4-7 ネコ戦士、求婚される
「モモちゃん、俺の嫁さんになってくれ」
続くカールさんの言葉に、私はまたもや凍りついた。
「カールさん、私はネコ戦士にゃ。ヒトとは一緒になれないにゃ」
私は、そう答えるしかなかった。
カールさんは
「わかってる。わかってるけど、モモちゃんが一番いいんだ」
と、私の目をじっと見つめて言った。
なので私は
「カールさんは村の女の子と一緒にならなきゃダメにゃ。私ではダメにゃよ…」
カールさんの目を見つめ返してそう言った。
するとカールさんは
「…あんな奴ら、ダメだ」
と、とんでもないことを言い出した。
「あ、あんな奴らって、何言ってるにゃ?」
私が慌ててそう言うと、カールさんは言った。
「ツラーオの皮でケンさんにタダでバッグを作らせようとしたり」
…うわっ、あれ見てたんだ…
「自分からは好きとか言わないで、俺が誰を好きなのか探ろうとしたり」
…それは女の子として普通なんじゃないのか…?
「俺が、モモちゃんがいいって言ったら、モモちゃんに詰め寄って取り囲んだり」
…あれが三人娘と仲良くなるきっかけになったんだから、別にいいのに…
「モモちゃんがバーサさんにお土産渡したら、自分たちのは!ってモモちゃんにたかったり」
…うわぁ…もう止まんないよ、カールさん…
私はカールさんの三人娘への評価をひと通り聞いてから、カールさんに言った。
「カールさん、それは女の子としては普通のことにゃよ」
カールさんは目を見開いて私を見た。
「新しいバッグを欲しがったり、好きな人に好きって言えなくて探りを入れてみたり、好きな人が好きって言った人に、その人は自分の好きな人のことをどう思ってるのか聞いたり…友達が自分以外の人にお土産渡したら、自分にはないのかにゃ?って気になったり…そんなのは女の子としては普通にゃ。ダメなんかじゃないのにゃ」
私がそう言うと、カールさんはしばらく黙ってから
「…わかった。あんな奴らはダメとか言って、悪かった。言い過ぎた…」
と、そう言った。
「でも、それでもモモちゃんが一番いいんだ」
カールさんにそう言われて、私はがっくりきた。
もうどう言えばいいのかわからないよ…
この世界を危機から救ったら、私はこの世界からいなくなるかもしれないのに…
私は、はっとした。
そうだ、これを言えば良かったんだ。
「ギルド長さんが言ってたにゃ。伝説のネコ戦士はこの世界を危機から救うために召喚されて、世界を危機から救い終えたら、この世界からいなくなるんにゃって」
…前世の私は死んだから、元の世界に戻ることはない。
だからきっと私は、消滅するだけなんだろうな…
そう思っていると、私の言葉にカールさんは目を見開いたまま黙った。
そして
「…モモちゃんがこの村に現れた時…空からゆっくり降りてきたんだった…」
と、呆然とした顔で言った。
え、そうなの?
私は私がベリー村に来た時のこと…どんな風に来たか知らなかったけど、そんな感じだったんだ?
へー、そんな感じ…天から舞い降りた天使みたいな感じだったのかー。
まあネコのかわいさは天使だけど。
そんなことを考えてると、
「…そうか…昔話の、山みたいなドラゴンを倒したら…モモちゃん、いなくなっちまうのか…」
カールさんは少しうつむいて、泣きそうな顔で言った。
カールさんの言葉に、山みたいなドラゴンがいなくなった後、この国に戻ってこなかったという四人のネコ戦士たちのことを、私は思い出した。
あの四人は元々この世界で生まれ育ったはずだから、元の世界なんてなかったはずだ。
だったら、四人のネコ戦士たちは…多分、死力を尽くしてドラゴンと戦って…そして…
「…大丈夫にゃ。きっとこの村を、この世界を守るにゃ」
私がそう言うと、カールさんは泣きそうな顔のままうなずいた。
そして
「ああ…それまで、またモールやツラーオ狩りに行こうな」
と、少し笑った。
「そうにゃ!またよろしくにゃ!」
私も笑って答えた。
「…さあ、じゃあ俺はまた飲み直してくるか!!」
と言って、カールさんは広場の方を向いた。
「今日は失恋のヤケ酒だー!!」
カールさんが大声でそう言いながら広場に向かって走って行くと、村のみんなは驚いた顔でカールさんを見た。
「カール…お前モモちゃんにふられたのか…」
「よし!付き合うぜ!!」
大工のエドさんの弟子の若い男の人たちが、カールさんに向かってお酒の入った木のジョッキを差し出した。
三人娘は目が飛び出そうなぐらいに大きく目を見開いて、カールさんを見てから私を見た。
「大丈夫にゃ。カールさんはきっと、三人の誰かと結婚するにゃ」
と私が笑って言うと、三人は
「誰かって、誰よー!!」
と叫んでから、
「私たちも飲むわよー!!」
と、カールさんたちにまじってお酒を飲み始めた。
この感じじゃ明日動けるのは小さな子供たちと私だけだろうな…と、私はため息をついた。
これにて第4章終わりです。明日からは第5章開始です!ネコが西日を受けながらまぶしそうにしてます。どんなネコもかわいい。←




