43/62
エピローグ:影の果てに灯るもの
夜が明ける。
凍てついた空気の中、少女は身を隠す小屋の隙間から、かすかな光を見つめていた。
逃げた先には、何があるのだろう。
希望か、破滅か、それともまた、誰かの意思に縛られるだけの未来か。
それでも、歩くしかなかった。
誰かに与えられた使命ではなく、自ら選んだ道を進むために。
かつて、彼が名を呼んでくれた。
あの一言だけが、今も胸の奥で、灯りのように揺れている。
彼は、まだどこかで剣を振るっているのだろうか。
あの日と変わらず、誰かを守るために。
少女はそっと、胸元のペンダントに触れた。
それが、祈りでなくてもいい。
ただ、もう一度――
彼の隣に立ちたい、そう思った。




