお!それなら是非!」
「い、いや、そんな勝手に決められても…」
「そうなのだ!鈴々にも色々都合があるのだ!」
「駄目…なのですか?」
愛紗と鈴々が断ろうとすると、トントンは涙目になっていた。
「いや、その〜…」
「お願いします…村の方々が困っておられるのです…。」
「えっと〜…。」
「お願いします…」
トントンの捨てられた子犬のようなうるうるとした眼で言われ、愛紗は口ごもる。
「そ、そういう事なら…」
「よかった。引き受けてくださるのですね?」
「い、いや、その」
「ありがとうございます♪」
トントンは途端に笑顔になり、愛紗に駆け寄り彼女の手を両手で握り、お礼を言った。今更断れないと考えた愛紗は溜め息を吐いた。
「フフッ」
「星、どうしたの?」
「いや、何。ちょっと面白い事をな。」
「“星の奴、何か企んでんな。”」
「?」
星がニヤリと笑い、瑠華が問うと星は瑠華の頭を撫でながらそう答えた。一刀が嫌な予感を抱く中、瑠華は何なのか分からずにいた。。
そして、予定の時間となった夜。御堂に向けての山道を庄屋達が食べ物が積んである荷車を押しており、一刀達はその後を歩いていた。
「二人共、少し震えているようだが。もしかして、怖いのか。」
「こ、怖くなんかないのだ!」
「そ、そうだ!これは、その…む、武者震いだ!」
「“…武者震いは無理があるような…”」
一刀は苦笑いを浮かべた。二人は強がっているが、愛紗は一刀の制服の袖を掴み、鈴々は手を握ってもらっていた。
「ほう、そうか?」
「な、なんだ?」
「いや?別に。」
星は笑みを浮かべたままである。そのまましばらく歩いていると、
「はっ!」
「「ひぃ!」」
「うっ!」
星が急に立ち止まると、二人は少し悲鳴を上げ、一刀にしがみついた。一刀に至っては、愛紗が抱きついたことによって、愛紗の大きな胸が当たり、一刀も体を強ばらせていた。
「ど、どうした!?」
「いや?折角月が綺麗だと言うのに、雲が出てきたなと思ってな。」
「な、何だ。そんなことか。」
ホッと息を吐くと、また歩き始めた。ちなみに二人は一刀にくっついているままである。
「はっ!」
「「ひぃ!」」
「うっ!“さ、さっきよりも…”」
またまた星が急に立ち止まり、愛紗と鈴々は一刀にしがみついた。愛紗の方もさっきよりも強くしがみついてきて、更に柔らかい感触が一刀の右腕に伝わった。
「こ、今度は何だ!?」
「昨日、茶店で団子を食べた時、お主私より一本多く食べてなかったか?」
「ま、まあ、確かにそうだったかもしれんが。今、そんなことを思い出さなくとも… 」
「フフッ」
「…お主、わざとやっているだろう?」
星が鼻で笑うと、愛紗と鈴々はからかわれたことに気づき、ジト目で星を見ていた。
「おいおい、ほどほどにしとけよ?星。」
「おやおや、でも、一刀もいい思いをしたであろう?」
「うっ!“こいつ見てたな?”」
星が耳元でそう呟くと、一刀はそれ以上言うことはなかった。
そして、御堂に着くと、庄屋達は荷車に積んであった食べ物を御堂の中に運んだ。
「これで全部だな?それでは、頼みますぞ。」
「化け物退治、頑張ってくださいね。」
「ああ。」
「う、うむ。」
「ど、どーんと任せるのだ。」
一刀が普通に返事をするのに対し、愛紗と鈴々は頼りなさそうな返事を返した。
そして五人は、御堂の中へ入っていった。
「これはまた、いかにも出そうな感じだな。」
星はそう呟いた。
御堂の中は薄暗く、何本かの蝋燭に火が灯っており、床もギシギシと鳴るような古ぼけた床で、星の言うとおり、いかにも何かが出そうな雰囲気を出していた。奥には仏壇があり、回りにはさっき庄屋達が置いていった食べ物が置いてあった。
一刀達は中央の所で、円を描くように座った。
「さて、化け物が出るまでここで待つとするか。」
「そ、そうだな…」
「……そういえば、あれもこんな月のない夜だったな…」
星は声量を小さくし、何かを語り始めた。愛紗と鈴々はごくりと喉を鳴らし、一刀と瑠華も話を聞いていた。
「日のある内に山を越えようと歩き始めたのだが、道に迷ったのか、行けども行けども人里に出ず、これはもう野宿するしかないかと思い始めた頃、春風にしては妙に生暖かい風が吹いてきて、」
