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ソリオンのハガネ  作者: 伊那 遊
第一章・新入生の問題児たち
17/75

 15 剣術実技の授業

 ガンサリットの後を追い、その酒場へ突入した時。

 シシドが目にしたのは倒れ伏す男達と、遠巻きに怯えたように見守る人相の悪い客達、そしてその中心にいる、先程見失った騎士学校の男子生徒だった。

「これは……、お前がやったのか?」

 問いかけるまでも無かった。状況が、この場の他の男達の表情が、ここで何があったかを雄弁に物語っていた。

 だというのにぬけぬけと、平然と、今来たところだとカミヤは言い放った。この状況に気後れも何も感じていない様子だった。隠す気すら見えない分かりきった嘘だと、シシドはこの時点で断定していた。

 この男子生徒の態度は『どれだけ嘘だと思えても納得しておいたほうが、この場を収めるのも容易いですよ』とこちらに訴えている。

 それをシシドは大人を侮る子供特有の増長だと受け取った。そのまま話に乗っかり、なあなあで済ます性格はしていない。

 だから殺気に近いものすらにじませて、下手な嘘はやめろとシシドはカミヤを睨みつける。

 全く小揺るぎもしなかった。

 カミヤは涼しい顔でそれを受け止めてみせ、睨まれている事実など無いかの如く笑みすら浮かべた。


 ――こいつは、底が知れない。


 十は離れた年下の相手に、そのような感想を抱いたのは初めてだった。

 同時にシシドの中で、今年度の新入生における問題児第二号が決まった瞬間でもあった。

 一号は言うまでもなく、先程まで追いかけていた貴族の少年だが。



 ◇


 あの後の事を、シシドはふと思い返す。


 椅子泥棒の子供を連れ、満月亭という店に戻り。その途中放置された店の椅子も見つけて回収し。

 盗まれた椅子を返し、店員の許可を得て子供はお咎めなしで帰らせた。そしてカミヤと、ガンサリットとその護衛官と、シシドの四人で昼食を取った。

 その、後の事だ。



「待てカミヤ。休み時間はまだ残っている。少し話さんか?」

 学園に帰って来て、ガンサリットとその護衛官と別れたところだった。同じく去って行こうとするカミヤをシシドは呼び止めた。

「……なんか話す事でもありましたっけ?」

「そう警戒するな。お前がしでかした事を教えてもらいたいのは確かだが、何も学長にチクろうというわけじゃない」

「こっちでも『チクる』って表現あるのか、いや、あるんですか……」

「平民が好んで使うような崩した言い回しだがな。しかしお前、いかにも不本意そうに敬語を使うな」

 さほど昼休みの時間は残っていなかったので、場所を移すまでも無いだろうと前庭の片隅にカミヤを誘導する。逃げられるかと思いもしたが、案外素直にシシドに従った。

「敬語はどうも……苦手っす。思った事そのまま言わずに、一旦変換する手間が面倒というか」

「そんなもん慣れだ、慣れ。礼儀作法の類は身に付けておいて損は無いからな、お前のような奴は特に。将来礼儀に煩い貴族相手に、余計な敵を作りたくはないだろう?」

「そりゃまあ」

 だとすれば解せない。シシドは核心に踏み込んだ。

「今回の事もそうだ。もっと穏便に解決できなかったのか?」

 椅子泥棒の子供と、その子供が逃げ込んだ先である酒場。シシドにもなんとなくだが、全体図は見えていた。満月亭に嫌がらせしていた男達が根城にしている場所をカミヤはどうにかして突き止め、単身乗り込んだのだ。

 多対一の争いの跡から考えても、強化の類は得意なのだろう。喧嘩になっても負けない自信があったから、この少年は無謀ともいえる行動に出た。その自信はいつか、カミヤ自身に手痛いしっぺ返しをくらわすだろう。

