6-1 ネコ戦士、アクアドラゴン対策を思いつく
「明朝にはギルド長が迎えに来られるそうじゃ…」
そう言いながら、村長はまだ青い顔をしていた。
「わかったにゃ」
私はそう短く答えて、シチューの残りを食べ続けた。
「モモちゃん…」
隣からカールさんの心配そうな声がした。
お皿のシチューを食べ終わり、広場の洗い桶にお皿とスプーンを入れて
「ごちそうさまにゃ!」
と私はバーサさんに声をかけた。
「…あ、ああ…もういいのかい?おかわりは?」
バーサさんも心配そうな顔をしてたけど、
「ありがとにゃ!もうお腹一杯にゃ!」
私は笑って返した。
村のみんなはシチューを食べる手を止めて、心配そうな顔で私を見つめてた。
私だってホントは不安でいっぱいだ。
ホントはまだ、ツラーオを倒すんだって、怖いし、辛い。
でも、不安に思う気持ちを、みんなには見せたくない。
だって私は、ネコ戦士なんだから。
「カールさん、ちょっと運動したいから狩りにつきあってにゃ」
私がカールさんに向かってそう言うと、カールさんは
「お?!おお!!わかった!!すぐ準備する!!」
と言って、残ったシチューをがつがつと食べて洗い桶にお皿とスプーンを入れて、荷車を取ってくるために駆け出した。
まだ日は暮れてないけど、日暮れも近い中、私たちは東門を出てツラーオのいそうなところに向かった。
「そろそろオオツラーオが育ってそうにゃ。オオツラーオでアクアドラゴン倒す練習するのにゃ」
私がそう言うと、カールさんはまだ心配そうな顔だったけど
「そうか…うん、なんか練習とかやっといた方がいいかもな…」
と、そう言ってくれた。
東門を出た所で、いつものように
「カールさんはここで待っててにゃ」
と言ったら、カールさんは
「…いや、俺も近くまで行くよ」
と言った。
「危ないにゃよ?オオツラーオが襲ってくるかもしれないにゃ!ツラーオよりずっと危ないにゃよ?!」
慌ててそう言う私に
「モモちゃんばっかり危ない目に遭わすのは嫌だ。何の役にも立たなくても、俺も近くにいたいんだ」
と、カールさんは引き下がらなかった。
「…じゃあ、ちょっと離れたとこで見ててにゃ」
カールさんの気持ちは変わらなさそうだったので、私は諦めることにした。
いつもは私一人で登るなだらかな長い坂を、今は二人で登っている。
不思議だ。
いつもより心強い気がする。
もう、あたりの雑草は秋の花を咲かせていて、夏とは景色が変わっていた。
少しだけ楽しい気分で坂を登ってたけど、その間にも私の鼻はオオツラーオたちの匂いをかぎ取っていた。
いつの間にか私は、匂いだけでツラーオが何頭いるのか、オオツラーオもいるのかを感じ取れるようになっていた。
「…ツラーオ三頭とオオツラーオにゃ。もう少ししたら姿が見えるようになるから、カールさんはそこで止まってにゃ」
私の言葉にカールさんはうなずいて
「わかった…気をつけて…」
と言った。
オオツラーオたちが見えるようになった所でカールさんを待たせて、私は武器を一本ずつ前脚に持って、それをツラーオたちに向かって投げた。
ツラーオたちは声を上げる間もなく倒れ、二本の武器は私の手元に戻り、オオツラーオがこちらを見た。
私の武器投げは、モールやツラーオ相手なら百発百中で、苦しむヒマも与えず一撃で仕留めて、武器が手元に戻ってくるぐらいには上達してたけど、オオツラーオにはまだ試したことがなかった。
私が少し迷った瞬間に、オオツラーオはこちらに向かって走り出した。
その目に私は映っていない。
カールさんを狙ってるんだ。
一瞬ひるんだ私の目前まで、オオツラーオは迫っていた。
この距離だと、武器はもう投げられない…!!
私はオオツラーオと衝突する寸前に地面を思い切り蹴って、真上に飛びあがりながら二本の武器で、オオツラーオの腹を下から上に向かって切り上げた。
武器はオオツラーオの鼻先まで一気に切り裂き、
「ギッ…」
オオツラーオはひと声残して、その場にずずんと音を立てて倒れた。
すると私の後ろから、カールさんの、ほーっというため息が聞こえた。
「こいつらは私が運んでくから、カールさんは東門まで戻ってにゃ」
私の言葉にカールさんはうなずいて、荷車を引いて戻って行った。
この坂の上からツラーオ三頭載せた荷車を引いて、カールさんひとりで降りられるわけがない。
荷車の荷が重すぎるから、東門近くの平地まで行く前に、カールさんは転がる荷車にひかれちゃうだろう。
私はベリーの実を食べてツラーオ三頭を荷車まで運んだ後、オオツラーオをかついで村に走った。
村に戻ると、みんなはツラーオとオオツラーオを急いで、でも丁寧に解体してくれた。
私は家で毛づくろいをしながら、さっきの自分のジャンプ力のすごさを思い返した。
うちのモモも、体の何倍もある高さのタンスの上とかに飛び上がってた…実は私もモモぐらい飛び上がれる?
ネコの身体能力については良く知ってるつもりだったけど、ジャンプ力についてはうっかりすっぽり忘れてた。
もしかしたら、このジャンプ力がアクアドラゴン討伐にも役に立つかもしれない。
さっきオオツラーオにやったみたいに地面を強く蹴ってジャンプして、下から上に向かって武器で斬りあげて…いや、アクアドラゴンはもっと大きい…というか、首が長いらしい…
前世の体育の跳び箱で使ったロイター板みたいなのがあったら…でも、そんなのないし。
あったとしても、うまいことアクアドラゴンの前に置いとくとかムリだろうし…うーん…
あれこれ考えているうちに眠くなってきた私は、大あくびをしてベッドで丸くなった。
そしてまた、自分のしっぽの先をちゅうちゅうと吸いながら、私は眠りに落ちていった。
第6章開始です~。昨夜ネコが具合悪くなって心配してたんですが、元気になりました。ネコでも食べすぎはあかんで…




