6-2 ネコ戦士、アクアドラゴンの元に向かう
翌朝、まだ早いうちに私は目覚めた。
いつも通りベッドの上で伸びをして、前脚で顔を洗って装備を身に着け、武器二本を背負って家を出ると、ギルド長はもう村に来ていて、馬に水を飲ませていた。
「ギルド長さん、早いにゃ。何時に王都を出発したのにゃ?」
と私が尋ねると、ギルド長は
「四時には王都を出発した」
と言った。
…四時ってまだほぼ夜じゃん…
私は呆れたけど、そのぐらいアクアドラゴン討伐は大至急の依頼なんだろう。
お腹が空いてたけど、ジンさんやバーサさんを起こして食べ物をもらうのは申し訳ない。
…と思ってたら、もうジンさんは肉を焼いてて、バーサさんも店開きをしてた。
他のみんなももう起きてきて集まっていた。
「みんな早いにゃ~」
と私が言うと、
「あたりまえだろ!」
「モモちゃんがまた危ない目に遭うのにっ」
「寝てなんかいられないわよ!!」
みんなは口々にそう言った。
「まあまずは腹ごしらえだな!」
そう言ってジンさんが焼き肉の串を差し出してくれた。
「そうだよ、リンゴ食べて…ベリーの実も持って行くんだよ」
バーサさんも、いつも通りリンゴとベリーを渡してくれた。
私は、みんなの気持ちが嬉しくて、胸があったかくなるのを感じた。
「…ありがとにゃ!朝ごはん食べたら行ってくるにゃ!」
村のみんなの顔を見回してから、私は焼肉とリンゴを食べて、ベリーの実をポーチに入れた。
「では、ネコ戦士殿、参ろう」
ギルド長がそう言うので、私は馬に飛び乗った。
村から王都に向かう道まで、みんなは私たちを見送ってくれた。
「じゃあ、行ってきますにゃ!!」
私が右前脚を高く上げて振ると、
「気をつけてな!」
「かなわないと思ったら逃げるんだよ!!」
「私たち、祈るしかできないけど、祈ってるから!!」
みんな口々にそう言いながら手を振ってくれた。
…なんかこんな風に見送られたら、マジで戦争に行くみたいだわ…
でも、戦争に行くのと大差ないかもしれない。
アクアドラゴンについては研究所長のケラーさんからそれなりに情報は得てるけど、実際にこの目で見て戦ってみたいことには何もわからない。
昨日オオツラーオ相手に戦った時に改めて気づいた自分のジャンプ力のすごさも、もしかしたらアクアドラゴンには役に立たないかもしれないし…
私が考え込んでいると、
「ネコ戦士殿、不安か?」
とギルド長が言った。
なので私は正直に
「不安に決まってるにゃよ。ケラーさんが見せてくれた資料によれば、サンダードラゴンより大きいらしいしにゃ…」
と返した。
「うむ…だが今回は、ネコ戦士殿ひとりに戦わせはしない」
ギルド長の言葉に私は驚いた。
「な…なんにゃ?!どういうことにゃ?!」
びっくりして私が問い返すと、ギルド長は
「ネコ戦士殿が危なくなった時にはすぐに助けに入れるよう、傭兵たちを防壁の上に待機させる手はずになっているのだ」
と答えた。
…ツラーオ一頭倒せない傭兵たちを待機させてどーすんだよ…
「いやいやギルド長さん、傭兵たちが何人いたって役に立たないと思うにゃよ…」
と私が呆れながら言うと、
「近接攻撃などでは傭兵たちは何の役にも立たぬが、ネコ戦士殿がサンダードラゴンを討伐した後、傭兵たちには弓矢の練習をさせてきたのだ。遠隔攻撃ができるならば、傭兵たちも少しは援護できるのではないだろうか」
ギルド長はそう言った。
なるほど、弓矢で遠くから攻撃してくれれば、少しは役に立つかもしれない。
「傭兵たちの弓矢の腕前はどのぐらいにゃ?精度は高いにゃ?」
と聞いてみると、ギルド長は
「動かぬ的なら百発百中に近い」
と答えた。
「…動く的ならどうにゃ?」
私の問いに対するギルド長の答えは
「…それは未知数である…」
だった。
頼りにならない…
私がはーっとため息をつくと、
「だ、だが、資料によればアクアドラゴンは陸に上がると動きがかなり鈍いらしいのだ。ならば動かぬ的に近いのではなかろうか」
ギルド長は慌てたように言った。
…限りなく不安だ…
そうこうしているうちに、防壁が見えてきた。
「ネコ戦士殿!!」
「我々が防壁の上から弓矢で援護いたします!」
「どうぞご存分に戦ってください!」
防壁の上から傭兵たちが声をかけてきた。
なので私は
「傭兵さんたちが危なくなっても、私は守ってあげられないかもしれないにゃよ。わかってるにゃ?」
と、冷たいかもしれないけど、思ったままを伝えた。
傭兵たちは私の言葉に固まってしまったけど、ホントのことだ。
でも
「恐れるな!!ネコ戦士殿はずっとひとりで戦ってきたのだ!!お前たちも国を守る傭兵なら、恐れるな!!」
というギルド長の声に、傭兵たちは
「…おおっ!!」
と応えた。
…ホントに大丈夫かいな…
今日は小春日和なので、ネコ日和です。←




