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男装を強いられ男として生きてきた公爵令嬢は、2回目の人生はドレスを着て、令嬢ライフを謳歌したい  作者: 江本マシメサ
第三章 王都で起こる事件について

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事情聴取

 ヘラ・フォン・ファーツェル――子爵家の娘で、アマーリアともっとも仲がよかったである。

 アマーリアの結婚式では、花嫁を支える〝ブライス・メイド〟も務めると話していたのだ。

 もしかしたらアマーリアの近況について、彼女がもっとも詳しいかもしれない。

 そんな思いを抱きながら、ファーツェル子爵邸を訪問した。


 突然やってきたにも関わらず、ヘラは私達を歓迎してくれた。


「ユークリッド様、お会いしとうございました」

「私もだ」

「直接会いたいだなんて望んでしまい、申し訳ありませんでした」

「いいや、気にするな。私もヘラに会いたかったから」


 なんでもなりすましを警戒し、手紙で情報を打ち明けることはしなかったという。

 さすがとしか言いようがない。


 ヴィルオルについては親しい友人だと話すと、それ以上何も聞かずに受け入れてくれた。

 ヘラは来年のはじめに結婚式をするようで、毎日準備に追われていたという。

 アマーリアが行方不明になった、という情報を聞かされるまでは。

 彼女がアマーリアが姿を消したことについて知ったのは、私と同じように新聞の記事がきっかけだったという。


「連絡がつかなくなって、何度も手紙を送ったり、ジーベル家の屋敷を訪問したりしたのですが」


 手紙は返事などなく、屋敷ヘ訪問するも体調不良で会えないと言われるばかりだったようだ。

 不審に思いつつも、結婚前はいろいろあるので、アマーリアも例外なくそうなのだろうと信じて疑わなかったという。


「マリッジブルーという言葉もあるくらい、結婚前は落ち込んで、塞ぎ込みやすくなると聞いておりましたので」


 その後、結婚式の招待状も届いたのでもう大丈夫、しばらくしたらアマーリアから連絡が届くはずだと思っていたらしい。


「しかしながら、その招待状は婚約者であるブロイル卿が出したものらしく」


 ギード・フォン・ブロイル――アマーリアの婚約者であり、ヴィルオルと同期入隊した騎士である。

 そんな彼はアマーリアとの結婚は予定通り執り行う、という強い思いがあったのか。花嫁不在の中、招待状を送るという思いきった行動に出ていたようだ。


「アマーリア様が駆け落ちをした、そんな噂話が流れているようですが、絶対にありえません!」


 アマーリアはブロイル卿との結婚を心待ちにし、一年以上かけて式の準備をしていたという。


「ブロイル卿と結婚し、妻になることがアマーリア様の夢だったんです。そんな彼女が、誰かに心奪われ、何もかも捨てていなくなることなど、ありえません!」


 やはり駆け落ちしたという話はデタラメとしか思えない。


「ただ駆け落ちの噂話の出所が、アマーリアのご両親でね」

「それは――!」


 ヘラは何か思い当たる節があったのか、表情を暗くさせる。


「何かあったのか?」

「その……」

「教えてくれ。アマーリアを発見する、手がかりになるかもしれないから」


 ヘラは言い淀むような様子を見せていたものの、最終的に打ち明けてくれた。


「実は、アマーリア様のご実家は、持参金を用意できないほど困窮している、という話を伺いまして」


 それは本人の口から聞いたことだという。


「しかし、持参金というのは娘が生まれたその日から用意し始めるものなのではないのか?」

「ええ、そのはずです。しかしながら、アマーリア様の父君の事業が傾き、その補填として持参金に手を付けたらしく」

「なんてことを……!」


 結婚を遅らせようとしたようだが、ブロイル卿が持参金の用意は後回しでいいから、予定通りアマーリアを妻として迎えたい、と言ったそうだ。


「ですので、その、もしかしたらご実家で何か問題があったのでは、と……」


 私と話しているうちに不安になってきたようだ。


「ジーベル家について、調べてみよう」


 これまで黙って話を聞くばかりだったヴィルオルの言葉を聞いたヘラは、ハッと顔を上げる。


「ヘラ、彼は竜騎士隊の隊員なんだ」

「騎士様、だったのですね」

「ああ」


 ヘラは「どうかお願いします」と言い、深々と頭を下げたのだった。

 調査は以上となる。

 ヘラと別れたあと、ヴィルオルは王都に残って調査するという。


「では私は学校に戻って、レポートを書いておこう」

「すまない、助かる」


 ヴィルオルとの外出はここでお開きとなったのだった。

 貴族高等学校の寮に戻ると、フローレスの姿はなかった。

 寝台にカードがあり、〝リリア達と買い物にいってくる〟と書かれてある。

 学校の敷地内にある商業施設にいったのだろう。

 これまでずっと大人しくしていたリーベはバスケットから跳びだし、トランクケースの寝床でごろりと横になる。

 私も疲れたのでお昼寝をしたいところだが、レポートを先に片付けなければ。

 レポートを書き終える頃にフローレスが戻ってきたようだ。


「ユークリッド、帰ってきていたんだ」

「ああ、一時間半ほど前にね」

「思っていたよりも早かったね」

「まあ、そうだな」


 外出時間は六時間ほどだったが、濃密な時間だったように思える。


「フローレスは楽しかったか?」

「当然!」


 雑貨店を見回り、噴水広場でロマンス小説を回し読みしたあと、喫茶店で早めの夕食を食べてきたらしい。 

 なんだか私よりも令嬢ライフを堪能しているようで、フローレスが羨ましく思ってしまった。

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