星の話を聞いている中、愛紗と鈴々は徐々に一刀の方に近づき、服の裾を握っていた。
「どれ程眠ってしまったのか、何かをカリカリと引っかくような音で私はハッと眼を覚ました。最初は、天井裏に鼠がいるのかと思っていたのだが、よくよく耳を澄ましてみると、それは真新しい棺の中から聞こえてくるらしい。」
愛紗と鈴々は完全に一刀の腕に抱きつき、星の話に怯えていた。一刀は二人共怖いんだなと思いつつ、話を聞いていた。
「嫌な予感を覚えつつ、私は吸い込まれるかの様に近づき、棺の中を恐る恐る開けてみると……」
愛紗と鈴々は抱き着いている力を強めた。
「うわあああああああああああ!!!!」
「「きゃああああああああああ!!!」」
「ぶふぅ!!」
「あっ…」
星は突然、大声を張り上げた。愛紗と鈴々は驚きの余り、両手を思いきり振り上げて悲鳴をあげた。二人の両手は一刀の顎をとらえ、ダブルアッパーを受けた一刀は宙を舞い、背中から床に落ちた。一刀は完全に気を失ってしまい、愛紗と鈴々もその場に倒れてしまった。
「おっと、ちょっとやりすぎたか。」
「…ちょっとどころかな?これ。」
「一刀は…駄目か…」
「完全に意識が飛んでるね。」
「おい愛紗、鈴々。」
「「う、うぅ〜ん」」
星は肩を揺すり、二人を起こした。
「目〜を〜覚〜ま〜せ〜!」
「「きゃああああああ!!!」」
星は火の灯っている蝋燭を手に顔の下にやると、二人は悲鳴を上げて御堂を飛び出した。
「「きゃああああああ!うっ!」」
二人はすごい勢いで走っていると何かにぶつかり、尻餅をついた。何かと見上げてみると、そこには人間と同じ背丈の白虎が立っていて、暗闇の中で赤い眼をギラリと威嚇するように光っていた。
「ば…化け物ぉ…」
「…なのだぁ…」
二人はお互いに抱き合い、目の前の事にガタガタと震えながら、その場で気を失い、倒れた。
「やっとお出ましか。」
「その様だね。」
星と瑠華は、御堂から外へ出てきた。それと同時に、雲で隠れていた月が姿を現し、光を照らし始めた。
すると、そこには化け物ではなく、白虎の毛皮を被った女の子がいた。顔は隠れて見えず、肩に担いでいる武器、『方天画戟』を片手に持ち、石突きには犬のストラップらしきものがついていた。
「正体を現したな。そこに倒れている二人と違って、我ら二人はそんなものに驚きはせんぞ。」
「「はあああああ!!!!」」
星と瑠華は一斉に駆け出し、攻撃を仕掛けた。しかし、相手は横薙ぎに振り、二人を弾き飛ばした。
「何だ!?この重い一撃は…」
「…たった一振りで弾き飛ばすなんて…」
二人は驚きながらも、すぐに体勢を立て直し、二手に別れ、攻撃を仕掛ける。しかし、相手は素早く武器を振り回し、瑠華を弾き飛ばし、星目掛けて戟を振り下ろした。星はその重い一撃を受け止めるも、徐々に押されていた。
「“こ、こいつ、強い!”」
「はあああ!!」
星は相手の凄まじい強さを改めて、実感していると、相手の後ろから瑠華が飛び上がり、逆手に持った撃剣で相手の首目掛けて斬りつける。しかし、相手は星を押し返すと、横にずれてかわした。そして間髪入れず、戟の柄を瑠華の後頭部に叩きつけた。
「何!?がはっ!!」
「瑠華!!」
星は気絶して吹き飛ばされた瑠華を抱き止めた。相手は攻撃の手を緩めず、戟を振り下ろした。星は龍牙を片手に持ち、防ごうとしたが、耐えきれずに手放してしまう。そして相手は、戟の石突きで星の鳩尾にぶつけた。その際、子犬のストラップが外れてしまった。
「うぐっ!…くっ…」
星は瑠華を抱き抱えたまま、鳩尾を押さえて、倒れた。倒れたのを確認すると、相手は御堂へ歩いていった。
翌朝、五人は庄屋の屋敷の客間で、朝食を取りながら昨日の夜の事について話し合っていた。
「何?化け物ではない?」
「ああ、紛れもなくあれは人間だ。」
横で瑠華も首を縦に振っていた。
「しかし、そうと分かればもう怖くはない。」
「では、そうと分かるまでは怖かったのだな?」
「い、いや、その…。と、とにかく次に会った時は成敗してくれる!」
「コテンパンにしてやるのだ!」
「確かにあれは人間だった。でも、強さは化け物並だ。」
「相当だよ。あれは…」
星は右手に持っている子犬のストラップを見つめていた。
