2-9 ネコ戦士、色恋沙汰に巻き込まれる
私はファイアドラゴン討伐の依頼を待ちながら、今まで通りモールやツラーオを倒して、村の人たちに肉や皮などを提供していた。
近いうちに来るかもしれないファイアドラゴンとの戦いに備えて、いかに無駄なく素早く動き、弱点を一撃で突いて倒せるかを練習していたのだ。
モールやツラーオの狩りには、いつも通りカールさんが荷車を引いてついてきてくれた。
「モモちゃん、どんどん強くなるなぁ」
カールさんが私に笑いかけてきた。
「かわいいピンクの装備目指して頑張ってるにゃ!」
私が言うと、カールさんは笑った。
「そうだな、モモちゃんには桃色が似合うだろうな」
カールさんの言葉に、私は愛猫のモモのことを思い出した。
うちのモモにはピンクが似合うって、いつもピンク系の首輪をつけてたっけ。
ピンクメインの織物っぽいのとか、ピンクと水色のストライプのとか、そういうのをいつも選んでた。
今の私は仔ネコの頃のモモに似てるから、きっとピンクが似合うだろう。
カールさんと一緒に村に戻り、モールとツラーオ一頭ずつを広場におろし、後はみんなに任せて私は家で毛づくろいをした。
もうそろそろ焼き肉パーティかなーと思って広場に行くと、三人の若い女の子たちがカールさんを取り囲んでいた。
女の子たちは二十歳前後ぐらいで、ツラーオのバッグを欲しがってた子たちだ。
「ねぇ、カールさんは誰が好き?」
という女の子の言葉に、私の耳はぴくりと動いた。
恋バナとかには特に興味はないけど、修羅場話にはちょっと興味がある。
男の人一人に女の子三人なら、修羅場だろう。
「うーん、まだ誰が好きとかは思えないなぁ」
とカールさんは笑って答えた。
するともう一人の女の子が
「じゃあ、かわいいとかきれいだなって思うのは誰?」
とカールさんに尋ねた。
するとカールさんは
「モモちゃんかな」
と明るく笑って言った。
おいおい、私を巻き込むなよ…
「えっ…モモちゃん…?」
もう一人の女の子が驚いたように言った。
カールさんは
「うん。かわいいだろ?ふかふかの白い毛並みに、青い大きな目でさ」
にこにこと笑いながらそう言った。
最初に”カールさんは誰が好きか”と聞いた女の子が
「そ、そりゃかわいいけど…」
と戸惑ったように言った。
「でも…ネコだし…」
もう一人の女の子が言った。
「そうよね…ネコだし…」
もう一人の子も言った。
その通り。
ネコだからかわいいのであって、ネコのかわいさはヒトと比較できるもんじゃないよね。
…と思ってたら、
「かわいいだけじゃなくて、強くて優しいだろ?村のみんなのためにあんなにも一生懸命、小さな体で頑張ってくれてるんだ」
カールさんはそう言った。
…だから、私を巻き込むなっての…
「おっ、モモちゃん、毛づくろいは終わったのかい?」
カールさんが私を見つけて声をかけてきた。
「終わったにゃ。そろそろお肉食べられるかと思って来たのにゃ」
私がそう言うと、女の子のひとりが私に向かって
「ねぇ、モモちゃんはカールさんのことどう思う?」
と聞いてきた。
…巻き込むなつってんのに…
「そうにゃあ…カールさんは、村の外に出たら危ないのに、いつも私についてきてくれる、優しくて心が強い人だと思うにゃ」
私がそう言うと、カールさんは照れたように笑った。
そして
「そんなことないさ。モモちゃんが強いから、安心してついていけるんだよ」
カールさんはそう言った。
女の子たちは顔を見合わせて
「…私たちも強くならなきゃ…なの…?」
と自信なさ気に言った。
カールさん、罪作りだわ…
ため息をついて、私は言った。
「ヒトがネコ戦士みたいになるのは無理にゃ。ヒトの女の子はヒトの女の子ができることを頑張ればそれでいいのにゃ。バーサさんみたいに、明るくて元気で優しくて働き者で心が強い女の人が、私は素敵だと思うにゃ」
カールさんは、私の言葉ににっこり笑った。
「そうだな。バーサさんみたいな女の人は、すごくいいなと思うよ」
カールさんの言葉に、女の子たちははっとしたような顔をした。
「そうよね…バーサさんみたいな人って、憧れるわよね…」
「うん。モモちゃんみたいにはなれないけど、バーサさんみたいになら、なれるかも…」
「…もっと働かなきゃね、私たち…」
そう言うと、女の子たちは肉を焼いてる人達に加わって、肉をお皿に取り分けたり配ったりし始めた。
するとカールさんがにやっと笑って
「助かったぜモモちゃん。これであの子たちもおしゃべりばっかりしてないで、少しは働くだろ」
と言った。
どうやらカールさんは女の子たちより…私より、一枚上手なようだ。
私はため息をついて
「どういたしましてにゃ…」
と言った。
入力してるとネコが膝の上に乗ってきてくるくる回るのでちょっと邪魔です…でもかわいい。←




