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ソリオンのハガネ  作者: 伊那 遊
第二章・魔物狩り
57/75

 55 混乱を加速させるモノ



 勢いが少しばかり強過ぎて、伊織は着地した時にふらついてしまった。

 建物から建物へ。鋼と凛が抜けた後も、七人はペースを維持して街を移動している。

 跳ぶ瞬間《身体強化》を強めて足の筋力を強化し、着地の際にも一応少し強化。やっているのはそれだけだ。それでなんとか先導してくれるマルケウスの護衛官について行けているものの、それは形だけのものだと伊織自身理解していた。

 さすが年を重ねた熟練の護衛というべきなのだろう、ターレイはみるからに《身体強化》を使いこなしていた。ただ筋力を上げて跳躍の距離を伸ばしている伊織とは見た目同じ事をしているようでも全く違う。ただ強化するのと、強化した身体能力を制御してみせるのは難易度が段違いだ。伊織にターレイほどの余裕は全くない。

 見たところマルは伊織よりも随分手慣れている感じで、省吾は伊織よりもう少し下手な程度。ただこの三人は結局のところ、《身体強化》の技術においてそれほど差は無いように伊織は感じている。もちろんこちら出身のマルには結構負けているけど、追いつけないほどだとは思わない。

 しかし護衛官のターレイと比べた時、伊織は自分の強化の下手さに情けなくなってくる。

「……大丈夫ですか? 少し、進む速度を落としましょう」

「じい、僕なら問題ないぞ!」

 率先して答えたマルと伊織も同意見だ。ターレイの目を見てその必要は無いと頷く。このくらいで無理だと言っていたら、それこそ日向とクーには一生追いつけないだろう。

 ターレイに強化の技術が負けていても諦めはつくというかむしろ当然なのだけど、受け入れがたいのは日向とクーの技量である。魔術的に素人の伊織が判断する根拠は直感くらいしかないのだけれど、見た感じ、鋼を始めとする『死の谷四人組』は貴族の護衛官よりも更に格上だ。今も日向は雪奈を抱えたまま平然と併走を続けている。人一人抱えた状態で尚、こちらに合わせてくれているみたいだった。

 それが結構、悔しい。日向もクーも、鋼達四人組は今の伊織と比べるのもおこがましい果てしない高みにいる。いくらこれまでの環境の違いがあったとはいえ、同年代にここまで大差をつけられているのは非常に不本意だ。

「長谷川君もこのペースで問題無い?」

「……おわっと、んーまあ、大丈夫やで。結構余裕無いけど喋る余裕もないほどではないし」

 先程の伊織と同じように着地の際ふらつきながらも、省吾もそう答える。

「てゆーか有坂ちゃんがついて来れてる事に結構びっくりしてるんやけど。わいはこれでも、前こっちの世界に来た時テンション上がって結構《身体強化》は鍛えてたつもりやったんよね」

「まあね。朝練の成果ってやつよ。それにまあ、ついてくくらいなら雑な強化でも思いっきり跳べば問題ないしね」

「それよなあ。魔力の操作さえ慣れたら強化ってなんとなくでも成功するから、わいも最初はすごい簡単な魔術なんやと思ってたんよ。術式がどうとか言うより、力加減がとにかく難しいんよな」

「魔術とか関係なく体を上手く動かすのって元から難しいし、奥が深いもの。私は剣道の経験あるからまだ得意な方なはずなんだけど、それでも全然上手くいかない。強化の具合で身体能力も変動する中で、常に上手く体を使いこなすなんて難易度高すぎよ」

 それでも、だからこそ修行しがいがあるのだし、この一ヶ月の間でちょっとずつコツを掴んで上達してきてはいる。魔術実技の教師クオンテラによると伊織は《身体強化》の適性が高いそうで、他の日本人と比べても覚えが早い方だ。それでも愚痴を零したい気分になるのは、このペースで上達しても鋼達に追いつけるのがいつになるか分からないからだ。

「お二人ともお上手ですよ。ほとんどを魔術の無い世界で生きてきたとは思えないくらいです」

「もう、お世辞はいいですよターレイさん。同じ日本人なのに日向はこの何倍も上手だし……」

「いえ、彼女達やカミヤさんとは比べない方がよろしいかと……。見たところ、ほとんどのこちらの人間どころか、魔術師の平均よりも強化の技能は上ですから。アリサカさんもハセガワさんも、一般的な視点で見れば十分です。今でそれなら、すぐにもっと上達しますよ」

