名もなき剣士12:三人の剣、交わるとき1
リグナ=バスト冒険者ギルド本部。
掲示板の前に立つ三人の姿は、周囲の視線を集めていた。
「ねぇ、これ、どう思う?」
ライナが示した依頼書には、こう記されていた。
『依頼内容:西方平原に出現した魔獣群の鎮圧』
『推奨ランク:A級以上、またはB級三人以上』
『備考:大型個体の存在報告あり。拠点周辺に被害拡大の恐れ』
「三人で、やれるか?」
レオンの問いに、ライナがにっと笑う。
「やるしかないっしょ」
カイルも無言で頷き、依頼書を掲示板から取るとカウンターへ向かう。
「……あの依頼か。お前ら、本気で行くのか?」
ギルドカウンター越しに顔を出したのは、ギルドマスターのグレイムだった。
表情に笑みはない。視線には、確かな緊張があった。
「西方旧街道、今は廃れてるが……かつて戻らなかった奴もいる場所だ。
“数が多い”とか、“何かいる”って噂も聞こえてきてる」
「……引き受ける。俺たちなら、行ける」
レオンの短い言葉に、グレイムはふっと息を吐いた。
「あぁ、そうだな、俺もそう思ってる。だから止めねぇ。
ただし、“やばい”と思ったら……そのときは引け。絶対に戻って来いよ」
★
出発の準備を整えた三人は、朝焼けの中、街を後にする。
道中、冗談を交わしつつも、どこかに緊張感があった。
目的地に到着すると、地面は削られ、獣の足跡が無数に残っていた。
「……この踏み荒らし方、かなりの数がいるな」
カイルの観察に、レオンが頷く。
「ライナ、索敵頼む」
「任せて!」
ライナが目を閉じ、周囲の魔力の流れを探る。
「……五、いや、六体。しかも、大きい、なんか変なのが混じってる!」
そうしている間にも、獣たちが姿を現し始めた。
「来るぞ!」
レオンが剣を抜いた。
三人の影が、朝の光の中で交差した。