一刀は町に残り、門の前の大岩を何とかしてから行くというわけで、御堂の前には、愛紗、鈴々、星、瑠華、トントンの五人が、手がかりを探していた。
「しかし、トントン殿は村で待っておればよいのに。」
「相手が人間なら、こんなことをする理由があるのかも。もしそうなら話を聞いて」
「あった。」
急に瑠華が声を出し、彼女達はすぐに駆け寄った。瑠華が見つけた草むらの奥に人の足跡があった。
「恐らく、これが奴の足跡だ。」
「あっちへ続いているな。」
「行ってみるのだ。」
五人は、足跡を追って奥へと進んでいった。
愛紗達が御堂の所へ向かった少し後、一刀は庄屋の門の所にいた。
「にしても本当にでかいなぁ。」
「力持ちの大男三人でも、持ち上がらなかったんです。」
「……庄屋さん、少し下がってて下さい。」
「え?な、何を?」
庄屋を後ろに下がらせて、一刀は木刀を両手に大岩の前に立った。すると一刀は、眼を閉じ、息を吸い、ゆっくりと吐いた。そして、一気に眼を見開いた!
「はああ!!」
木刀を一回引き、岩の一点目掛けて、凄まじい高速の刺突を繰り出した。木刀が突き刺さった部分から岩全体に亀裂が走った。大きな岩は崩れだし、小さな岩にばらけた。
庄屋は後ろで、口をあんぐりと開けて目の前の光景に驚いていた。
「ふぅ〜これくらいの大きさだと、運びやすいと思うので、それじゃ後はよろしくお願いします。」
「…あっ!は、はい!ありがとうございました!」
一刀は庄屋に頭を下げると、御堂のある山の方へと向かった。庄屋は我に帰ると、頭を下げてお礼を言った。
「“俺も手伝いたいけど、あれくらいの大きさにしといたら、数人でも片付けられると思うし、大丈夫か。星と瑠華から聞いた限りでは、相当な奴に違いない。急ぐか。”」
一刀は走るスピードを速め、愛紗達の元へと向かった。
愛紗達は奥へと向かうと、小川の近くの洞穴を見つけた。
「ねぇ、あれ…」
「うむ。恐らくあれが奴の住み処だ。」
すると、草むらの方から白虎の毛皮を被った女の子が飛び出し、戟を振るった。愛紗は咄嗟に、青龍偃月刀で防ぎ、押し返した。
「下がってるのだ。」
「は、はい。」
鈴々はトントンを木の陰に下がらせた。
「気をつけろ!奴だ!」
星の言葉と共に、他の三人は武器を構え、警戒する。
「…昨日、勝手に気絶した二人…」
「ゆ、昨夜は不覚をとったが、今日はそうはいかんぞ!」
「鈴々の強さを思い知らせてやるのだ!」
「お主、化け物でないなら名があろう?」
少女は、白虎の毛皮を脱いだ。眼、髪の色が共に真紅で頭の上に触覚の様に二本のアホ毛が立っており、若干褐色肌で刺青が彫ってある。少し、あどけない感じを出すその少女は口を開いた。
「呂布…奉先…」
少女、【呂布】は名乗ると、四人に向かって走り出した。四人も攻撃を仕掛けるも、いとも簡単に弾き返された。
「くっ!な、何だ!?これは!」
「こんなの、初めてなのだ…」
「だから言ったであろう。強さは化け物並だと。」
四人は、一斉に走り出した。しかし呂布は、片手で星を弾き飛ばし、愛紗を蹴り飛ばし、鈴々を弾いて、瑠華に振り下ろした。瑠華は何とか受け止めるも、力の差か、ジリジリと後ろへと押されていく。
「くっ!うう!」
「瑠華!!」
「今、行くのだ!」
星と鈴々は瑠華を助けに行く。呂布は瑠華の腹に蹴りを入れて吹き飛ばすと、戟を高速で振り回し、弾いた。
「くっ!」
「うぅ…」
「鈴々!星!っ!」
呂布は休む暇を与えず、愛紗に高速の斬撃を繰り出す。愛紗も必死に耐えるが、呂布の重い斬撃により、手が痺れてきた。すると、突然攻撃が止まった。よく見ると、戟の刃の部分に、クナイがついた紐が巻き付いていた。紐の先を見ていると、瑠華が紐を全身の力を使って引っ張り、呂布の戟を止めていた。呂布は戟を振り下ろそうとするが、瑠華は歯を食い縛り、食い止めていた。
「愛紗!今のうちにうわっ!」
「瑠華!!」
呂布は紐の部分を掴み、上へ向けて大きく振り回した。地面から足が離れた瑠華はそのまま振り回され、勢いよく木にぶつかった。背中全体をぶつけ、瑠華はその場に倒れた。
「かは!…」
「瑠華!!っ!しまっ…」
時すでに遅し、目の前で呂布が戟を大きく振りかぶり、一気に振り下ろした。
しかし…
ガキンッ!!
