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エピローグ:終わりの風、始まりの門
風が止む。
長く荒れていた日々が、ようやく静けさを取り戻しつつあった。
それでも空は曇りのままで、時折、霧が舞うような白い気配が残っていた。
封印痕跡のあった山裾は、今も霊脈の歪みに包まれたままだ。
その奥に、目に見えない“何か”が眠っている気配だけを残して──
名を持たぬ者たちは、ひとつの旅路を終えた。
戦いを越え、痛みを背にしながらも──確かな絆を手にして。
誰かを庇い、誰かに支えられ、互いの背を見つめながら、
彼らは、ほんの少しずつ歩みを揃えてゆく。
だが、その空の彼方では。
すでに、新たな気配が胎動していた。
召喚の痕跡。
星神術の残滓。
そして──
〈虚夢の門〉を覗く者の気配が、世界の深奥で囁いている。
次なる風は、異界より吹く。




