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第7話 廃遺跡の影

翌朝、俺とリナはギルドの掲示板に張り出された依頼を受け、街の外へ向かっていた。

【近隣の廃遺跡に魔物の気配あり。調査を求む】

対象は村外れの森を越えた先に眠る古代の遺跡。

長年放置されていた場所に魔物が住み着いたらしい。

「カイ、本当に遺跡なんて探検できるの?」

リナが少し不安そうに尋ねる。

「できるかじゃなく、やるんだ。冒険者はそういう仕事だ」

「……うん」

頷く声は小さい。

昨日、ゴブリン相手に震えていた彼女にとって、未知の遺跡は当然恐怖だろう。

森を抜けた先に、それは現れた。

「……これが、廃遺跡」

地面から突き出すようにして崩れかけた石造りの塔。

蔦に覆われ、入口は半ば土砂に埋もれている。

だが、その口からは冷たい風と獣の臭いが漂っていた。

「嫌な気配だな」

俺は小声で呟く。

リナは腰の短剣を握りしめながら震えていた。

「……私、本当に役に立てるのかな」

「役に立つかどうかは結果だ。だが挑戦しなきゃ何も始まらない」

俺の言葉に、リナはぎゅっと唇を噛んだ。

遺跡内部は薄暗く、石壁に苔がびっしりと生えている。

水滴の音が響き、奥からはかすかな唸り声が聞こえた。

「っ……カイ、なにかいる」

「分かってる」

次の瞬間、闇の中から飛び出してきたのは――牙を剥いた巨大なネズミだった。

「キィィッ!」

「リナ、下がれ!」

俺が火球を放つと、炎がネズミを包み、一瞬で焼き尽くした。

残骸が煙を上げて崩れ落ちる。

リナは目を見開いたまま立ち尽くしていた。

「……これが、実戦」

「そうだ。怯えるのは当然だ。だが――」

俺はリナの短剣に視線を落とす。

「その刃を抜いた以上、逃げることは許されない」

彼女はしばし黙っていたが、やがて小さく頷いた。

「……分かった。怖いけど、逃げない」

その言葉に、俺は小さく笑った。

通路を進むうちに、さらに複数の魔物が現れた。

蝙蝠の群れ、巨大ムカデ、そして二体同時のネズミ。

俺が魔法で片づけるたび、リナは悔しそうに拳を握りしめていた。

「全部……カイに守られてばかり……」

「守られるだけじゃなく、守れる存在になりたいんだろ?」

「……うん」

彼女の瞳には恐怖と同時に、確かな決意が宿り始めていた。

やがて、広間のように開けた空間に出た。

崩れかけた石像が並び、その奥に黒々とした扉が聳えている。

「ここだな……」

俺は一歩踏み出し、空気の重さを肌で感じ取った。

扉の隙間から漏れる圧力。

これは小物の魔物ではない。

「カ、カイ……奥に、なにか……」

リナの声が震える。

俺は静かに頷いた。

「間違いない。ここには――ボスがいる」

広間を満たす緊張。

リナが短剣を握り直し、俺は魔力を解き放つ準備を整える。

「……さあ、行くぞ」

闇の奥に潜む存在との戦いが、今始まろうとしていた。

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