7-2 ネコ戦士、武器を改造する
私はケンさんについてって、ケンさんの鍛冶屋の工房に入った。
「モモちゃん、前にモモイロヒヒの装備欲しがってただろ?」
ケンさんはおもむろにそう言った。
「そうだけどにゃ…もういいって言ったにゃよ?」
と私が言うと、
「防具じゃねぇよ。武器の方にヒントがあったんだよ」
ケンさんは言った。
そして
「モモイロヒヒの素材で作る武器は、ネコ戦士用装備のカタログによれば、刃に細かいギザギザをつけるようになってんだ。モモイロヒヒのオスの牙みてぇに鋭いギザギザをな」
と、ケンさんはカタログを指さしながら言った。
「そのギザギザがどうしたのにゃ?」
私が尋ねると、ケンさんは
「俺はこの村で使うカマなんかも作ってるんだが、カマってのはきれいな刃に仕上げると、滑って切りにくいこともあるんだ。だから刃に細かいギザギザをつけるんだよ」
と、カマを見せながら説明してくれた。
私は、はっとした。
「つまり、ギザギザがあったら、アクアドラゴンの硬いウロコに弾き返されにくくなるってことにゃ?」
私がそう聞くと、
「そうだ。刃物ってのはキレイに鋭く研ぎ澄ませばいいってわけじゃねぇんだ。目的によっては、こんな風に細かいギザギザをつけた方がいい場合もあるんだ」
とケンさんはうなずきながら言った。
そして
「どうする?オオツラーオの武器だけにギザギザつけるか?それともファイアドラゴンとサンダードラゴンの合成武器にもギザギザつけるか?オオツラーオの武器だけなら俺だけでも加工できるが、合成武器の方は硬すぎるから、モモちゃんにも手伝ってもらわなきゃなんねぇが」
ケンさんはそう言って、私の目をまっすぐに見た。
私は迷ったけど、この先アクアドラゴンだけじゃなくフリーザードラゴンとも戦うことになるかもしれないことを考えると、二本ともギザギザにしといた方がいいかもしれない…と思った。
「二本ともギザギザつけるにゃ!私も手伝うにゃ!」
私がそう答えると、ケンさんは
「よっしゃ。決まりだな。じゃあオオツラーオの武器の方にとっかかるから、ちっと待ってな」
と、にやっと笑った。
ケンさん、頼もしい…!!
そしてケンさんの工房から、カンカンカンカンという音が響き始めた。
「ケンさん何やってるの?」
エマが尋ねてきたので
「オオツラーオの武器を改造してくれてるのにゃ。合成武器の方の改造は、後で私も手伝うにゃ」
と私は答えた。
アンナがカールさんの方を向いて
「ほら、ケンさんの方がよっぽどモモちゃんの役に立ってるわよ」
と笑った。
三人娘にあんなにモテてたカールさんが、今はサンドバッグだ…
カールさんは落ち込んでたけど
「俺にも何か…何かできることはないか?!」
と私に言ってきた。
「今は特にないにゃ」
と私が言うと、カールさんはがくーっと頭を下げた。
なんだかかわいそうになったので、
「カールさんはモールやツラーオを倒す時にいつもついてきてくれるから、それで充分にゃよ」
と言っておいた。
カールさんは顔を上げて
「…そうだな!俺にもモモちゃんのためにできることはあるよな…!」
と、少し元気を取り戻したようだった。
世話の焼けるお兄ちゃんだ。
ケンさんがオオツラーオの武器の改造を始めてしばらくして、カンカンという、剣を打つ音がやんだ。
「モモちゃん、合成武器の改造するぞ!」
大声を上げて私を呼んだケンさんに
「ケンさん、休まなくて大丈夫にゃ?!」
と私は言ったけど、ケンさんは
「大丈夫だ!いつアクアドラゴン討伐依頼が来るかもわかんねぇだろ?急ぐぞ!!」
と言った。
なので私は
「ありがとにゃ!手伝うから、何やったらいいか言ってにゃ!」
と返して、ケンさんの工房に走った。
すると後ろから
「…ケンさん、すっごく頼りになるわね…」
「年は離れてるけど、ケンさん、いいわね…」
「そうね、働き者だし…」
という三人娘の声が聞こえてきた。
…あんたら、もうカールさんは好きじゃないのかよ…
ケンさんの工房に入って、先にケンさんが改造したオオツラーオの武器を見て私は驚いた。
ギザギザっていうからもっと粗いのかと思ったら、ミリ単位の細かいギザギザだ。
私の武器は私の身長に合わせて、70センチから80センチぐらいだけど、柄の長さを除いても刃渡りは60センチ以上はある。
それをミリ単位でギザギザ加工するのは大変だっただろう…
私がそんなことを考えていると、
「合成武器はモモちゃんの力がねぇと、俺の力だけじゃ加工しきれねぇ。俺が刃に当てたノミをしっかり打ち込んでくれ」
とケンさんは言った。
私ははっきり言ってそんなに器用な方じゃない。
だからミリ単位の作業なんて自信なかったけど、ケンさんの指示通りにやれば、きっと大丈夫だ。
「わかったにゃ!!ケンさん、お願いしますにゃ!」
私がそう言うと、ケンさんは、にっと笑って
「おう、二人で頑張ろうぜ」
と言った。
そして私は、ケンさんがノミのはしっこをちびっと当てた箇所を削れるように、ノミの柄をトンカチで叩いた。
「そうだ!その調子で次もいくぜ!」
ケンさんはそう言いながら、次々とノミのはしっこを武器の刃にちびっと当てては私にトンカチで叩かせた。
何十回、何百回とその作業を繰り返した後、ケンさんは
「…よし、これで完成だ…!!」
と、右手の甲で額の汗を拭きながら、ふーっと息を吐いた。
「できたのにゃ?!やったのにゃ?!」
私が言うと、ケンさんは
「おお!これで大丈夫だ!!だから…アクアドラゴンの討伐、頼む。俺にできるのはここまでだ…」
と言って、工房の奥の自宅にふらふらと入って行った。
ケンさん、かっこよすぎる…!!
と思ってたら、三人娘もそう思ったらしく、ケンさんを見送ってた。
…カールさんの次はケンさんかよ…
ネコのフードが廃盤になったので、同じメーカーの後発品を買って来たら、めっちゃ食いつきました。食べてくれて良かった…とほっとするぐらい、うちのネコは偏食です…




