4-1 ネコ戦士、故郷を思う
私は女性陣へのお土産を買った、服の店のことを思い出して、
「この村には服を売るお店はないけど、みんな服はどうやって買ってるにゃ?」
とバーサさんに聞いてみた。
するとバーサさんは
「王都の商人が持って来てくれるカタログ見て注文するんだよ」
と笑った。
えっ…カタログ通販…?!
「試着とかしなくて大丈夫にゃ?」
前世のネット通販で失敗したことがある私は、そう聞いてみた。
バーサさんは
「既製品の服の大きさは大体同じだけど、たいがいの人が着られる大きさだからね。みんな買った服を自分の体に合わせて、腰回りをちょっとつまんだり、裾を上げたりするんだよ」
と答えた。
そういえば村には…いや、王都の城下街にも、太った人はいなかったっけ。
あんまりカロリー高い食べ物がないせいで、肥満とまで言える人はいないのかもしれない。
だから、既製品のワンサイズの服で足りるんだ。
「なるほどにゃあ…」
私は意外に合理的なこの世界に感心した。
カタログ通販という、意外なこの世界の買い物システムに驚きつつ、私は前世の世界でのことを思い返していた。
私はアラサーオタク女子だったから、服を買うのは安い量産品ショップか、ネット通販だった。
好きな漫画は少年漫画メインで、ゲームも勇者系とかモンスター育成系…男子の方が好きそうなやつが好きだったけど、好みが似ていたオタク友達も何人かいた。
…みんな、元気かなぁ…
ギルド長が言ってたように、もしも元の世界に生きて戻れたら…この世界でのことを話したら、きっとみんな食いつくだろう。
でも、それはきっと叶わない。
私は死んで転生して、この世界に来たんだから。
母も姉達も、私が死んでしまって…まだ泣いてるかもしれない。
それでももう、どうしようもない。
前世の世界への連絡手段なんてないんだから。
私は空を見上げながら、勇者シリーズのゲームのことを思い出した。
勇者は下の世界で魔王を倒して英雄になったけど、上の世界…自分の故郷への道は閉ざされて、勇者をひとり待つお母さんの所に戻ることは出来なくなったんだ。
…もしも山のようなドラゴンが現れなかったら…?
私もあの勇者と同じように、この世界で生きて、そして死んでいくのかな…
天を仰いだ私の目から涙があふれて、ふわふわの毛の生えた頬を伝って、流れて落ちた。
「モモちゃん!!どうしたんだい?!」
バーサさんの叫びで私は我に返った。
物思いにふけってたけど、バーサさんと話してたんだった…
「急に黙り込んだと思ったら上向いて泣き出して…王都で嫌なことでも言われたのかい?!」
バーサさんは眉間にしわを寄せてそう言った。
「なんだと?!」
「王都の奴らがモモちゃんをいじめたのか?!」
男の人たちが寄ってきた。
「にゃ…」
と私が言いかけると、
「誰よ!!モモちゃんをいじめたなんて!!」
「私が行って、棒で殴ってやるわ!!」
三人娘も寄ってきた。
なんなんだ、この人達。
勝手に誤解して勝手に怒って…
私はおかしくてたまらなくなって
「にゃーっにゃっにゃっにゃっ!!」
と大声で笑ってしまった。
…笑い方まで”にゃ”なのかよ…
ぽかんとしている村のみんなに、
「違うにゃよ。カタログで服買うって聞いて、私も私の世界ではそうだったにゃって…思ったら…思ったら、母さんとか姉さんとか友達を思いだしちゃったのにゃ…」
と言うと、みんなはほーっと息を吐いた後、
「いじめられたんじゃなくて良かったけど…」
「そうか…そうだよな。モモちゃんにも親兄弟や友達がいたんだもんなぁ…」
と言った。
バーサさんが
「…本物の母さんじゃないけど、あたしがモモちゃんの母さんのつもりだよ」
と言ってくれて、私は目頭が熱くなった。
「そうよ!私たちが姉さんとか友達よ!」
「マリアが姉さんで、アンナと私が友達ね」
「…まあ私が一番年上だから、姉さんでいいわ」
三人娘もそう言ってくれたので、私の目からはまた、涙があふれてきた。
「…みんな…ありがとにゃ…」
右前脚で涙をぬぐっていると、カールさんが
「モモちゃん、これで拭きなよ」
と手拭いを差し出してきた。
なんだか薄汚れてたので
「…汚いにゃ…」
と私が言うと、
「ひでぇよモモちゃん!」
とカールさんが笑って、みんなも声を立てて笑った。
この村が今の私の故郷…みんなが私の家族や友達なんだ…
そう思って、私は泣きながら、笑った。
今日からいきなり寒くなりました…パソよ、頑張ってくれい…ネコと同じぐらい寒さに弱い、うちのパソですw




