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第4話 初依頼はゴブリン討伐

「依頼内容は……ゴブリンの群れ退治、ですか」

冒険者ギルドの掲示板で、俺は紙を一枚抜き取った。

近隣の村に現れたゴブリンが農作物を荒らし、人々を脅かしているという。

「初心者にはちょうどいい依頼だな」

受付嬢も頷いた。

「はい。通常ならFランクやEランクの方々がパーティを組んで挑みます。……ですが、カイ様ほどの実力者なら問題ないでしょう」

俺は冒険者カードを見つめる。

登録したばかりだというのに、そこにはBランクの刻印が刻まれていた。

試験場での一件は、ギルド内でも既に噂になっているらしい。

「じゃあ、これを受けます」

依頼票を差し出し、俺は最初の仕事に向かうことにした。

目的地の村は、ギルドから半日ほど歩いたところにあった。

村の入口には既に別の冒険者たちが集まっている。

「おい、あれ……カイじゃないか?」

「例の“六属性の化け物”だろ……」

俺の姿を見て、冒険者たちがざわついた。

その中には、試験で一緒だった受験生の顔もある。

「へっ……Bランク様が、俺たちと同じゴブリン退治かよ」

「どれだけ強くても、結局はゴブリン相手だろ。調子に乗ってんじゃねえぞ」

嫌味ったらしく笑う彼らを無視し、俺は村人たちに話を聞く。

「ゴ、ゴブリンは森の奥に巣を作っています。最近は十匹以上の群れで現れて……」

「わかりました。すぐに片づけます」

村人は安堵の表情を浮かべたが、横で聞いていた冒険者たちは鼻で笑った。

「はっ、ゴブリン十匹でビビってやがる」

「俺たちが片づけてやるから、無様に逃げ帰るなよ?」

彼らは武器を構え、森の奥へと入っていった。

俺も同じ方向へ足を踏み入れる。

森の中は薄暗く、湿った空気が漂っていた。

やがて、甲高い鳴き声が響く。

「ギギィィッ!」

「来たぞ、ゴブリンだ!」

茂みから飛び出してきたのは、粗末な棍棒を振りかざす緑色の小鬼たち。

三匹、五匹……次々と現れ、冒険者たちに襲いかかる。

「くっ、速い……!」

「一匹や二匹ならともかく、多すぎる!」

受験生時代に俺を馬鹿にしていた冒険者たちは、すぐに押され始めた。

盾で必死に防ぎ、剣を振るうが、連携も取れていない。

「おいカイ! お前も戦え!」

「Bランクなんだろ、証明してみろよ!」

必死に叫ぶ彼らを横目に、俺はゆっくりと手をかざした。

「……燃え尽きろ」

次の瞬間、ゴブリンの群れを炎の奔流が飲み込んだ。

「ギャアアアッ!」

絶叫が森に響き、数匹のゴブリンが黒焦げになって倒れる。

「な、なんだと……!?」

「一瞬で……!」

さらに俺は指を鳴らす。

足元から氷の槍が伸び、残ったゴブリンを串刺しにする。

風が唸り、土が隆起し、光が閃き――闇が敵の視界を奪った。

六属性魔法が連鎖する。

わずか数秒で、十匹以上いたゴブリンは全滅していた。

「……ふう。終わったな」

俺は軽く息を吐くだけで、無傷のまま立っていた。

「お、おい……こいつ……」

「本当に、六属性を操ってやがる……」

怯えた目で俺を見る冒険者たち。

さっきまで「調子に乗るな」と言っていた彼らは、今は震えていた。

「冗談じゃねえ……こんな奴が同じ冒険者だなんて……」

「い、いや、俺たちは最初から信じてたからな!?」

また手のひら返しか。

俺は冷たく笑った。

「……信じてた? さっきまで馬鹿にしてたのは誰だった?」

彼らは顔を真っ青にして口を閉ざした。

俺は振り返り、村へ戻る。

これで依頼は完了だ。

村に戻ると、報告を受けた村人たちが涙を浮かべて感謝してきた。

「ありがとうございます! これで安心して眠れます!」

その素直な言葉に、俺は初めて冒険者としての充実感を覚えた。

力を示すためだけじゃない。

誰かを守るために、この力を使う――。

その時、遠くから甲高い悲鳴が響いた。

「きゃああああっ!」

村の反対側からだ。

俺は即座に駆け出した。

「まだ、残りがいたか……」

そう呟きながら、次なる戦いに備えるのだった。

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