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01:多分、乙女ゲームだと思うんです


ここはコロニレス王立魔法学園。

正門の前で白い歯を輝かせ、金髪をなびかせた王子様が一人の少女に話しかけている。


「やあアンジェリカ、おはよう」

「おはようございます。チャールズ様、メルキオル様」


アンジェリカと呼ばれた少女は慌てたようにペコリとお辞儀をする。

柔らかそうなストロベリーブロンドの髪がふわりと揺れた。


子犬のようなその仕草に思わず笑みを作りながら、チャールズの後ろに控えたメルキオルも胸に手を当て挨拶を返す。


「おはようございます、アンジェリカ嬢」


王子チャールズと騎士メルキオル、二人の美男子の笑顔に女生徒たちの小さな歓声が上がった。


朝の正門は色めき立ち、三人を中心にちょっとした人集りができてしまっていた。



「皆様、何故このような所で立ち止まっていらっしゃるの?」



よく通るその声に人混みが自然と割れ、一人の美女が姿を現す。

冷たい色合いの金髪を見事な縦ロールにセットした彼女は、ほんの少し眉間に皺を寄せている。


「チャールズ殿下、おはようございます」


人集りの中心にいるチャールズを認めると、すっと表情を整え彼女はお手本のような美しいカーテシーで挨拶した。


「おはよう、エリザベータ」


チャールズも挨拶を返すが、その笑顔は先ほどアンジェリカに向けられたものより硬く、少なくとも愛しい婚約者に向ける顔ではない。

エリザベータの方も儀礼的な笑みを浮かべて、すっと顔を伏せる。


「皆様の通行の妨げになっていますわ。どうぞ続きは教室で」

「はは、怒られてしまったな。それじゃあまた、アンジェリカ」


そう笑いながら手を振ったチャールズはメルキオルを連れ校舎へ歩いていく。


姿勢を戻したエリザベータの顔に笑みはない。

その紅い目を一瞬アンジェリカに向け何も言わずに立ち去った。


周囲に集まった生徒達も遠巻きに見るだけで、誰もアンジェリカに声をかけない。




「ほら、皆さん授業に遅れますよ!」


生徒会に所属している眼鏡の男子生徒が声を上げた。

立ち止まっていた生徒達は急に慌ただしく歩き出す。

アンジェリカもハッとした様子で慌てて校舎へ駆けて行った。





―――その光景を離れた所で観察していた地味な女生徒が二人。



華やかな学びの園で景色に溶け込んでいる二人の少女がコソコソと話している。


「どう?思い出せた?」

「いいえ、全然。ケイトは?」

「私もサッパリだわ。どこにでもありそうな設定と舞台だもの」


よく似た顔をした二人は可愛らしいが、少しばかり“地味”であった。


きらびやかな他のご令嬢と同じ制服を着ているとその差は歴然で、すっかり背景となっている。



少し目尻のタレた少女が頬に手を当てて嘆く。


「絶対に乙女ゲームに転生したと思ったのに、何のゲームだか思い出せないなんて⋯⋯」


少しツリ目の少女もため息をつきながら言う。


「私だけじゃなくてマリィも一緒なんだもの。転生してるのは間違いないのよ」


「“ヒロイン”たちが集まる場面を見れば何か思い出せると思ったのだけれど。残念ね」




どこからどう見ても完全にモブな二人の少女は転生者であった。


次回は1/16(金)に掲載予定です

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