 そこで殿を務めていたクーが、近づいていた〈紅孔雀〉を風の魔術で片付けてこちらの隣へとやって来る。

「そうだぞ! 一月でそれなら、かなりすごいと私も思う」

「そう、なの? クーさんも強化を覚えて一ヶ月くらいだとこんな感じだった?」

「ん? ……んん、えっと」

 先程まで邪気のない笑顔で励ましてくれていたクーが、訊き返した途端気まずそうに視線を逸らす。

「ちょ、クーさん、そこで口ごもるなら中途半端な慰めは要らなかったわよ!? 余計ダメージでかいじゃない!」

「すまない。……いや違うぞ!? 確かに今のイオリよりは上手かったのだが、比べる事に意味は無いんだ。私の場合ズルをしていたから」

「ズル?」

「私やヒナやルウは、直接コウから強化を教えられているんだ」

「……それ、私も同じでしょ。私も神谷君に強化教えてもらってるし」

直接(・・)じゃない」

「……?」

 その時、クーの意味深な言葉について問いただす間もなく地上からどよめきの声が上がった。一行は路上に視線を移す。

〈紅孔雀〉の襲撃の真っ最中だ。現在多くの人々が、伊織達と同じように西方向を目指して駆け足で移動している。何らかの異常が起きている場所は上から見れば一目瞭然だった。逃げ惑う人々の波が共通して避けていくポイントがあり、それが移動している。どうやら人が走っていて、周囲が自然とそれを避けているようだった。

「怪我人だ!」

 マルが叫び、我先にと路上へ飛び降りて行く。ターレイも仕方ないという表情を浮かべて後に続き、残りのメンバー達もそれを追いかける。

「な、なんだよあんたら!」

 マルの言う怪我人は二十代くらいのセイラン人男性だった。進路を阻まれ立ち止まった彼は右手で左腕を押さえつけていて、それでも止めきれず零れ落ちた液体が地面を濡らしている。鮮烈な赤い液体だ。実際にこの目にすると、背筋をひやりとさせる迫力のようなものが血の色にはあるように思う。

 彼の顔色は悪い。出血の量も結構なものだ。周囲の人々が思わず道を空けたのにも納得がいく。

「ひどい怪我です! 避難より先に、応急処置をしておくべきです!」

 当然のようにマルは進言し、有無を言わせず処置に取り掛かった。こういう事にも慣れているのか、ターレイが持ち歩いていたらしい包帯などをてきぱきと準備して、マルと二人がかりで止血していく。伊織達が手伝うまでもなく、というか手伝うと足手まといになりそうなくらい迅速な治療だった。

 実家の剣術道場で真剣を使っていたわけもなし、切り傷の処置なんか実は伊織は経験した事が無いし、その心得もあるとは言いがたい。貴族のお坊ちゃんなのにそういう技能があるとはマルはすごい奴である。同学年におかしなレベルの鋼達がいるから目立たないだけで、このマルという少年だってそういえばかなりの優等生なのだ。

「あ、ありがとう……」

 処置を受けた男性の方も何がなんだか分からない内に終わってしまったようで、呆然とした顔をしていた。それが突然はっとした表情になり後方を振り返る。

「……まるで何かから逃げてきたような慌て方ですね。もしやその怪我は〈紅孔雀〉でないものに負わされたのでしょうか?」

 ターレイが訊くと、何もいない後方を確認してようやく一息ついた男性が大きく頷いた。

「そ、そうなんだ! 突然亜人に襲われて……!」

「亜人に?」

「ああ、いきなり頭のイカれた亜人が現れたんだ! 見境なく暴れて、他にも何人も斬られてた。……斬られた奴、あの怪我じゃ助からなかっただろうな」

 恐怖に体を震わせながら、血が足りなかったのだろう、男が地べたに座り込む。その報告を聞いて、当然マルが黙っていられるはずがない。

「何!? 何たる事だ! まだ救助が間に合うかもしれん! その場所は!?」

「いけません坊ちゃま!! 私達が今すべきは……!」

 ターレイの制止もこうなっては意味を成さない。しつこく問い質し、マルは男性から襲われた場所を聞き出した。「この方を放っておくわけにもいかないでしょう! まずは皆で安全な所に……!」と食い下がるターレイの提案もむなしく、マルは決然と皆を見渡した。

「僕とじいで、そこへ向かってみようと思う! 皆はこの方と一緒に、安全そうな西へ避難を続けてくれ。じい、これで問題無いだろう? カガミとクーレルさんがいれば皆は安全だし、多少は戦える僕にじいがいれば、暴漢など恐るるに足らず、だ」

「坊ちゃま……」

 ああ、ターレイはとても渋い顔をしている。彼の言動を傍から見ていれば、名も知らぬ一般市民よりマルの命を優先させたいのだとよく分かるのだけど、そんな思惑など全く構わずに突っ走るのがマルという少年である。護衛として気苦労は多いだろう。かわいそうに。

