うぉっほぉぉっいーたぁーのしぃーなぁー(棒読)
「……お前、ここに越してきたばっかりだし、学校の奴らはあんまりここ、来ないし」
隠れているのか?
「君は、良くここに来るの?」
「……たまに、来る」
何処に隠れているんだ?
周囲を挙動不審に見回してみるが、彼らを見つける事が出来ない。
「………ねぇ、さっきから黒い物体がちらちらと私の視界に入ってくるんだけど、まさか………あれって、幽霊?」
少女が僅かに声音を下げ、僕の肩を叩いた。
「どこ?」
「ほら、あそこ」
少女がすっかりと錆び付いて、触れると自分の手が鉄臭くなってしまいそうなドラム缶を指差す。
「何も見えないけど」
「ありゃ? ……いなくなった」
「………」
僕は無言でドラム缶に向かって歩を進める。
すると、ドラム缶の影から(過去にここで働いていた人の所持品であろう)ヘルメットが、そのふちを地面にずりずりと引きずりながら、僕らの方へとひどく緩慢な速度で接近してきた。
それを見て、僕は歩みを止めた。
「……なにあれ、ヘルメットがなんで? まさか、これが幽霊?」
少女の声は、意外にというか、冷静だった。
「ここにいたのか」
「みゃー」という間の抜けた鳴き声。
ヘルメットの中からは何とも拍子抜けな声が聞こえてきた。
しゃがみ込みヘルメットを持ち上げると、中には鼻先から尻尾まで全身真っ黒な子猫が三人いた。
なんだ、ちゃんと居るじゃないか………。