1-7 ネコ戦士、ツラーオを倒す
牛みたいなモンスターを倒した時、私は自分の力の強さに驚いていた。
ヒトだった頃の私なら、きっと同じ武器を持って同じように殴ったとしても、あのモンスターを一撃で倒せたりはしないだろう。
見た目はかわいい仔ネコっぽいけど、ネコ戦士というのは基本的な腕力とかが一般的なヒト族とは段違いなんじゃないかと思う。
それに動きも俊敏で、大きな棍棒みたいな武器を持っていても素早く動ける。
村の男の人たちが総出であのモンスターを倒しに行っても倒せないこともある…と村長が言っていた。
それを一人でさくっと倒せるぐらい、ネコ戦士というのは強いんだろう。
でも、これから挑むのは、私にとって初めての肉食のモンスターだ。
油断しないように慎重に行動しなくちゃ…
そんなことを考えながら、私は村の人と一緒に村の東門を出た。
そう言えば、この人と行動するのは三回目なのに、まだ名前を知らなかった。
「お兄さん、名前はなんていうにゃ?」
私が尋ねると、彼はちょっと驚いた顔をしてから笑って
「今さらだけど、カールだよ、モモちゃん」
と答えてくれた。
カールさんはくすんだ金のくせ毛に深い青の瞳、力仕事してるっぽい細マッチョのイケメン…若い女の子たちにモテそうだ。
「んじゃカールさんはここで待っててにゃ。私がモンスターを逃がしちゃったりして、危なくなったらすぐに村に逃げてにゃ」
とカールさんに言ってから、私は鼻に神経を集中し、空気中の匂いを嗅いだ。
爬虫類にはほぼ匂いはない…けど、それはヒトの鼻では感じられないからだろう。
ネコの鼻なら、爬虫類の匂いもわかるはず。
うちのモモが家の中にいたヤモリの子供を見つけた時も、多分匂いで気づいたと思う。
ちょっと生臭いような匂いに気づいて、私はその方向に四つ足で走った。
カールさんを待たせたところからしばらくなだらかな坂を登った丘っぽい所に、そのモンスターはいた。
カエルみたいに緑色とかかと思ってたけど、そいつはワニっぽい褐色のウロコをまとっていた。
ギルド長からの情報通り、二本足で立ってて、小さい前脚は体の前で曲げている。
ティラノサウルスが小さくなったようなやつだった。
背の高さは、二本足で立った私よりかなり高いけど、全体的にやや細いので、あの牛みたいなモンスターよりは軽そうだ。
私は鼻先で風の向きを確かめて、風下から一気に四つ足で走って距離を詰めてから武器を抜き、そのモンスター…ツラーオに襲い掛かった。
頭を攻撃するにはちょっとツラーオの背は高すぎたので、まずは足に斬りかかってみた。
「キイイッ!」
ツラーオは叫びながら転んだので、その頭を新しい武器…大き目のナイフで殴るように斬りつけた。
「キイィ…」
と小さく声を上げて、ツラーオは動かなくなった。
まだ生きてたら困ると思って、私は前脚でツラーオの頭をつんつんとつっついてみた。
よし、大丈夫そう。
細くて軽そうなモンスターだから、私ひとりで持ち上げられないか、試してみることにした。
ちょっと重かったけど、私はツラーオの体を頭の上に持ち上げて、よたよたと歩いた。
なだらかだけど長い坂をよたよたと下りていくと、カールさんが荷車を引いて走ってきた。
そして
「モモちゃん、お疲れ様!さあ、荷台にそれを置いて」
と言ってくれたので、私は荷台にツラーオの体をどすんと置いた。
「じゃあ村に戻ろう!」
カールさんが言うので、私は荷車を引くカールさんの後ろについて背後を警戒しながら、東門を通って村に戻った。
村の広場に荷車をとめると、村のみんなが集まってきた。
カールさんが荷車からツラーオを降ろそうとしたけど、重くて動かなかったらしくて、他の男の人と二人がかりでよっこらよっこらと地面におろした。
ん?男の人が二人がかりで???
「モモちゃん、これを頭の上に持ち上げて一人で荷車まで持ってきたんだよ!」
カールさんがそう言うと、みんながどよめいた。
「ネコ戦士ってのは、そんなに力が強いのか…?!」
そう言われて私も驚いた。
牛みたいなモンスターを倒した時から、ネコ戦士はヒトよりずっと強いとは思い始めてたけど…
ホントにすっごく、とんでもなく強いんだ…と、私は改めて驚いた。
ひと通り驚いた後、村の人たちは手早くツラーオの皮をはいで、肉を骨からそぎ取り始めた。
「お肉、食べられそうにゃ?」
と私が尋ねると、
「鳥の肉みたいだから食べられるんじゃねぇかな」
焼き肉屋台のおじさんがそう言って、ツラーオの肉を焼く準備を始めた。
塩焼きのツラーオは、焼き鳥の塩のやつみたいでおいしかった。
「うまい…!」
「おいしいねぇ」
村の人たちは、みんな喜んでツラーオの焼き鳥モドキを食べた。
今日はみんな、お酒は飲まないみたいだ。
この間の全員二日酔い祭りで懲りたんだろう。
すると鍛冶屋のおじさんが、ツラーオの皮を持って来て、私に言った。
「この皮…いいぜ。意外に頑丈だし、モモちゃんがモンスター倒しに行く時に持ってくバッグとか作れそうだぞ。試作してみていいか?」
ワニっぽい皮…つまりクロコダイルのバッグみたいなのになるんだ。
前世じゃ合皮のバッグしか持ってなかったから、私はクロコダイル調バッグにちょっと興味がわいてきた。
「お願いしますにゃ!」
そう言って、私は鍛冶屋さんにバッグ作りをお願いすることにした。
ツラーオの皮はバッグになるし、お肉はおいしい。
こんなに役に立つモンスターの討伐を断るなんて、もったいない。
私はギルド長が持ってきたツラーオ討伐の依頼を正式に受けることにした。
焼き鳥…しばらく食べてません。久しぶりに食べたいですw