「お前はこんな事がある度に無茶をしでかすつもりか? 街のゴロツキどもに目を付けられても構わんと?」

「んなわけありませんよ。今回はたまたま、色々なタイミングが重なってあんな事になっただけっす。それに一応言い訳しとくと正当防衛ですよ。いきなり向こうから手を出して来ました。取れる選択肢は多くなかった」

 今更否定もせず、カミヤは飄々とした態度で男達を叩きのめした事を認めた。

「お前は……。必要なく敵を作りたくはないが、作ってしまったらそれはそれでしょうがない、とでも考えてそうだな」

「多分、その通りです。俺はですね、教官。喧嘩しても絶対負けない! なんて自信はそれほど持っちゃいないですが、どんなやばい状況になっても生き残るって事に関しては、実はそれなりに自信があるんです。だからまあ、何かやっちまってもなんとかなるかって気楽に考える傾向はあるかもしれません」

 それなりなんて表現しているが、相当の自信がその気楽な表情には見て取れた。少し変わった方向の自信である。

 このカミヤという男子生徒の持つ特殊な過去をシシドは思い出した。

 学園の生徒の個人情報をシシドは閲覧できる立場にあり、教育者として一応目を通すくらいの事はしている。無論生徒全員分のそれを覚えているわけもないが、迷い子としてソリオンの生活を経験している六人の日本人に関しての情報は、個人的な興味も手伝ってそこそこ脳裏に刻まれていた。


 カミヤ、カガミ、ムライ。この三人は同じ場所に落ちた三人組だ。

 他の迷い子三人と比べても尚、異色の過去を持つ。魔物も住まうどこかの山に落ち、ただの一度も人里に降りて来ずに日本へ帰還しているのだ。

 彼らがどこでどう過ごしたかなど、日本で確認できる手段があるとは思えない。資料に載っているのは彼らが日本へ帰った後、向こうで語った内容そのままのはずだ。その山の地名すら分かっていない話を、シシドは全く信頼できないものと見なしていた。

 現実味が無いのだ。いくらなんでも。

 魔物のいる山に落ちるのは確率としてあり得る事だ。そこで偶然《逆召喚》を扱える高位魔術師に出会えるのもまあ、運が良かったと片付けても良い。しかしシシドが問題視しているのはカミヤ達がこちらで過ごした期間だった。

 一年。

 一年である。それだけの期間を、魔物が出没する地域で街にも寄り付かず生き延びるなど。それも平和な国で過ごした、ただの少年少女が、だ。

 あまりにも現実味が薄い想定だ。

 こちらの世界でどう過ごしたかを明かしたくなくて、カミヤ達は嘘をついた。シシドでなくともそう結論するのは当然だろう。


 生き残る事には自信がある。そう言ってのけた少年の顔を、改めてシシドは凝視する。

 あり得ないと思っていたが。もしそう(・・)なら、確かに自信を抱くに足る根拠になりうる。

「……仮に、その自信に見合うだけの能力を、お前が持っていたにしても、だ。ああいった事はもうするんじゃない。あんな目立ち方をして、どこに敵を作るか分からんぞ」

「そうっすね。やむなくああしたとはいえ、次からはもっと慎重に動きます」

 素直にカミヤは頷いた。その様子に、優等生の笑顔に、シシドは強く苛立った。

「本音で語れ! 適当に取り澄ましていればやり過ごせるとでも思っているのか? 大人を甘く見るんじゃない」

「その大人によっては本音を出したほうが怒る事もあるんですよ。相手を怒らせないで会話するのは難しいっす」

「はぐらかすな。……お前は分かっているのか? そりゃ敵を作っても自分なら大丈夫だと思うのは、お前の勝手だ。ゴロツキに目を付けられて、喧嘩を売られたところで本当にお前は自分でなんとか出来るのかもしれん」

