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ねくら  作者: 名無しの
其の① 狂実少年と現実少女
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幸せについて考えてみたら……

 


 一時間目の終了するキーンコーンカーンコーンという間抜けなチャイムとほぼ同時にクラス中の男子が教室から消滅した。あと噂好きの女子もついでに何人か消滅していた。

 なんだろう? 皆で集団連れションかな? なんて事はないだろう、多分。

 おそらく、例の転校してきた美少女を一目拝もうと、さながら伊勢神宮に向かう古の熱心な信者の如く隣りのクラスを覗きに行ったのだろう。勿論、僕は弁慶の立ち往生の如く(座っているけど)席から一歩も動く気は無い。うるさい輩が消えて教室の人口密度が丁度良くなって良かったと思う。欲を言えば残った輩にも退出願いたい所だか、それならば僕が出て行った方がよっぽどてっとり早いのでそこは自分の胸の内に秘めておくことにした。


 二時間目の論理と三時間目の英語Wは堪え難きを耐えほんとに死ねる位忍び難きを忍びなんとか耐えた。が、しかし、ここまで耐えてきた自分に非常に申し訳ないが、四時間目の数学は果てしなく苦手な科目なので、自分の弱い心に負け、泣く泣く辞退させてもらう事にした。

 勿論、教師には心の中で「授業をサボりますよぉ」と言っておいた。

 僕、真面目だから。


 本当に死ねる位の長期の休み後の授業は、死にそうな位、そう、本当にほんんんんんんんんとぉぉぉぉぉーーーーーーに死ねる位退屈なモノである。あえて言おう。教室で真面目かどうか分からないけど、一応、授業を受けている生徒達は愚者……じゃなくて勇者の集まりであると。

 そんな訳で、僕はあまり利用される事のない日本史やら世界史の資料が無駄に置いてある教室の奥に、なぜか置いてあるベンチ(公園に置いてあるようなブルーのヤツ)の上に寝そべりながら、皆より一足早い昼休みを満喫していた。

 ここは、薄暗くて風の通りも悪い僕の数少ないリラックスポイントの一つだ。

 室内はホコリっぽく、ほのかにカビ臭い。それ故、生徒も教員も滅多な事がないとここを訪れる者はいない。たまに、授業時間を完全無視した男女(僕に理解できない存在)が突如として訪問してくる事はあるが、大体、黒板前の長机の席に座すので、僕の存在には気づきもしないで自分達の世界へどっぷりと漬かってゆく。まぁ、こちらから関わりを持とうとしなければ無害の部類に入るだろう。

 とにもかくにも、今現在僕の憩いを邪魔する奴は居ない。

 僕は静かに目を閉じた。

 そうして現代の食料問題について考える。

 今日の昼食はどうしようか?

 また、水道水で凌ぐかな。いや、それだと5時間目の持久走の時120パーセントの確率で貧血になってぶっ倒れる。当然、誰も救いの手は差し伸べないので、体育教師のむさい肩に担がれて保健室へ……うん、考えただけでも身の毛がよだつ。

 仕方ないが、コンビニで固形物でも買って凌ぐか。いや、だがしかし……最近まともな物を食べた記憶が無い……。当たり前の事だが僕に弁当なんて高等なものは作れないし作ってくれる心優しい彼女は、言うまでもない。

 そんな事をたわいもなく考え込んでいて、唐突に思った。

 幸せってなんですか? と。

 なんか、テレビ番組のタイトルみたいな質問になってしまったが。

 ……幸せって何だろうか?

 毎日三食規則正しくバランス良く食事をとる事だろうか? 

 そうなると僕は即幸せの対象外になる。

 それとも、何不自由なく日々の生活を送る事か?

 いや、素晴らしい生涯の伴侶を迎えて仲睦まじく一緒に年老いていく事だろうか?

 別に豊な国に生まれたから幸せってわけでもなさそうだし、貧しい国に生まれたらそれはそれで世間一般的な幸せを掴む可能性は限りなく低いものとなるだろう。

 ………少なくとも、僕は今まで生きてきて、幸せを実感した事は無い。

 断言出来る。

 それ位幸せを感じた事が無い事に自信がある。

 いや、それはないだろうと思いたいが。

 でも、僕には幸せが何なのか本当に分からない。

 まぁ日々の暮らしで幸せを実感している人の方がこの世界では圧倒的に少ないだろうけれど。

 ほんのささいな事で幸せを感じる事が出来る、と本には嘘か誠かわからないけど書いてあったし、そうなると僕にはほんのささいな幸せも巡って来ないのか、とマイナスな方面に僕の思考はバランスを失い沈没寸前の某客船の如く傾いてしまう。

 幸せとは何かと考えれば考える程に訳が分からなくなってくる。

 あ~御免なさい……誰に謝ってるんだ僕?とにかく高校生の分際で幸せについて考えようとして御免なさい分相応でしたすいませんすいませんすいませんすいませんなんなんで僕があやまらなきゃあいけないんだどうして僕が?なんでかな?いつもどうして僕が?僕が下らない人間だから?好きで人間やってるわけじゃないんだけど?もういいんだ疲れたんだもう許してくれ本当にあーーーもうだめだ死んでしまいたい死にたい死にたい死にたい?っていうか君そんなに死にたい死にたいってホントに死ぬ気あるのかね?ええそうですとも僕は所詮死ぬ気なんてないですよぉーーだって死んだって虚しいし痛いし怖いしああーーでも死にてーー嗚呼――青春したいなーー本気じゃないけどあー僕が分からないあーーーああああああああああああああああああああああああああ死ぬってなだ?なんなんだあーーーー分からないあああああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ、ここら辺で止めとこ。

 …………だめだ。

 思考が掻き回されてめちゃくちゃになる。

 いつもこれだよ。このまま行ったらまた授業中(戻る気はないが)に発狂しかねない……。

 結局、幸せがなんなのかなんて僕には分からない。

 そもそも僕には分かる訳の無い事だったんだ。

 ……止めよう、こんなくだらない事を考えているとろくな事が―――

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