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ねくら  作者: 名無しの
其の② 消極少年と自殺少女
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せいかつ


 夜だけど、家には帰らない。


 最近は駅前のネットカフェを利用している。


 薄板一枚の個室では隣のイビキはだだ漏れなので結構うるさいが、そんな事は青猫もビックリの万能アイテム耳栓をすれば事足りる事なので、問題は無い。黒革のリクライニングチェアーに体育座りで座し、ぼんやりとパソコンのモニターを眺めていて、ふと時計を確認したら、既に深夜零時を回っていた。眠気は全くない。目を瞑れども反対に頭は冴えるばかりで埒があかない。そんな事を繰り返していて、なんだか寝るのも面倒になってきたので、漫画を読みふけってみたら、なんと6タイトルも制覇してしまった。


 夜明け前、一度家に帰る。


 家の中は薄暗くて、当然の様に物音の一つも聞こえない。


 僕は音を立てない様に階段を上がり、自室の扉を開る。


 鞄の中の教科書を入れ替え、汗をたらふく吸い込んだワイシャツを脱ぎ捨てる。


 そして階段をそっと降り、居間に行き、上半身裸のままソファーに体育座り。


 そのまま、目を瞑り、耳を澄ませる。


 鳥の鳴き声すら聞こえない、不気味な程の静寂。


 ここの連中は居るのか居ないのか分からない程、気配が無い。


 それは今が明け方だからでは無い。


 それは一年中三百六十五日の事だ。


 そのくせたまに鉢合わせすると十中八九殴られるか刺されるかごく稀に撃たれるかで、ろくな目に遭わない。


 ここの連中は皆人付き合いが嫌いらしい。


 皆、人間に興味を持てない。


 例えどこぞの誰かの死体がこの家の中にさも平然と転がっていたとしても、ここの連中の目には目隅のゴミ程度にしか映らないのであろう。


 だからこの家で僕が突然死んでも、ここの連中には気づかれもしない。


 もし、万が一気がついたとしても、おそらく第三者が発見するまで放置されると思う。

 

 いや、そもそもこの家を第三者が訪ねて来る事すら皆無だと思うけれど。


 僕は家の鍵が掛かっているのを見た事がない。


 確か、家の鍵はあの人しか持っていないはずだ。


 鍵はもう一つあったけど、それはあいつが所持しているから、その役割は恐らく一生発揮出来ないだろう。


 泥棒は多分来ない。


 鍵はいつも開けっ放しで何柄年中泥棒熱烈歓迎中だけど、僕が泥棒だったらまず来ない。


 泥棒だって盗みに入る家くらい選ぶから。





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