 だがこの少年は、自分以外の事を果たして考えているのか。シシドはそれを危惧していた。

「お前に叩きのめされた男達は、次はお前の周囲に手を出すかもしれんのだぞ? それを本当に、分かっているのか?」

「もちろん分かってますよ。だからこそ、です」

 にっと笑って軽く言う。そのカミヤの瞳から、軽薄な色が剥がれ落ちるのをシシドは感じた。

「元々、はっきりとあの店を助けたかったわけじゃありません。迷惑な男達がいて、店に嫌がらせをしている。マルケウスじゃあるまいし、それだけで助けたいなんて思うガラじゃないですよ、俺は。最初は……、美味いメシが気に入ったのもあって、気まぐれみたいなもんでした。ダチを巻き込みそうなら、すぐ手を引くつもりだった」

 確かにあの店の食事は美味かった。貴族のマルケウスでさえ感嘆していたほどだ。

「そう思ってたのに、いきなり街中で魔術を撃たれましたからね。あれはさすがに予想外で。気が回らずに、ルウ――村井に、襲撃者を捕まえさせてしまったんです。あの役目は俺がやるべきだったのに」

「……男の仲間に恨まれるからか?」

「ええ。俺の気まぐれから始まったトラブルに、他の奴を巻き込むわけにはいかないでしょ?」

「お前は……」

 ここまで言われれば、カミヤの意図はシシドにも分かってくる。

「次はムライが狙われるかもしれん。その可能性を潰すために、先手を打ってあの酒場で暴れたと?」

「まあ、周りを巻き込む可能性が出てきたからには積極的に関わってとっとと解決しよう、なんて思ってたくらいですが。ああなったのはほとんど成り行きですよ。でも大丈夫です。あの男達には、俺の身内の方が俺より更に強いと思い込ませました。派手に暴れたしなるべく偉そうに振舞ったし、次に狙われるとしても多分俺になりますよ」

 絶句する。平然と語るカミヤの顔には、今度こそ嘘は無かった。

「……恨みを自分にだけ集めるために、あんな事をしたと? お前は馬鹿なのか?」

「馬鹿とはまたひどい。本音を語れって言ったのはそっちじゃないっすか。……俺は」

 そこで言葉を切り、カミヤは僅かな苦笑を浮かべた。本音を口にするのは気恥ずかしいと思っているような、年相応の少年の顔だった。

「どうも、わがままみたいで。特に各務と村井。あいつらは俺にとってすげー大事な仲間なんです。仲間に手を出されるのも、仲間が危険かもしれない状況に置かれるのも、俺は我慢できない。危害を加える奴がいるなら許しがたい。殺しても構わないとさえ思います。……だからこうしました」

 物騒な言葉を差し挟み、その瞬間だけは苛烈さを滲ませて、カミヤは語った。そこに込められた感情こそがこの少年の本質だとシシドは直感する。

「……怒ってます?」

「何がだ。怒ってなど無いが、正直呆れている」

「はは。教官はいい人ですね。まだ子供が何を調子に乗った事を、なんて怒られるかもなとか思ってました」

「お前はもっと大人を信用しろ。何もかも一人で引き受ける必要なぞ無いんだ。少しは他人に頼る事を覚えろ」

「そうっすね。俺はきっと、それが苦手なんです」

 そこにふざけている気配もなく、ため息まじりにカミヤは呟く。

 全く。なんて面倒くさくて、ふてぶてしくて、分かりづらい生徒だろうか。

 受け持つ生徒の中でも、この少年には特に手を焼かされる羽目になるだろうと、この時シシドは予感した。




 数日前の回想から意識を戻したシシドは、校庭の様子に視線を移す。

 整列させた生徒達はそれぞれ竹刀を手に、素振りの真っ最中だ。現在行われているのは『剣術実技』の授業である。

 この授業は必修である『騎士教練』とは違い、実戦を想定したような本格的な指導を前面に押し出している。魔術師志望だけが本来選ぶのが魔術実技の授業なら、こちらは騎士志望、警備隊志望の者だけが選ぶような授業といっていい。もっとも興味本位で選んだと思われる、相当不慣れな動きの日本人生徒を結構な数見かけるが。

