5-4 ネコ戦士、防壁を作る
なんとかなるとは言ったけど、実際私になんとかできるとも思えない。
フリーザードラゴンより先にアクアドラゴンが現れたら、アクアドラゴンを何とかしなきゃ。
「大昔に四人のネコ戦士がアクアドラゴンを討伐した時の、詳しい記述はないのにゃ?」
と私が尋ねると、
「…しばし待たれよ」
とケラーさんはまた本をめくった。
そして
「うむ…アクアドラゴンが東の海から現れ、海岸に上った際に起きた津波で村は滅びた。アクアドラゴンはそのまま浜辺にいたので、ネコ戦士たちは、陸では動きの鈍かったアクアドラゴンを四方から攻撃し、討伐したようだ」
と言った。
ということは、次にアクアドラゴンが現れた時にも同じような状況になる可能性が高い。
私はまた、無い知恵を絞り出そうと一生懸命考えた。
考えて考えて考えて、私はケラーさんに言った。
「今、東の海岸と王都までの間に津波対策の防壁はあるのにゃ?」
「うむ。大昔アクアドラゴンによって津波が起きた後、長い年月をかけてそれなりの防壁は作られてきたのだが、まだ足りぬ」
ケラーさんがそう答えたので、
「どのあたりに足りないにゃ?」
と私は聞いてみた。
ケラーさんは
「王都の北東、それに南東のあたりはまだ防壁がない」
と、海沿いの地図を広げて指でさし示しながら説明してくれた。
なので私は
「じゃあ私も手伝うから、そこに防壁作ろうにゃ!」
と提案した。
驚くケラーさんに
「私はベリーの実を食べたら、すごい力が出るにゃ。防壁用の建材を運ぶぐらいはできるにゃ」
私はそう説明した。
「さっき考えた、フリーザードラゴンを追い詰めて海を凍らせて、アクアドラゴンを討伐するっていう作戦には、大きな問題点があるにゃ」
私がそう言うと、ケラーさんは
「大きな問題点…とは?」
と首をかしげた。
「その作戦を使ったら、下手したら私がひとりでフリーザードラゴンとアクアドラゴンを同時に相手にしなきゃいけなくなるってことにゃ」
私がそう言ったら、ケラーさんは、あっという顔をして
「なるほど…それは大きな問題だな…」
と言った。
「だからやっぱり、アクアドラゴン対策に防壁をしっかり作っといてから、先に現れた方を倒した方がいいにゃ」
私の言葉に、ケラーさんはうなずいた。
「うむ、それならば、より現実的な考え方と言えるだろう。防壁の増設については、私から国王陛下に申し上げよう」
ケラーさんがそう言うと、なぜか傭兵たちが駆け寄ってきた。
「防壁を作るなら、俺たちも手伝います!」
「モンスターはたいして倒せないけど、力だけなら普通の人より強いですから!」
どうやら防壁づくりを手伝ってくれるらしい。
なので私は
「ありがとにゃ!王様が防壁作っていいって言ってくれたら、その時は頼むにゃ!」
と傭兵たちにお礼を言った。
こうして津波対策の防壁の増設プロジェクト?は、王様に提案されて、王様の許可と予算の計上を経て実行に移されることになった。
王都の木こりの人たちと傭兵団が王都近くの木を伐採し、王都の大工さん、それにベリー村の大工のエドさんと弟子二人も加わって、防壁の骨組みを作り、王都の左官職人さんがそこに壁材を塗る…という計画だった。
私はベリーの実を食べては木を切って運ぶのを手伝ったり、大きな木の柱を建てたり、そこに大きな横木を組み合わせるのを手伝い続けた。
「ネコ戦士ってすげぇな…」
「俺らが何日もかかるような作業をあっという間に…」
王都の木こりの人たちや大工さんたちがそう言っていると、なぜかベリー村のエドさんたちが
「そうだろ?モモちゃんはすげぇんだぞ!!」
と偉そうに言った。
…あんたらも仕事しろよ…
元々の防壁はそれなりに作ってあったので、北東と南東の防壁の増設は意外に早く終わった。
私は木を切るのと、木を運んで骨組みを建てるのを手伝えば良かったので、私が作業にかかわったのは一週間ぐらいだった。
それでもベリー村が心配だったから、間で一回ベリー村に戻って、村の近くに現れたツラーオを倒したり、村のみんなが困ってることはないかを確認した。
幸い村には大事なく、骨組みの終わった防壁の壁塗りを時々見に行ったりしていると、三週間ほどで王都を守る防壁は完成した。
王様がすっごく喜んで、馬車に乗って防壁を見に来たと思ったら、
「モモ殿、王都を守る防壁の提案ならびに建設への尽力をたたえ、勲章を授ける」
と、また勲章を差し出してきた。
「この頭の装備に着けた一個で充分にゃ。もう一個つけたら邪魔になるにゃ」
と私が断ると、王都の作業員の人たちは凍りつき、エドさんたちは大笑いした。
ギルド長はまた笑いをこらえて
「陛下…ネコ戦士殿にとって、勲章は誉ではないようにございます…」
と王様に言った。
その通り、ネコに小判、だよ。
と私は思った。
ネコに小判…うちのネコの首輪には銀色のネームプレートがついてます。小判ではありません。




