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男装を強いられ男として生きてきた公爵令嬢は、2回目の人生はドレスを着て、令嬢ライフを謳歌したい  作者: 江本マシメサ
第四章 ひとつになる

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ヴィルオルとの再会

 翌日にはコンラートに伝えようと思っていたのに、欠席だった。

 次の日も、その次の日も。

 担任に聞いてみると、私と婚約の話が出た夜に発作を起こし、病院に運ばれたらしい。

 入院となったようだが、容態は落ち着いていて、数日のうちに退院できるという。

 フローレスは外出許可を取って、入院先で伝えたらいいのではないか、なんて言っていた。

 体調を悪くしている彼に、婚約はできないなんて言えるわけがない。

 退院後、体調がよくなったら伝えよう。

 そんな決意をする中、ヴィルオルが久しぶりに登校してきた。

 クラブ舎で調査してきたことを打ち明ける。


「アマーリア・フォン・ジーベルの実家と取引があった武器商人だが、よからぬ噂がある集まりだということがわかった」


 なんでも美しく年若い娘を拐かして娼館で働かせたり、体力のある若者を連れ去って農村で強制労働させたり……。

 武器商人だというが、別の品物を売っているのではないか、とヴィルオルは推測しているという。


「王都の娼館をすべて調べさせたが、アマーリア・フォン・ジーベルらしき者を見つけることはできなかった」


 知人に発見されることや、逃走を警戒し別の場所にいる可能性もあるという。

 またアマーリアの両親も事件に関与している可能性があるため、騎士隊に出頭させ、事情聴取をしているようだ。


「あまりいい報告を持ってくることができず、ふがいない」

「そんなことはない。日々、努力を重ねているだろう」


 せっかく貴族高等学校に入学したというのに、アマーリアの事件を調べるため、まともに登校できていないのだ。


「今度ある、夜間茶会はどうする?」

「ああ、そんな行事があったな」


 貴族高等学校で三ヶ月に一度開催される、夜に開かれる茶会である。

 お茶とお菓子を楽しみながら交流するのはもちろんのこと、婚約が決まったカップルのお披露目ダンスの時間などもあるという。


「参加は難しい――」


 話の途中に、突然ドアがドンドン叩かれたので驚く。

 すぐさまヴィルオルが立ち上がり、声をかけた。


「誰だ?」

「そこにユークリッドがいると聞いて、やってきたのですが」

「コンラートか!?」


 ヴィルオルが扉を開くと、コンラートが顔を覗かせ、私を発見すると嬉しそうに駆け寄ってきた。


「コンラート、もう体の具合はいいのか?」

「はい、先ほど退院しまして」

「それはよかった」


 コンラートが私の手を握ってこようとしたのだが、その手をヴィルオルが叩き落とす。


「なっ、何をするのですか!?」

「気軽に触れるな」

「あなたにそんなことを言われる筋合いはありません」

「なぜ?」

「彼女は私の婚約者だからです」


 ヴィルオルの瞳が大きく見開かれ、私に本当かと聞くような眼差しが向けられた。

 コンラートが元気になったら、婚約を辞退するという旨を伝えるつもりだった。

 まさかこのような形で、他言するとは思わなかったのである。


「コンラート、その話だが」

「ユークリッド、どうしたのですか? まさか、父君から返信が届いていないのでしょうか?」

「いや、そうではなくて」


 コンラートが詰め寄るように接近し、私の肩を掴むためか腕を伸ばす。

 けれども再度、ヴィルオルが妨害する。

 コンラートの腕を掴み、肩を押したのだ。

 ヴィルオルにとっては軽く押すような動作でも、病み上がりのコンラートにとっては大きな衝撃となったのだろう。後ろに倒れ込んで、臀部でんぶを床に打ち付けていた。


「うっ――な、何をするのですか!!」

「むやみやたらと婦女子に触れようとするな」

「あなたなんかに言われる筋合いはありません! さっきも言いましたが、彼女は私の婚約者なんです!」

「すまない、コンラート。実は、父に手紙すら送っていなかったんだ」

「どうして、ですか?」

「婚約について、迷いがあったんだ。それで、話をした翌日にコンラートに話そうと思っていたのだが、入院したと聞いて、言い出せなくて……」

「なっ――!?」


 コンラートの表情が怒りに染まっていく。

 それも無理はない。

 私は彼を裏切るような行動を取ってしまったのだから。


「どうして、もっと早く言ってくれなかったのですか?」

「入院先に押しかけると、負担になると思ったんだ」

「見舞いに行こうとか、思わなかったのですか?」

「すまない」


 話を聞いたときは快方に向かっているということだったので、元気になってから話そうと思っていたのである。

 コンラートはすぐにでもやってきて、打ち明けてほしかったようだ。


 彼に手を差し伸べるも、強く叩いて払われてしまった。

 コンラートは誰の手も借りずに立ち上がる。


「そもそも、怪しいと思っていたんです」

「怪しい?」

「ええ。男性と密室でクラブ活動なんかして、はしたない」

「――!」


 別にやましいことなんて何もしていない。

 そう訴えるも、信じてもらえなかった。

 リーベが自分もいたとアピールするためか前脚をだんだん鳴らしていたものの、コンラートは冷たい眼差しを向け「躾がなっていないですね」と冷たく言い放つばかりだった。


「そこの暴力的なヴィルオル・フォン・バーベンベルクは、あなたとクラブ舎にやってくる度に、周囲を警戒していたそうではないですか」

「それは」


 他人に聞かれてはいけない情報を話すための警戒である。

 決して、やましいことをするためではない。


「あなただけは他の女性とは違う、と思っていましたが、見損ないました」


 コンラートは冷たく言い放ち、クラブ舎から出て行く。

 追いかけようとしたが、ヴィルオルから引き留められてしまった。

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