 聞いたところによると魔術関連のほうは日本人全員が選択しているらしく、ほぼ全員完全な素人という笑えない事態となっているようだ。そちらと比べればこちらはまだマシと言える。剣術実技を選んだ日本人は全体の六、七割程度で、運動がかなり苦手な者は選ぶのを控えているようだったから。

「素振り、やめ!」

 シシドの号令と共に素振りをやめた生徒達の空気が、一気に弛緩する。

「誰が休憩にすると言った! 私語を慎め!」

 だらけたように隣の者と雑談を始める生徒に一喝。学園の現在の上級生に対しても去年思った事だが、日本人は相当気合の入った真面目な奴とやる気の感じられないふざけ半分の者に極端に二分される。

 シシドもいまだによく分からない人種、それが日本人だ。教育を受けているから、自分は馬鹿な方だと思っているような生徒でもかなりの教養は備えているし、怠け者に見える生徒が案外深い知識を持っていたりするのが油断ならない。

 クオンテラに聞いた話では、どういった性格の者であろうと関係なく日本人が持っているものとして、豊かな想像力が挙げられるらしい。魔術においてそれは大切なものらしく、こちらの世界の人間よりも日本人の方が魔術師に向いている者が多いそうだ。魔力に触れて育ってきたわけでは無いから、魔力に対する感覚が拙いという特徴もあるらしいが、理論などの呑み込みが総じてセイラン人よりも早いと彼女は言っていた。

 その話はともかく。

 新入生達にとって、この授業は既に二回目だ。ちなみにシシドは知らないが、例えば日本の自衛隊などの訓練と比べればこちらは相当に見劣りのする、厳しいなんて言えばあちらの軍隊に失礼な授業内容である。シシドも体力作りのための走りこみなどやらせたいと思っているのだが、そういった地味にきつい訓練は貴族受けが良くないのだ。

 なので少し早いが、今回の授業から生徒同士の打ち合い稽古に移る。最初の授業で素振りと、最低限の騎士剣術の型、攻撃と受け流しの二種類は覚えさせていた。

「次、二人一組となって、打ち合いをしてもらう」

 攻撃の型と受け流しの型をそれぞれ分担し、一人が竹刀を打ち込みもう一人が受け流す。それを交互に繰り返す稽古だ。そのように説明し、型の練習であるので決して全力で打ち合うなと、注意事項もしつこく伝えた。

「技術申告書で剣の心得があると書いた者はこっちへ来い」

 剣に限らず、武器の扱いを習った事があればそれを書いて提出する書類である。剣・槍・弓などの心得でなくとも、素手での格闘術の経験でも構わない。学園に知らせておけばそれを考慮してもらえる上、内申書にも記載されたりする。

 シシドの呼び声に応え、幾人もの貴族と、ほんの一握りのセイラン人平民と日本人が前へとやって来る。事前の書類でシシドも知っていたが、入学以前に剣術を嗜んでいる生徒は圧倒的に貴族が多い。我が子を騎士にという貴族の家は珍しく無いのだ。

 反面セイラン人の平民も日本人も、剣の心得があると書類に書いた生徒は少ない。平民は二人、日本人では五人で、その通りの人数がシシドの前に出てきていた。

 剣を習っている者は習っている同士で打ち合い稽古をさせるためにこうして少人数を分けたものの、シシドには不満があった。

「……おいカミヤ。お前もこっちだ」

「いきなり名指しかよ!」

 残る生徒達の中からあがったその声の主を睨みつける。シシドが認定する新入生の問題児第二号は、視線の意味に気付き「……いきなり名指しですか」と言い直した。

「いや、意味が分かんないんですが。俺、書類に何も書いて無いっすよね?」

「書いてないからわざわざ別に呼んだんだ。お前、魔物との交戦経験があると言っていただろう。剣で魔物と戦った事は?」

「……そりゃまあ、剣があるのに手で殴りかかるほどアホでは無かったんで」

「ならお前もこっちだ。申告書には習った事のある魔術以外の戦闘技能と書かれていたと思うが、人から習わなくとも実戦経験があるなら話は別だ。他の生徒も、数回以上の剣による実戦経験がある者は申告書に記載が無くても前に来い」

