4-3 ネコ戦士、サンダードラゴンに立ち向かう
ベリー村と王都を結ぶ街道はほぼ一直線で結構整地されてるけど、当然アスファルトじゃないし、途中に家や店なんかはない。
アメリカの砂漠あたりを通るハイウェイの劣化版みたいなものだろう。
しばらく走るとギルド長はいったん馬を止めて、地図を見て位置を確認した。
あたりを見回すと、私たちから見て左斜め前方…北西の方向に雷のような光が見えた。
普通のネコはそんなに視力は良くないって言われてるけど、ネコ戦士は視力もとんでもなくいいのかもしれない。
私は
「ギルド長さん、あっちに雷が見えるにゃ!」
と叫んで、右前脚で雷の方を指さした。
「うむ!では行くぞ!しっかりつかまっていろ!」
ギルド長の声にうなずいて、私は馬のたてがみをつかみ直した。
またしばらく走ると、少しずつそいつの姿がはっきり見えてきた。
鳥みたいって言ってたけど、鳥じゃない。
細長い顔に細長い角が二本ついていて、首も細長く…おしりに向かって少しずつ胴体が太くなっているドラゴンが、後ろ足だけで立っている。
ファイアドラゴンはオオサンショウウオっぽかったけど、こいつはファンタジー世界に出てくるような立派なドラゴンだ。
金色の光…雷に包まれた金色のドラゴン。
きれいだ。
「ネコ戦士殿!あれがサンダードラゴンだ!」
ギルド長の叫びを聞いて、私は馬から飛び降りて四つ足で着地した。
背中が重くて、着地する時ちょっと…どすんと音を立ててしまった。
サンダードラゴンへの対策として、ファイアドラゴンの武器と一緒にオオツラーオの武器も背負ってきていたからだ。
ケンさんの鍛えてくれた武器を信用してなかったわけじゃない。
武器を投げてドラゴンの体に刺さって、そのまま私の手元に戻ってこなかった時のことを考えたからだ。
「ギルド長さん、離れてにゃ!!」
私はオオツラーオの武器を構えた。
見れば見るほど、きれいなドラゴンだった。
近くで見ると、どうやら全身に雷をまとってるわけじゃなさそうだ。
雷を帯びてるのは、頭の上の二本の角だけっぽい。
大きさはファイアドラゴンより少し小さいかもしれないけど、金色でめっちゃきれいだ。
私がじろじろと見ているのに気を悪くしたのか、サンダードラゴンはその長いしっぽを私に向かって振った。
飛び上がってしっぽを避けると、私はなぜかサンダードラゴンの腰あたりに乗ってしまった。
しまった…
まだどんなことをしてくるかもわからないのに、乗っちゃった。
でも乗っちゃったからには仕方ない。
体全体から雷が出てる様子はないので、とりあえず武器を背負い直して、私はサンダードラゴンの背中を登り始めた。
するとサンダードラゴンは、私を振り落とそうと体をよじり始めた。
私は爪を立ててサンダードラゴンの頭目指して登り、サンダードラゴンは首を振って抵抗した。
振り落とされてたまるか。
私はその一心で、必死にサンダードラゴンに爪を立てて登って、少しずつ頭に近づいていた。
サンダードラゴンは激しく首を振って、私は振り落とされそうになってしまった。
そうしたら、私を助けようとしたのか、ギルド長が
「ネコ戦士殿!!」
と叫びながら、馬に乗って走り寄ってきた。
「危ないにゃ!!」
私が叫んだのと同時に、サンダードラゴンは首を振りながら、その角から雷を放出し、その光がギルド長と馬に当たった。
そして、馬ごとギルド長はどうっと地面に倒れた。
「にゃーーーーっ!!!」
私は、叫ぶしかなかった。
どうする?どうする?
飛び降りてギルド長を助けに行く?
でもそしたらきっとまた、サンダードラゴンはそっちに向かって雷撃を繰り出すだろう。
…決めた。
私はギルド長と馬のいない方に向かって、サンダードラゴンから飛び降りた。
するとサンダードラゴンは迷わず私に向かって雷撃を繰り出した。
横っ飛びで雷撃を避けて、次の雷撃に備えてたけど、サンダードラゴンはすぐには次の雷撃を放たなかった。
もしかして…二発続けてとかは雷を撃てない…?
次の一発のためには多少の時間が必要なのかもしれない。
充電?のための時間が必要なのかも…
私はポーチからベリーの実をひとつ取り出して、がぶがぶと食べた。
そしてサンダードラゴンの細い首を狙って、オオツラーオの武器を投げた。
「ギョエッ!!」
細い首の太さの半分ぐらいまでオオツラーオの武器が食い込んで、サンダードラゴンは悲鳴を上げた。
それでもまだ、私に向かって雷撃を繰り出してくる。
それも何とか避けて、次の雷撃までの溜めの隙を突いて、私はファイアドラゴンの武器を、すでにサンダードラゴンの首に刺さっているオオツラーオの武器に向かって投げた。
ファイアドラゴンの武器はオオツラーオの武器を押し出し、サンダードラゴンの首が切れて落ちた。
サンダードラゴンはもう声を発することもなく、どどんと音を立てて崩れ落ちた。
倒れたサンダードラゴンを呆然と見つめながら、
「ギルド長さん…仇はとったにゃ…」
と私がつぶやくと、
「…死んでないぞ…」
ギルド長の声がした。
「ギルド長さん、生きてたにゃ?!」
私が駆け寄ると、ギルド長と馬は頭を振りながら立ち上がった。
「しばらく麻痺していたが、命に別状はない」
そう言いながらもギルド長はちょっと辛そうだった。
「この後どうしたらいいにゃ?素材も欲しいんにゃ」
と私が言うと、ギルド長は少し呆れたような顔をしてから
「飛行艇が上空から見ていたので、王都に応援要請をするだろう。ネコ戦士用のサンダードラゴン装備には確か、角と皮が必要だったはずだ。それ以外をどうするかは研究班に判断を仰ごう」
ギルド長の言葉が終わる前に、私はサンダードラゴンの角を折って、皮を剥ぎ始めた。
「…全く…たくましい限りだな…」
皮を剥ぐ私の後ろで、ギルド長が笑う気配がした。
レアな笑顔を見そびれて、私は残念だった。
今日のネコ。私の自室(ネコの部屋)のベッドの上で、日光を浴びながら気持ちよく寝てますw




