6-7 ネコ戦士、モンスター討伐の必要性を問う
「アクアドラゴンを討伐しなければならないのか…とは…?」
しばらく押し黙った後、ケラーさんは私に聞いてきた。
なので私は、この世界に来てから戦ってきたモンスターたちのことを思い出しながら、私の考えを伝えることにした。
「モールはその肉を食べるために、数を減らし過ぎないように倒してるにゃ。ツラーオやオオツラーオは、人間に襲い掛かることもあるけど、肉は食べられるから、やっぱり数を減らし過ぎないように倒すにゃ」
私が説明し始めると、みんなは黙ってうなずきながら聞いてくれた。
「モモイロヒヒは畑の果物を食べちゃうけど、私の言葉なら通じるから、取り引きしたり追い払ったりできたのにゃ。でもファイアドラゴンは、ほっといたら村が滅ぼされるかもだったから討伐したにゃ」
みんなはまだ黙って…でも、うなずきながら聞いている。
「サンダードラゴンは、角から雷を出して人を攻撃したりする危険なモンスターだから、討伐したにゃ…でも、アクアドラゴンは、どうにゃ?」
私がみんなの顔を見回してそう言うと、
「アクアドラゴンは、大昔に津波を起こし、東の村を滅ぼした…」
とケラーさんが言った。
なので私はケラーさんに言った。
「でもその後は防壁作ったにゃろ?この間みんなで頑張って、北東と南東の防壁も足したから、もう…少なくともこの国は、津波が来ても大丈夫にゃろ?」
みんなは、あっ…という顔をした。
「ツラーオたちは肉食で、モモイロヒヒは果物食べるにゃ。アクアドラゴンは魚食べるんじゃないかにゃ?だったらモモイロヒヒみたいに、食べ物ないからって人里に来たりはしないんじゃないのにゃ?にゃんで時々海岸に来るかはわからないけどにゃ」
私の言葉に、ケラーさんは目を見開いた。
そして
「…アクアドラゴンは、もはや我が国にとっては脅威ではない…と…?」
ケラーさんは私に向かってそう言った。
私はうなずいて
「そうじゃないかって私は思うにゃ」
と返した。
ケラーさんがうんうんとうなりだしたので、私はもうひとつ気になったことを尋ねてみた。
「この世界には、この国の他にも国はあるのにゃ?」
私の問いに、ケラーさんは
「…いや…大昔に隣国とその隣の国が滅ぼされたので、この世界にはもう、この国しか存在しないのだ」
と答えた。
ケラーさんの答えに私はちょっとほっとした。
それならもう…この国がアクアドラゴンに害されることはないんだ、と思ったからだ。
だけどケラーさんは
「確かに防壁の増設によって王都やベリー村、それに王都西のロナ村が津波の被害に遭うことはなくなったと言えるだろう。だが、王都北のバツ村は、北の海に近いのだ。そして、そちらには防壁は作られていない」
そう言った。
バツ村…たしかモモイロヒヒのオスが死んでたってとこだ。
「バツ村は海からどのぐらい離れてるにゃ?」
私がそう聞くと、
「10キロは離れていないはずである」
ケラーさんはそう言って、この世界の地図を机の上に広げた。
私は、この世界全体の地図を初めて見た。
王都がルーン王国のほぼ真ん中あたりにあって、南にベリー村、西にロナ村…そして、東の海岸近くにあったティド村は…津波によって滅び、今はない…と書き足してあった。
そしてルーン王国の西の国境線の隣と、その隣のあたりには、大きくバツ印がつけてあった。
大昔に、山みたいなドラゴンによって滅ぼされた国だ。
その二つの国も海に面してたけど、もうどちらも滅んでるので、アクアドラゴンが津波を起こしても問題はないということだった。
私は、ふーっとため息をついた。
甘かった。
防壁の不足分を足せば、もう大丈夫だと思ってた。
でも、国の北のバツ村には、まだ津波の被害が出る可能性があるんだ。
「…わかったにゃ」
私が机の上の地図に両前脚をついたままそう言うと、ケラーさんたちは私の言葉を待っているかのように黙っていた。
「アクアドラゴン、討伐するにゃ」
地図から目を上げて、私はみんなを見回した。
ずっと黙ってたギルド長は
「うむ。まずは矢じりの改良から取り掛かろう」
と言った。
なので私は
「あと、次またアクアドラゴンが現れたら、その時は今回みたいな勝手な行動はしないでにゃ」
と、傭兵たちをぐるりと見回してから言った。
すると例の傭兵が
「…はい…すみません…」
と、私に向かって謝ってきた。
もう謝らなくていいのにな…
私は心の中でため息をついた。
色々確認した結果、やっぱりアクアドラゴンは討伐一択になった。
矢じりの改良を鍛冶師に頼んでもらうので、今回役立たずだった傭兵たちも次はそれなりの戦力になるかもしれない。
…まあ…でも、あんまり過度に期待するのはやめとこう。
それより、もうだいぶ時間は押してて、夜になってしまった。
今夜はどこに泊まったらいいのかなーと思っていると、
「ネコ戦士殿。今宵は城下街の宿に泊まっていかれるがよかろう」
とギルド長が言ってくれた。
「ありがとにゃ!リーナさんたちが来るときに泊まる宿を見繕っておきたいにゃ!」
私がそう言うと、ギルド長はうなずいて
「うむ。そう言うだろうと思ったので、それなりの宿を手配しておいた」
と言った。
そして
「…ネコ戦士殿が王都に泊まるとなれば、国王陛下は王宮に宿泊するようにと仰ると思うのだが…」
とギルド長は渋い顔で言った。
「…それは遠慮したいにゃ…」
ネコ戦士に敬意払いまくりの王様を思い出して、私はうんざりした。
ギルド長に案内されて行った城下街の宿屋には立派な門や前庭があって、建物とかも貴族のお屋敷みたいだった。
大きなドアを開けて中に入ると
「ようこそ、ネコ戦士様!」
と、宿屋の主人とその家族とか、なんかいろんな人が拍手で出迎えてくれた。
私は色々な料理を並べた食堂に招き入れられて、たくさんの人からもてはやされまくった。
…王宮に泊めてもらった方が良かったかも…と、私は思った。
最近、家に戻ってもうちのネコが出迎えてくれません。寒いから動きたくないみたいですね…ちょっと淋しい…