「しかしこれ以上人数を分散させるのは……」

「……私が行こうか?」

 ぽそりと横から口を出したのは、意外な事に日向だった。魔物の群れが襲来してから、彼女は必要最低限以外はずっと無表情と無言を貫いていたのだ。

「対人戦なら、私かなって思って。そんなに遠くないみたいだし、私が一人でさっと行って、暴れてる亜人を殺してすぐに帰ってくれば、また合流出来る、はず」

「こ、殺……っ!?」

 ぞわっとなった。

 怖気が全身を駆け巡る。『殺す』という単語が、さも当たり前のように出てくる彼女に対して似たような感想を皆も抱いたのだろう。それぞれ絶句している。

 ――伊織はなんとなく、分かってはいたのだ。

 他の皆はどこまで日向にそういう認識を持っていたのか知らないけれど、この切り替わった(・・・・・・)日向は殺し殺されが当たり前の世界にいたと、そう考えた方がむしろしっくりくるように思う。それほどこの無表情の少女が放つ雰囲気は尋常のものではない。先月の闇傭兵ギルドの一件にしても、ラグルという男に対する仕打ちは死なせてしまう心配などしているようには全く見えなかった。そういう事が出来る――出来てしまう少女だという事は、伊織だってなんとなく分かっていたつもりだった。

 しかしこう、実際に目の当たりにすると。別に殺気を振り撒いているわけでもないのに、戦慄させられるような凄味がある。それが微妙に悔しかったりもするのは、伊織自身の人格の問題というか、まあそれはひとまず置いておこう。

「……いえ、坊ちゃまの望みを、危険もあるのにあなただけに押し付けていいはずはありません。怪我の処置も出来ますし、私と坊ちゃまだけで向かいましょう。ですから残りの皆を任せてもよろしいでしょうか?」

「もう全員一緒でいいんじゃないか? たいした寄り道でもないだろう」

 クーがうんざりしたように言って、怪我人の男性に目線を合わせる。

「怪我はもう大丈夫だろう。他の市民に混じって行けばある程度安全だろうし、あとは一人で行けるな?」

「は、ははは、はいぃっ! 大丈夫です!」

 超絶美人ににこやかに言われれば、一も二もなく男なら頷きたくなるのだろう。迷いもせずに男性はそう返答して、ぺこぺこと頭を下げて離れて行った。血が足りていないだろうにあんなに急激に動いて大丈夫だろうか? まあこの後貧血に襲われても、美人に目が眩んで強がって行動した彼の責任という事で。

「よし、ならば早く向かおう! 怪我人が僕達の助けを待っている!」

 マルが率先して走り出し、ついていくターレイはため息をついていた。それに苦笑して、伊織達も後に続くのだった。



 ◆


「ん……?」

 満月亭に向かって先程とは比べ物にならない速度で移動していた鋼は、疑問の声と同時に足を止めた。

 凛にも手振りで止まるよう指示し、二人で離れた建物の上を注視する。

 五人ばかりの恐らくは冒険者の集団が、空を飛ぶ〈紅孔雀〉の群れに魔術で攻撃を仕掛けていた。三人が《魔弾》を撃ち敵の数を減らそうとしていて、立っているだけの後の二人は魔物に接近された時の護衛役のようだ。自主的に街のために戦ってくれている彼らに、地上を行く市民達は通り過ぎざまに応援の声をかけたりしていた。

 それだけであれば微笑ましく、また頼もしい光景で済むのだが、鋼が気になったのは彼らではない。屋根によじ登り、彼らに近づいていく一人の男がいたのだ。彼らの仲間にしては死角をついた妙にこそこそとした動きに見える。有体に言えば不審者だった。

 その不審者はフードがついたローブのような服を着ていた。先日の外出時のミオンのように、頭上の耳を隠すため亜人が着用している事が多いらしい格好であり、しかしフードは被らず後ろに流されたままだ。その頭上には堂々と、亜人の証である黒い動物耳が鎮座していた。

「? なんだあんた」

 五人の内の一人が近づく亜人の男に気付き問いかける。耳の形から見て、犬か狼の亜人だろうか。黒髪の狼男は気付かれた途端に相手に向かって駆け出し、自らの背中に手をかける。そこには凶器が背負われていた。

 抜き放ったのは(とげ)がついた棍棒だ。

 自らの背中を傷つけないようローブの後ろに工夫がされているのが見て取れたが、そんな武器を常用しているのは異常に過ぎる。あの棘の突起は硬い物を叩く際どう考えても邪魔になる。魔物に使う武器ではない。明らかに対人用だ。

「アアアアアアアアア――ッ!!」

「なんだこいつ!?」

 獣じみた雄叫びを上げ、狼男は冒険者の一人に(おど)りかかった。護衛役の戦士系らしきその冒険者は持っていた小剣で咄嗟に迎撃を試みるも、あの棍棒相手には大剣でも持って来ないと分が悪い。棘の突起に絡め取られその手から弾かれてしまう。

