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ねくら  作者: 名無しの
其の① 狂実少年と現実少女
9/43

パンチラプチキャバ女子(目の周りはパンダ)



 「…………」


 意識が有る。

 少しだけ考えて、目を開ける。

 目の前の光景は、いつも道理だった。


 覚めてしまった。 

 もう一生目覚めないと思っていたのに。

 何時もこれだ。

 物事は思い通りに行かない。

 全く嫌になる。

 

 残念だけど。

 仕方がないな。

  

 「息は……してるのか」


 ……どうやら、僕は………まだ、性懲りも無く、小指程の価値のすら無い、いや、便所の落書き程の価値すらない人生を、生きている様だ。

 もう、頭は痛くない。

 時計を確認する。

 どうやら30分程気絶していたようだ。 

 ……………。

 なんかスースーすると思ったら……なんで、僕は、パンツ一丁なんだ?

 ………まぁ、いいか。

 今回は失禁もしてないし、目立った自虐行為の跡も見当たらない。

 髪の毛も……いつもよりは、引っこ抜いていない。 

 最悪な出来事の後にしては、悪くない状態だ。

 しかし、まさかあの頭痛が、今日、来るとは。

 薬はちゃんと飲んでいたはずなのに……全く、ついてないな。

 最近、発症する間隔が短くなってきている様な気がする。

 今回はなんとかなったけど、次にきた時にまた耐えられるだろうか……。

 一体、僕はあと何回この痛みに耐えればいいのだろう。

 人間の体は痛みに耐えられる様に出来てるなんて適当な事を言ったヤツが居るとしら、僕はそいつの顔を原型が無くなるまで殴ってやりたい。

 そんな事を言うヤツは本当の痛みを知らないヤツだ。

 人間は理解を超えた痛みに耐えられやしない。

 人は痛みで死ぬ。

 痛みで、死ぬんだ。

 僕も早く楽に…………。

「………………………」

やめよう。

 これ以上考えるとただででさえ低い血圧がもっと低くなってしまう。

 とりあえず………。

 そうだ、保健室へ行こう。

あの絶望的な痛みはもう感じないが、もう授業に戻る気が1ミクロンもしない。

 そうだそれがいい。

 そう思い、ベンチから起き上がろうとした時、

 教室のドアが鈍い音を上げ、真横にスライドした。

 ……タイミング、悪いな。

 少しは時と場所を考えて行動してほしいものだ。

 僕は慌てて、頭蓋を引っ込めた。

 机と椅子の僅かな隙間から侵入者の様子を伺う。

 青いチェックラインの入ったライトグレーのスカート、そして黒いニーソックを履いた細い脚………うむ、太もも白いな、合格だ。

 ……と、ふざけてる場合じゃなくて。

 女子? しかも一人? どこの制服だ? この学校のパンチラプチキャバ女子の制服じゃないぞ……。

 腕時計を確かめる。

 まだ、どの学年の生徒もこの蒸し暑い中クーラーも無い教室で忍者の如く授業を受けているはず、な時間帯だ。

 息を殺して女生徒の動向を伺う。

 どうやら、女生徒は真っすぐこちらに向かって来る様だ。

 なんでこっちに来る?

 まさか、僕がここに潜んでいるって事がばれた、とか?

 ……いや、それは無いはずだ。

 僕の擬態は完璧、というほどではないが、あの位置から僕を視認する事はまず不可能。

 そこんところは僕が実証済みだし。

 そんな事を考えて、僕があたふたしているのもおかまい無しに、女生徒はどんどん近づいてくる。

 これは、やばぁい。

 このままじゃ見つかる。

 見つかったら後の対処が面倒だ。

 なにより、話すのがやだ。ていうか消えてくれ頼むから三秒以内に消えてお願いします神様仏様大仏様御老公様サマンサタ――。

 「…………」

 全然消えない……。

 なんで?

 さて……どうしようか?

 ここはまた寝たフリでやり過ごすか。

 僕は腕で目を隠し、あからさまに寝たフリを実行する。

 足音は、もうすぐそこまで近づいてきている。

 と、足音は僕の目の前の長机の寸前で、突然、停止した。

 なんか、ちょっとドキドキしてきたな。

 ホラー映画だとこういう時、目を開けると目の前にお顔真っ白な化粧の濃い呪霊がいたりするので、腕をどかして目を見開きたいのを歯を食いしばり必死に我慢して寝たフリを続行。

 足音はしばらく停止し、数秒後、もと来た道をコツコツというわざとらしい音と共に引き返していった。

 そして、教室の扉の閉まる鈍い音が再び僕の耳に届く。

「………………………」

 どうやら、侵入者は自分の愚かさに気がついて去って行ったようだ。

 もしくはボクのむさ苦しい姿(半裸)(パンツは履いてる)(少しはみ出ている)(汗だく)を見て尻尾をまいて逃げ出したか。

 いずれにせよ、今回は何とか危機を脱した様だ。

 やっとの事で眼前を覆っていた腕を払い、目蓋を開くと、


 目の前に、


 青白い顔の少女……いや、幼女の顔が、あった。



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