「っ!?」
「大丈夫か?愛紗!」
「一刀殿!」
「お兄ちゃん!」
「「一刀!」」
呂布の戟を一刀は木刀で受けとめ、押し返すと、愛紗に駆け寄った。
「遅くなってごめん。愛紗。」
「いえ、そんな…。一刀殿、奴は」
「ああ、分かってる。後は任せてくれ。」
「ま、待ってください!あなた一人では!」
「大丈夫、俺を信じてくれ。」
一刀は笑顔で言うと、呂布の方へと向かった。すると、彼女は一瞬眼を見開くとすぐに元に戻り、今度は両手で構えだした。すると、彼女の体から凄まじい氣が流れ始めた。その様子を見ていた。愛紗達、四人は驚いていた。
「お前…強い。恋…本気出す…。」
「それは、どうも。君、名前は?」
「呂布…奉先…。」
「……成程…なら、こっちも本気でいくか…!」
一刀は彼女の名前を聞いて、驚いていた。三国志最強の武人、【呂布 奉先】人中の呂布とも言われ、後世まで名を残しているその人物が自分の目の前にいる。一刀は木刀を構えた。
二人は無言のまま、一切動かない。すると、二人の凄まじい氣によって一本の木の枝が折れ、ゆっくりと地面に落ちてゆく。木の枝が地面についた。
「「ッ!!!」」
バキィィィン!!!!
二人の姿が一瞬消えたかと思うと、次の瞬間、山全体に響くかの如く武器と武器がぶつかり合う音が轟いた。二人はにらみ合い、鍔迫り合いをしていると、後ろに飛び退き、同時に目にも止まらぬ速さでお互いの武器をぶつけていた。
「こ、これは…」
「お兄ちゃん、すごいのだ…」
「これほどとは…」
「あの方は一体…」
「一刀、こんなに強かったんだ…」
二人の戦いを見ていた彼女達は、目の前の光景に驚くしかなかった。
しばらく打ち合っていると、二人は動きを止めた。
「“流石は呂奉先。伊達じゃねぇな。でも、次で決める!”」
「……」
「「ッ!!!」」
意を決した二人は同時に駆け出した。呂布は戟を素早く振り下ろし、一刀は木刀でその斬撃を反らした。反らされた斬撃は、一本の大木を斬り倒した。
そこへ突然、一匹の赤いスカーフを巻いた、子犬が出てきた。
「あっ!…」
「しまった!!」
「危ない!」
斬り倒された大木が子犬のいる方に倒れていく。すかさずトントンは子犬を抱き抱える。しかし、大木目掛けて一本のクナイが突き刺さり巻き付いた。大木の下では、愛紗と鈴々がそれぞれの武器で受けとめていた。瑠華と星は紐を掴み、必死で引いていた。トントンはすぐに逃げて、何とか助かった。子犬はトントンの顔を舐めている。
〈クゥ〜ン〉
「きゃっ♪くすぐったい♪」
「何とか無事だな。」
「よかったのだ。」
「はあ…はあ…お、重かった…」
「男の子だろう?我慢しろ。」
「うぅ〜…。」
弱音を吐く瑠華に星は瑠華の頭にポンと手を乗せた。
一刀も安心すると、呂布は武器を降ろした。
「お前達…良い奴。良い奴とは戦わない。」
一刀達は、洞穴の所へ案内され、星は呂布に子犬のストラップを返してあげた。そして、今回の件の理由を聞いた。
「村人達に食料を貢がせていたのは、犬の餌にするためだったのですか。」
「自分で餌代を稼ごうとしたことはあったけど……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あ、あの〜…」
「いらっしゃい…ませ…。ご主人…様…。」
メイド喫茶で働く呂布。しかし、無表情かつ感情のこもっていない挨拶をする。
「え〜っと、俺は炒飯と餃子で。」
「俺も、同じのを。但し、炒飯は大盛りで。」
「俺は、担々麺。後、春巻きも。」
「俺は回鍋肉に白飯、それから卵スープ。」
「……拉麺四丁。」
「「「「何でぇ!?」」」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「全然、駄目なのだ。」
「お前が言うな。」
「しかし、子犬一匹の為にあれだけの食料は要らんだろう?」
「確かに、あの量は…」
「一匹じゃない。」
「え?」
