図書委員の君
ひと夏の恋、とかよく聞くけど。
そんなんじゃなかった。
もっともっと燃え上がって、もっともっとあつくて、
きっと。
もっともっと、苦しかった。
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蝉の声が煩い。
耳に粘りつくような蒸し暑さに思わずアイスを買って、目的地に向かって足を進める。
八月。
今年の夏は例年以上に暑いとか言われているわけでもない。
毎年きっと、このくらい暑いんだろうなぁ。
だけど、僕は毎年のように「今年が一番暑い」といって、アイスを買って、
毎年のように「煩い」と蝉に文句を言って、
そう言って過ごしてきたのだと思う。
「こんにちはー」
たどり着いた終点のドアをガラッと勢いよく開けると、冷気。
エアコンが効いているからなのか、ありがたい。
「こんにちは。毎日毎日よく暑い中来ますよねぇ」
「そちらこそ」
受付の椅子に座る猫毛の髪がひょこんと揺れる。
それを見つけると、自然と笑顔になっている自分に気づく。
「いつもお疲れ様です、瑞希さん」
声をかけると僕の大好きな髪の毛がまた一つ、ひょこんとお辞儀した。