5-1 ネコ戦士、村の子供たちを見送る
夏祭りの夜が明けると、村の人たちはみんな二日酔いでぐったりしていた。
当然だろう。
大きな酒樽の果実酒を、丸々ひとタル、そう多くはない村の大人たちで飲んだんだから。
それでもジンさんは痛む頭を押さえつつ肉を焼き、バーサさんもふらつきながら店を開けていた。
私がいつも通りジンさんに焼き肉をもらって、もぐもぐと食べてたら、ジンさんが
「モモちゃん…もう串は食うなよ…」
頭を押さえながらも、にやっと笑いかけてきた。
なので私は
「ジンさんこそ、二日酔いになるほどお酒飲まない方がいいにゃよ」
と、にやっと笑い返した。
「夏祭りぐらいいいだろぉ…」
そう言いながら、ジンさんはまた頭を押さえた。
「はい、モモちゃん」
ふらつきながらバーサさんも、いつも通りベリーの実を渡してくれた。
そして
「リンゴも食べなよ」
とリンゴもひとつくれたので、私はお礼を言ってリンゴにかぶりついた。
すると向かいの屋台からジンさんが
「いい食いっぷりだねぇ。さすが鉄の串を噛み砕くだけはあるな」
と、またしつこくからかってきた。
「ジンさんもリンゴ食べたらどうにゃ?二日酔いに効くかもしれないにゃよ?」
私がにやにや笑いながら言い返すと
「…頭いてぇ…」
ジンさんはまた頭を押さえた。
…だから、どんだけ飲んだんだよ…
夏祭りの翌々日には、リーナさんの三人の子供たちは王都に向かうことになっていた。
ギルド長が二頭立ての荷馬車で迎えに来てくれて、子供たちは着替えとかの荷物を持ってその荷馬車に乗り、王都の学校の寄宿舎に行くそうだ。
子供たちが旅立つ日の午前中に荷馬車は村に着いて、午後には旅立つことになった。
リーナさんとウェンさんは
「ジェイ、ロイ、ケイ、体には気を付けるのよ」
「しっかり勉強してくるんだぞ」
と、二人で子供たちを抱きしめながら別れを惜しんだ。
三人の子供たちの年は違うけど、三人とも同じ学年になって、五年間学校で勉強して来るそうだ。
この国の他の村の子たちも同じように、五歳から八歳ぐらいになると王都の学校に行くらしい。
リーナさんの三人の子供たちが、よその村や王都の子供たちと友達になってくれるといいなぁ…と思って
「みんな、勉強もいいけど、友達も作れたらいいにゃ!」
と私が言うと、
「いじめられたら、ネコ戦士に怒ってもらうぞって言っとくよ!」
最年長のジェイがそう言って笑った。
…私をそーゆーのに使うなよ…
子供たちとその荷物を荷馬車に乗せた後、ギルド長が私の方に来た。
「ネコ戦士殿、近くまた大型モンスターが動き出しそうな様子である…と研究所長が言っていたので、心の準備をしておいてくれ」
ギルド長の言葉に私はうなずいた。
「わかったにゃ。また知らせてくださいにゃ」
私がそう言うと、ギルド長もうなずいて
「うむ。またそのモンスターの情報と共に知らせよう」
と言って、荷馬車の方に向かって歩き出した。
「ギルド長さん!お金!お金にゃ!!」
サンダードラゴン討伐の報酬金を子供たちに使ってもらうって言ってたのに、まだお金を渡してなかったので、私は慌てた。
「子供らにかかる費用は国が負担するので必要ない…と陛下は仰せである」
ギルド長がそう言ったので、私は困ってしまった。
「…あんなたくさんのお金、どうしたらいいのにゃ…」
と私が言うと、ギルド長は
「子供らの両親を王都に連れて行き、子供らに会わせる際の宿代などに使ってはどうか?」
と言った。
「ギルド長さん、たまにはいいこと言うにゃ!」
と私が言ったら
「…うむ…たまには私も役に立つぞ」
ギルド長は渋い顔で言った。
サンダードラゴンの件の時、村のみんなに”なんの役にも立たない”って言われたの、まだ気にしてたのか…
子供たちを乗せた荷馬車を、私たちは村人総出で見送った。
「淋しくなるねぇ…」
バーサさんがそう言うので、
「一番淋しいのはリーナさんとウェンさんにゃよ」
私はバーサさんに言った。
「それはわかってるけどねぇ…村から子供の声が聞こえなくなるのは、淋しいもんだよ」
と、バーサさんは遠い目をして言った。
バーサさんはきっと、王都にいる娘さんや孫のことを思い出してるんだろう。
「リーナさんとウェンさんを王都に連れて行く時、バーサさんも一緒に行こうにゃ!それで、バーサさんの娘さんや孫に会うにゃ!」
と私が言うと、バーサさんは驚いた顔をしてから
「いいねぇ。行ってみたいねぇ…」
と優しく笑った。
すると三人娘が
「私も!!」
「私たちも連れてってよ!!」
と騒ぎだして、それを横目で見ていたカールさんはため息をついた。
あぁ…またカールさんからマイナスポイントつけられたよ、三人娘…
私もカールさんに続いてため息をついた。
第5章開始です~。コタツに入ってると、ネコがコタツの中の私の太ももの上…太ももとコタツ布団の間で丸くなります。コタツの意味、あるか…?