 シシドの声かけに対しカミヤは無言のまま横を見て、二人の少女に一瞥(いちべつ)をくれた。それで意思疎通は成立するらしく、カミヤ・カガミ・ムライの三人組は揃ってこちらへとやって来る。

 他に前へ出てきた生徒は全くいなかった。こちらよりかなり平和であるらしい日本の生徒は言わずもがな、セイラン人平民だってこの年で実戦を経験しているような者なぞ普通はいない。

 三人組がこちらに来る際、一声かけていた男子生徒がシシドに対して挙手をした。確かハセガワ、という迷い子の日本人だ。

「こっちにいてた時に二回くらいやったら剣で戦った事あるんですけど、わいもそっちへ行ったほうがいいですか?」

「そうだな、来てくれ」

 貴族平民日本人合わせて、人数的にもそれで偶数になる。

 カミヤ達三人が加わったところにハセガワも合流し、日本人は九人になった。申告書で剣の心得があると書いた元いた五人の内、一人の女子生徒がカミヤ達に話しかける。

「結局いつものメンバーになったわね。この授業取ってない片平さんは抜いてるけど」

「片平以外、全員経験者とは暴力的な面子だな」

「ちょっと神谷君、その括りに私も入れられるの納得いかないんだけど! 私実戦経験なんて無いし、中学が剣道部だったってだけよ」

「わいもほとんど実戦経験なんてゆえやんレベルのもんやしなー。正直ほぼ素人やで」

 女子生徒は確かアリサカという生徒だ。彼女とハセガワは、カミヤ三人組と仲が良いらしい。

「私語を慎め。まずは経験者のお前達から打ち合い稽古をしてもらい、他の生徒達の見本になってもらう。……そうだな。ガンサリット、手伝ってくれ。そこから竹刀を取って、俺の前に立て」

「はっ、了解しました!」

 経験者メンバーの貴族の一人、マルケウス=ニル・ガンサリットが勢い良く返事をする。ガンサリット家は貴族の中でも騎士の名門だ。彼はシシドにとっての問題児第一号ではあるが、本人の気質は真面目なのでこういう時には頼りに出来る。

「見本の見本だ。ガンサリット、前回の授業でやった攻撃の型で打って来い。俺が受け流して、次は逆だ」

「了解しました」

 授業の助手が準備していた竹刀の束から一本抜き出し、ガンサリットはこちらを向いて掲げる。シシドも竹刀を持ち構える。

 別段、特筆すべき事も無い。ガンサリットが決められた軌道の攻撃の型で竹刀を振り下ろし、シシドは横に流すように弾く。その次は互いの型を入れ替え、同じようにする。そうして簡単に実演してみせてから、経験者の生徒達に振り返る。

「これを二人一組で行う。何か質問は?」

「教官」

 そこで手を挙げたのはガンサリットで、シシドは少し意表を突かれた。

「組む相手は自由に決めて構わないのですか」

「ああ。生徒同士適当に決めてくれて構わん。両者の技能に大きな差があれば、こちらから他の者との入れ替えを指示する」

「分かりました」

 ガンサリットは頷くが、恐らくは貴族・平民・日本人で分かれるだろうとシシドは予想していた。そうなると一人ずつ貴族と日本人が余る事になるので、一組はそういった組み合わせになるだろう。なるべくなら、そのペアの日本人は余計なトラブルを避けるためにも、礼儀正しい者をあてがいたいが。シシドとして思うところはそれくらいで、後の組み合わせはなんでもいい。

 貴族のグループから外れ、日本人達の元へガンサリットは歩み寄る。そして口を開いた。

「カミヤ。僕の相手を頼みたい」

 その発言は身分問わず、この場にいた者達を少しばかり驚かせた。



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