 すかさず二撃目が襲い掛かり、無手となった冒険者は背後に飛びずさる事で回避した。互いに《身体強化》を使った上での高速のやり取りだ。〈紅孔雀〉に攻撃していた魔術師系冒険者達は目を丸くしてそれを見ている。

 狼男は相手を選ばなかった。避けた冒険者と距離が開いたと見るや、こだわらずに魔術師系の冒険者達にターゲットを変更する。最も近くにいた女冒険者に襲いかかり、庇おうと間に入ったもう一人の戦士系冒険者へと棘棍棒は振り下ろされた。

 急所だけは守ろうとガードした彼の腕が、ぐしゃりと抉られる。

「があああああぁぁぁぁ!!」

 棘に貫かれ、振り抜かれ、あまりの痛みに男は絶叫する。血が撒き散らされ他の冒険者達も悲鳴を上げた。その光景を路上から目にしていた一部の一般人達も騒ぎ立てる。

 鋼が狼男の背後へ降り立ったのはその直後だった。

「ア?」

 気配に振り向こうとする狼男の首を掴みその体を固定する。間を置かずにその腰へと鋼は膝を叩き込んだ。

「――ケフッ!」

 強化された肉体による一撃。さすがに同じく《身体強化》していた狼男にとっても痛烈な打撃になったようだ。骨にヒビくらいは入れたと思うが、当然こんな程度で終わりではない。悲鳴も漏らせずただ肺から空気が抜けたような呼気をもらす狼男を、首を掴んだその手で持ち上げる。

 骨を折るつもりの今の攻撃をこいつは思いのほか耐えた。強化が強力なのか獣人が丈夫なのか知らないが手加減の必要はない。真上を介して後ろへと狼男の体を回し、真後ろに放り出したところに全力の後ろ蹴りをくらわせた。

 バキボキと骨を砕く感触を足が感じ取る。

 ――咄嗟の事だろうが、今のをガードするのかよ。

 折ったのは奴の左腕だ。回避も防御も、思考も含め、鋼は相手に何もさせるつもりは無かった。腰へ打撃を与えてから間を置かずの攻撃だ。狼男にとっては天地も逆さまで、何がなんだか分からない内にモロにくらうだろうと思っていたのだが。さすがにダメージはでかいと思いたいが、腕で体を庇えるくらいには余力があるという事だ。予想以上に耐久力が高い。

 とはいえ狼男を蹴り飛ばした後方には凛が控えている。

「はっ」

 鋼が攻撃を仕掛けた相手に彼女も躊躇などしない。容赦なく《加護》で高められた拳が繰り出され、暴漢の胴へと突き刺さった。蹴りの勢いとの挟み撃ちで衝撃の逃げ場もなく、狼男は血反吐を吐き出しながらさすがにその場に沈んだ。

「……なんだこのとち狂った狼野郎は」

「魔物の騒ぎに便乗した、殺人鬼の類でしょうか?」

 突然の凶行だった。まさしく狂人と呼ぶべき狼男を見下ろしてそんな会話をしても、その思考や正体は掴めそうにはない。呆れた事にまだ息はあるようだが、瀕死の亜人はひとまず置いて鋼は冒険者達に向き直った。

「その怪我。早く治療した方がいい」

「あ、ああ。……助かった、本当に。ありがとう」

 負傷した戦士系冒険者の腕は中々エグい傷口になっていた。完治しても傷跡は残るだろう、深い怪我だ。ああなる前に止めてやりたかったが、さすがに少々空いていた距離を埋めるには時間が足りなかった。

 痛ましそうに、彼の仲間達は真っ赤に染まったその腕を眺めている。その顔が突如驚愕に彩られ、同時、鋼の脳裏にも警鐘が鳴り響いた。

 危機を感じ取った本能が半ば自動的に鋼を振り返らせる。

 満身創痍の狼男がゆっくりと起き上がろうとしていた。

「……おいおい」

 自信を持って断言出来る。例え強化を使おうとも、常人が立ち上がれる状態ではない。鋼達の手加減なしの攻撃を二発その体にもらっているのだ。例えば学園の生徒なら、全力で《身体強化》を施していても恐らく死は免れない、そのくらいの威力はあったはず。獣人は誰しも人間とはかけ離れた耐久力と生命力を備えているのだとすれば話は別だが、しかし、これは。

「こいつまさか、魔物憑き……?」

 冒険者達の誰かが言う。

「グルオアアアアアアアアアァァァ――ッ!!!」

 返答はもはや人の声には聞こえない猛獣の咆哮だった。

 先程まで、間違いなくそんな長さは無かった牙がその口から覗いている。ダメージはやはりあるらしく全身を震わせているが、まるで意に介さず足を踏み出した。

 負傷する前よりも俊敏な動きで、大口を開けた狼男が鋼へと飛び掛かった。



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