呂布は指笛を吹いた。すると、洞穴の中から数十匹の犬が出てきた。
「これは、確かに…」
「あれ位じゃないとな。」
「友達…たくさん。みんな…怪我してたり…捨てられたり…可哀想で放っとけなかった。」
「そうだったのか…」
〈あっ!月!〉
すると、上の方から声がした。声のした方を見てみると、そこには緑色の髪の眼鏡をかけた女の子が馬に乗っており、側には護衛らしき人がいた。
「あら、詠ちゃん♪」
「あら、詠ちゃん♪じゃない!僕がどれだけ心配したか…」
「ごめんなさい…」
「全く…ん?」
「あ、この人達は危ない所を助けていただいたの。」
「って危ない目にあってたの!?」
「あの〜お取り込み中、申し訳ないが、お主は一体?」
愛紗は気まずそうに聞き出した。
「我が名は賈駆、字は文和。こちらにおられる太守の董卓様にお仕えしている者だ。」
「「「「「ええええ!?」」」」」
「“この子が…董卓!?”」
一刀はまたまた驚いた。【董卓】三国志の世界では残虐非道の限りを尽くしたと言われる悪人で、その悪人がこんな可憐な少女だと言うことに一刀は驚きを隠せずにいた。
「所で、化け物の件は?」
「もう解決しちゃった♪」
「そ、そう……」
一刀達と庄屋はトントン改め、董卓の屋敷の謁見の間にいた。
「みなさん、お待たせしました。」
謁見の間に正装に着替えた董卓が入室した。その姿は、可憐な彼女をもっと輝かせていた。そして、庄屋に今回の出来事の事を全て話した。
「成程、そういう事でしたか。」
「確かに、呂布さんのしたことは良くないことです。ですが、それは傷つき、捨てられた犬達を救うため。決して、悪心から出たわけではないのです。門の前の岩もどけて、これから出来る限りの償いはするつもりです。そうですね?呂布さん。」
呂布はコクリと頷いた。
「いや、分かりました。すでに本人から謝ってもらってる事ですし、岩に関してはこちらの北郷様に助けて頂きました。村人には、私の方から話をしてみましょう。」
「そうして頂けると助かります。」
すると、董卓は賈駆の方へ体を向けた。
「所で詠ちゃん。役所では化け物が出て困っているという訴えを取り合わなかったとか。」
「えと…その…」
「董卓様!その事はもう済んだ事ですので…」
「いいえ、よくありません。どんな些細なものであれ、民の訴えを疎かにしないのが政の基本なのですから。」
董卓の言葉に一刀達は感心していた。
「…かしこまりました。今後そのようなことがないよう、全ての役人に厳しく申し付けます。」
「いいでしょう。それから…」
董卓は気まずそうに犬達の方を向いた。
「あの子達、私の所で飼ってあげる訳にはいかないかしら?」
「って、あの犬全部を!?」
「ねぇ、詠ちゃん。最近、街の治安が悪くて警備に兵士の手が回らなくなっているでしょ?だから、あの子達をしつけて、街の警備の手助けをしてもらうの。どう?いい考えでしょ?」
「そりゃあ、ちゃんとしつければ、泥棒避けになるかもしれませんが…」
「それなら大丈夫。呂布さん、犬達の躾、お願い出来るかしら?」
「…《コクッ》」
「待って月、僕はまだ飼っていいとは」
「詠ちゃん…お願い…」
董卓は捨てられた子犬の様に目をうるうるしだし、呂布と犬達も懇願するように目で訴えた。賈駆は大きいため息を吐いた。
「うぅ〜…分かった。飼うよ〜…。」
「詠ちゃん大好き♪」
「も、もう!今回だけだからね?」
すると、急に呂布が抱きついて頬をすりついてきた。
「ってちょっと何だ!?」
「きっと、お礼の気持ちを表しているのだ♪」
「だ、だったら口で言え〜!なつくな〜!」
こうして、呂布は董卓の元へ行き、一刀達はまた旅を続けるのであった。
どうですかね?戦闘シーンが結構多かったので、大変でした。上手く表現出来たらいいなと思います。
この調子で、最後まで頑張っていこうと思うので、応援よろしくお願いいたします。感想なども、出来たらお願いします。
次回もご覧になって下さい。それでは!




