4-6 ネコ戦士、しばし日常に戻る
サンダードラゴン討伐後、次はどんなモンスターが現れるのかと、びくつき半分楽しみ半分で、私は待つことにした。
するとサンダードラゴン討伐の二日後には、ギルド長が今回の報酬金を持って来てくれた。
「ネコ戦士殿、こたびの報酬金である」
と、いつも通りの硬い言い方でギルド長は、サンダードラゴン討伐の報酬金を渡してくれた。
あれ?いつもより軽い…?
と思ったら
「こたびの報酬金は10万ジロなので、銀貨ではなく金貨なのだ」
ギルド長はそう言った。
10万ジロ…ってことは…日本円で百万円…?!
しがない零細企業の事務員だった前世では、ボーナスでもそんなにもらったことがなかったので、私は慌てた。
「そ…そんなにもらっていいのかにゃ?!」
と私が言うと、ギルド長は
「命を失ってもおかしくはない相手だったのだ。これでも安いだろうと国王陛下は仰せだ」
そう言った。
するとなんでだか、バーサさんが怒りだした。
「ちょっと!ギルド長さん!!あんたらはこの子の命がたったの10万ジロだって言いたいのかい?!」
いやいや…私なんて前世では安い生命保険しかかけてなかったから、私が死んでも母親に入るのは百万ぐらいだったと思うよ…と、私は心の中でつっこんだ。
「そっそのようなことは…!!」
とギルド長が慌てたので、私はギルド長の援護をすることにした。
「そうにゃ!ギルド長さんは私がサンダードラゴンの背中から落ちそうになった時、私を助けるために走ってきて、馬さんと一緒に雷に撃たれて倒れたのにゃ!!」
私の言葉にバーサさんがびっくりした顔で
「えっ…そうだったのかい…!?」
と言ったので、私はついでに
「そうなのにゃ。私、ギルド長さんが死んじゃったって思って、サンダードラゴンを倒した後、”ギルド長さん、仇はとったにゃ”って言ったのにゃ。そしたらギルド長さん、生きてたんにゃけど、しばらく麻痺してたって言ってたのにゃ!」
と言っといた。
バーサさんたち村のみんなは
「そうだったのかい…ギルド長さんはギルド長さんなりに、モモちゃんを守ろうとしてくれたんだねぇ…何の役にも立たなかったのに…」
と口を揃えて言った。
何の役にも立たないと言われて、ギルド長は
「そうだな…私など、何の役にも立たなかったな…」
と落ち込んだ。
するとバーサさんが
「ありがとね…何の役にも立たなくても、この子のために動いてくれたんだね…」
とギルド長に言った。
バーサさん、それはダメ押しじゃん…と私は思った。
ギルド長からもらった10万ジロの報酬金をどう使うべきか、私は迷った。
前世でもこんな大金、いっぺんに持ったことはない。
っていうか、この世界でこんな大金持っても使い道ないしなー…
村のみんなを王都に連れてって、王都の宿に泊まってもらって、贅沢三昧してもらう?
いやいや、それでも余るよな…
色々考えた結果、村の三人の子供たちを王都の学校に行かせては?と私は思いついた。
この村には雑貨屋のリーナさんとこ以外には、小さな子供はいなかった。
五歳から八歳までの子供たちなら、そろそろ教育が必要だろう。
前世の私があんな、ほぼ喪女のアラサーオタク女子でなけりゃ、このぐらいの年の子たちがいたって不思議はなかっただろうし…我が子と思えばお金も惜しくない。
なので私は、リーナさんちの三兄弟を王都の学校に入れることを提案した。
「えっ…それは願ってもないことだけど…いいの?モモちゃん…」
リーナさんは戸惑ってた…というか、おろおろしていた。
なので私は
「この子たちは王都で色々勉強してきた方がいいにゃよ。リーナさんと離れるのは淋しいと思うけど、子供に勉強は必要にゃろ?」
と、リーナさんに言った。
リーナさんは婿養子のウェンさんと話し合うことになり、その結果、リーナさんの三人の子供たちは王都の学校に入ることになった。
王都での色々は、ギルド長と王様が引き受けてくれることになって、私は安心した。
王都の学校は秋に新学年が始まるので、リーナさんの子供たちはそれまで村で過ごし、秋には王都から迎えが来ることになった。
夏の終わりの村での夏祭りの後で、リーナさんの子供たちは王都に向かう。
その日、その時まで、リーナさんの子供たちは、リーナさんとウェンさんに思う存分甘えるだろう。
リーナさん一家を見ていて、私は、今は亡き父と、母と姉一家のことを考えた。
みんな、元気でやってるかな…甥たちは中学のテスト、どうだったかな…いい子たちだけど、ゲームばっかりやってたからなぁ…
私は、夏の星々がきらめく夜空を見上げながら、そんなことを考えていた。
明日は村の夏祭りで、みんな久しぶりに酒盛りをするらしいから、あさってはまた、二日酔いだらけなんだろうな…
そう思ってふっと笑ってから、私は家に戻ってベッドで丸くなって、眠りについた。
翌朝目覚めると、もう村は朝から酒盛りだった。
村の野菜や果物や、モールやツラーオの肉も王都で売れて、ベリー村は豊かになっていた。
この村の夏祭りは、神様に豊作のお礼を言って、次の豊作を祈るものらしい。
村の人たちはみんな酔っ払い始めてたけど、私はネコなのでお酒は厳禁だ。
ああもう、みんな好きに飲めばいいよ…と思ってたら、カールさんが私の所にやってきた。
カールさんも少しお酒を飲んでいたらしく、ほろ酔い状態だった。
カールさんは、村の南門を出た畑に生えてたらしいピンク色の百合を持っていて、それを私に差し出した。
そして、
「モモちゃん…好きだ…」
と、カールさんは言った。
カールさんの言葉と真剣な表情に、私は凍りついた。
私が入力していると、膝の上のネコが手に頭をこすりつけてきます。邪険に出来ないネコのかわいさが憎い…




