2-10 ネコ戦士、女子会をする
「はい、モモちゃん」
と、カールさんを取り囲んでいた女の子のひとりが、私に焼いた肉の乗ったお皿を渡してくれた。
「ありがとにゃ。名前聞いていいにゃ?」
私がそう言うと、女の子は
「私はアンナよ」
と、にこっと笑った。
茶色のくせっ毛を首の後ろで束ねてて、丸い茶色の目がかわいい子だ。
他の二人の女の子たちも寄ってきて、
「私はマリア」
「私はエマよ」
と名乗ってくれた。
マリアはストレートの長い黒髪に切れ長の茶色の目、エマはウエーブのかかった長い金髪に、大きな茶色がかった金色の目だ。
なぜか女子会のように、私たちは四人で広場のベンチ代わりの丸太に座って、焼き肉を食べることになった。
「みんなはカールさんが好きなのにゃ?」
私がそう尋ねてみると、三人は笑って
「そうよー」
「優しいし、かっこいいし」
「村長さんの孫だし」
と口々に言った。
「えっ、カールさんて村長さんの孫なのにゃ?」
私は驚きつつも、村長がモールやツラーオを狩りに行く時に私にカールさんを付き添わせたのは、自分の孫だからだったのかーと納得した。
「カールさんのお父さんは誰にゃ?」
と聞いた私の言葉に、三人は一瞬顔を固くして、そしてアンナが答えた。
「…モモイロヒヒに…あ、モモちゃんと話したメスじゃなくて、オスのモモイロヒヒよ。そいつに殺されたのが、カールさんのお父さんなの…」
「…そうだったのにゃ…」
返す言葉が見つからなくて、私はそう言うしかなかった。
「…カールさんのお母さんは誰にゃ?」
ふと気になって私が聞くと、
「バーサさんの妹さんよ」
とマリアが答えた。
私はまた驚いて、
「え?バーサさんに妹さんがいるのにゃ?会ったことないかもにゃ」
と言った。
するとエマが
「バーサさんの妹さんは、旦那さんが亡くなった後、気落ちして病気になって亡くなったわ…」
と言った。
なんてことだ。
カールさんのお父さんがモモイロヒヒに殺されて、お母さんはそのショックで病気になって亡くなったなんて…
あっ…だから、私がモモイロヒヒを倒すって言った時、バーサさんは泣いて私を止めようとしたんだ。
思いがけない人間関係に、私は言葉を失った。
すると、アンナが言った。
「だからね、暗いこといっぱいだったこの村に、モモちゃんが来てくれて良かったなって思ったの」
私は顔を上げてアンナを見た。
「そうよね。王様のネコ戦士召喚では、いくらこの村からのお願いでも、この国のどこにネコ戦士が現れるかはわからないらしかったのよ。でも、モモちゃんはこの村に来てくれたわ」
マリアが私の方を向いて笑った。
「モモちゃんが来てくれて、村のみんな明るくなったわ。ありがとね、モモちゃん」
エマも私に向かって笑ってくれた。
私はなんて言っていいかわからなくなって
「…今夜は酒盛り許すにゃー!!」
と、立ち上がって叫んだ。
私の言葉を聞いて、村のみんなは
「おおっ?ネコ戦士様のお許しが出たぞー?」
「じゃあ今夜は飲んでもいいってことだな?」
と盛り上がって、果実酒を飲み始めた。
アンナたちもお酒を飲み始めて、なんでか流れで私の家に来ることになった。
私のベッドは大きいので、四人でごろごろしながらおしゃべりした。
「みんなはカールさんが好きなんにゃろ?でもカールさんはひとりしかいないにゃよ」
私の言葉に三人はうなり始めた。
「うーん…カールさん以外にも男の人はいるけどねぇ」
「カールさんが一番かっこよくて優しいのよね…」
「ケンさんも一応独身だけどねぇ…」
私はちょっと驚いた。
「ケンさんて独身なのにゃ?!」
鍛冶屋のケンさんは多分アラフォーとかもっとじゃないかと思う。
こういう世界って結婚早そうなのになー…と私が思っていると、
「ケンさんて仕事一筋すぎて、雑貨屋のリーナさんが一生懸命アピールしたのに気がつかなくてさ」
「リーナさんは他の人と結婚しちゃったのよね」
「鈍感すぎるのよ、ケンさんは…」
三人は口々にそう言った。
完全に女子会になっている。
女子四人であーだこーだ言ってるうちにみんな寝てしまって、目が覚めたら夜が明けていた。
すると馬の蹄の音がして、ギルド長が村に入ってきたようだった。
「ネコ戦士殿!!ファイアドラゴンがベリー村の北に迫っている!!急ぎ戦いの準備を!!」
ギルド長の必死な叫びに、私は飛び起きた。
これにて第2章終わりです。明日から第3章開始です~




