これは、いい壷だ
「………いつから居た?」
振り向くとそこには、ジト目で僕をしんみりと睨みつけている、少女が居た。
全然ビックリしていないけど……いささか、心臓に悪い奴だな。
「最初からデス」
臑を蹴られた、が折れる程のダメージではない。
「全然……気づかなかったな……」
君は何か? 幽霊族の親戚か? 墓場から生まれたのか?
「ちょっと君ねぇ、それはあまりにも酷すぎじゃありませんか? わたくし、一応女の子なんですけれど。もっと、こう、でりかしーってものをさ、持とうよ君。モテないよ、そんなリアクションじゃ、さ」
「で、でりかしー……?」
喰えんの? 食えません。食えるかも。食べたくないけど。
「もういい、私が間違ってました! 君に、そんな人間的な機能が備わってないって事に気がつかなかった私が馬鹿でした!」
「………」
この少女はなかなか鋭い事をおっしゃる。
「はい、おしまい。この話は終~了。でさ、この後、君ってさ、どうせ暇人でしょ? だったらさ、どっか遊びに行かない?」
「……唐突だな……でも、まぁ、人の居ない所なら、いいか」
どうせ今夜も野宿だし。
「相変わらず人嫌いだなー、て、私も一応人間なんですけど……。うーん、人の居ない所、遊び場……ねぇ、この二つ、どう考えても繋がらないんですけど?」
少女がわざとらしく拳を作り額に当てる。
その動作は少女の小さな体躯とは対照的に、わざとらしさ全快の大げさなもの。
全く、似合ってない。
「じゃあ、今日は大人しく――」
「じゃあさ、君の行きたい所行こうよ。私、どうせ暇だし。なんなら、また家に遊びにくる? 今日はママが来てるけど」
人の話を聞けよ、と心の中で言っておくか。
「………」
少女の家に再び行くのも、まぁ悪くは無いが(居心地的に)、だがしかし、少女の親とミィーツするのは途方も無く嫌な事。
となると……そうなるな。
しょうがない、久々にあそこへ行くか……。
「ねぇ、どうする?」
僕の中のパワースポットランキングで密かに上位に食い込んできている。
僕の中での人気スポット。
マイナスイオンも垂れ流し。
この上ない癒し効果をもたらしてくれる事間違い無し。
あそこは、いい場所だ(僕的主観)。