1-6 ネコ戦士、王都からの使者と会う
かわいくはないけど、とりあえず防御力は上がったらしい新しい防具に、かなり大き目のナイフみたいな新しい武器を身に着けた私は、村の中をうろついて果物や焼いた肉をもらって食べていた。
するとそこに、馬に乗った人がやってきた。
馬だ。
前世と同じ…だけどサラブレッドと道産子の中間ぐらいの筋肉のつき方で、もっと大きな馬だ。
「ネコ戦士殿はいずこに?」
短い金髪を撫でつけた頭に前世の米兵?みたいな帽子を斜めにかぶり、白いシャツに皮の鎧みたいなのを着た、兵士の偉い人っぽい三十代ぐらいの人が馬から降りてきてそう言った。
「私ですにゃ」
私が右前脚を上げて答えると、その人は頭を下げて
「おお…お初にお目にかかる。私は国王陛下より命ぜられ、ネコ戦士殿への依頼のために王都より参った傭兵ギルド長である」
と言った。
やっぱり兵士関連の人だった。
「私はモモですにゃ。よろしくお願いしますにゃ」
私が頭を下げると、ギルド長もまた頭を下げた。
なので私は気になってたことを聞いてみた。
「王都からここまで、どのぐらいの距離があるのにゃ?」
「およそ120キロほどかと」
良かった、距離とかの単位は前世と同じかもしれない。
もしくは言語と同じように、私に伝わるよう変換されてるのかも。
「それをどのぐらいの時間で来られたんですにゃ?」
また私が聞くと、
「二時間ほどあれば着く」
ギルド長はそう答えた。
ということは、この馬は時速60キロで走れるんだ…
前世で好きだった漫画の調査兵団の馬みたいだな…と私は思った。
私はもうひとつ気になったことを聞くことにした。
「傭兵ギルドってことは、正規の騎士団とかはないのにゃ?」
ギルド長は
「うむ。我が国は近隣の国とのいさかいなどもなく平和なので、正規の騎士団などはない。だが最近になってモンスターが増え、その動きが活発になってきたため、王命により傭兵ギルドを立ち上げ、私兵をつのっているのだ」
と言った。
なので、さらにもうひとつ気になっていたことを尋ねた。
「なんで私が召喚されたのにゃ?異世界から召喚できるってことは、この世界には魔法みたいなのがあるのにゃ?」
その問いへのギルド長の答えは予想外だった。
「この世界には現在、魔法らしきものはない。だが、この世界に危機が訪れる時、我が国の王家にいにしえより伝わる異世界からの戦士の召喚方法が使えるようになり…こたび国王陛下がネコ戦士殿を召喚することに成功したのだ」
魔法もないのに異世界から誰か召喚できるって、どんなチートだよ…
私は呆れたが、まあ呼ばれちゃったものは仕方ない。
「それで?どんな依頼を持ってきたんですにゃ?」
と私が聞いてみると、ギルド長は
「ベリー村近辺で増えてきたという報告の上がった、ツラーオというモンスターを倒してほしいのだ」
と言った。
そして
「ツラーオは、爬虫類系のモンスターだが、二本足で立って歩いたり走ったりする肉食のモンスターで、森の中でキノコや山菜などを採集する人間に襲い掛かる可能性があるのだ。そのモンスターを出来得る限り倒してほしい。報酬は三千ジロだ」
と、ギルド長は詳しい情報を提示してきた。
なので私は
「そのモンスターのお肉は食べられるのにゃ?」
と聞いてみた。
ギルド長の目が点になった。
「いや…ツラーオの肉が食べられるかどうかは…試した者はまだいないらしいので…」
ギルド長はしどろもどろにそう言った。
「じゃあまずは一頭倒してみるにゃ。それでそのお肉が食べられそうなら、いっぱい倒してくるにゃ」
私がそう言うと、
「う…うむ。では、とりあえず一頭頼もう」
ギルド長は疑問符だらけって感じの顔で言った。
爬虫類っぽくて肉食なら、もしかしたらカエルとかワニみたいな肉かもしれない。
前世で私は、カエルとワニを食べてみたいと思っていたので、これはいい機会かもしれないと思った。
私は村長の方を向いて
「また誰かに荷車引いてついてきてもらってもいいにゃ?」
とお願いした。
村長は驚いた顔をしながらも
「おお…ではまた一人村人を行かせよう」
と言ってくれた。
「荷車引いてくれる人は、危ないかもしれないから、東門を出たとこで待っててにゃ。私が一頭倒したら呼ぶから、それまで待機しててにゃ」
私の言葉に、二日連続でついてきてくれた若い男の人がうなずいて、荷車の用意をしてくれた。
ツラーオのお肉、おいしいといいなぁ…
私はそう思いながら、村人の先に立って、村の東門に向かって走った。
昨夜焼き肉を食べすぎて胃もたれしてます。いつもなら夜十時ごろにはおやつを食べるのに、昨夜は食べられませんでしたw←




