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男装を強いられ男として生きてきた公爵令嬢は、2回目の人生はドレスを着て、令嬢ライフを謳歌したい  作者: 江本マシメサ
第三章 王都で起こる事件について

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竜大好きクラブの活動

 今日の竜大好きクラブの活動は、学校内の敷地内にある岩場で竜の化石を発掘するという作業だった。


「この貴族高等学校がある場所はかつて、竜峡谷ドラゴン・キャニオンと呼ばれる場所だったらしい」


 竜の群れが平和に暮らす場所だったようだが、ある日やってきた余所の竜の介入による縄張り争いがきっかけで、戦場となってしまった悲しい歴史があるようだ。


「激しい争いは一年間も続き、美しかった峡谷は更地になってしまい……」


 そして、この土地には多くの竜が眠っているという。


「竜の亡骸は大地に豊かな魔力をもたらし、その魔力を使って妖精族が土地を潤し、王族の始祖たる者が国を創ったのだ」

「そんな歴史があったのだな」


 その辺も幼少期に習ったような記憶があるが、半分寝かかっていたのかもしれない。


「父はこの学校に講師としてやってきたさい、竜の爪の化石を発掘したらしい」


 それを見て、ヴィルオルも同じように化石の発掘をしたかったようだが、講師と任務のスケジュールに追われ、なかなか実行できていなかったようだ。


「さらにこの岩場は、一人でやってきてはいけないことになっているんだ。お前が入部してくれたおかげで、今日、念願が叶う」

「それはよかった」


 実に嬉しそうに言ってくれる。

 ヴィルオルが朗らかな表情で私に話しかける日が訪れるなど、夢にも思っていなかった。一度目の人生の死に際に、彼と仲よくなりたいと願ったことは叶ったのかもしれない。


 ヴィルオルは採掘道具を二人分、用意してくれていた。


「これが採集に使う道具だ」


 岩を砕く〝金槌かなづち〟には、威力向上と砕けた欠片を吸収する魔法が付与されていた。岩を細かく砕く〝たがね〟には、粉塵吸収する魔法がかけられえいるという。


「重要なのは、この魔石灯だ」


 細長い棒に魔石が付いたこの道具は、岩に化石があるかどうか調べるものだという。


「岩の中の魔力を感知して、光を当てたときに赤く光るようだ」


 さっそくヴィルオルがやってみせると、何もないところは青く光るばかりだった。

 次々と光を当てていくと、途中で赤く光る岩を発見した。


「これだな」


 細かく光を当てて化石の範囲をおおよそ把握したあと、鏨を岩に当てて金槌で少しずつ打っていく。

 上に下に斜めに、慎重に慎重に岩を砕いていくと、化石がある範囲がポロリと取れた。


「よし!」

「あとはこれをどうするのか?」

「今度は横にして、金槌で直接叩く」


 岩から採る作業は慎重だったのだが、次の工程は豪快に石を金槌でガンガン打ち付ける。

 すると石にヒビが入り、途中でぱっくりと二つに割れた。


「できた!!」


 ヴィルオルは嬉しそうに振り返り、私のほうを向けて石を開いてくれた。

 いったい竜のどの部位が出たのか。わくわくしながら覗き込む。


「んん?」

「これは――」


 石の中に入っていたのは、拳より大きなクッキーみたいな塊である。


「目、ではないような」

「違う。これは……」


 気付いたらしいヴィルオルは、肩を震わせて笑い始めた。


「どうした? 何かわかったのか?」

「ああ! これは竜の糞だ!」

「糞だと!?」


 なんでも竜はころころとした糞をするようで、間違いないとヴィルオルは言う。


「糞まで化石になるのだな」

「ああ、そのようだ」


 なんでも竜は糞にまで豊富な魔力が含まれているようだ。


「竜の糞は高値で売れるらしい」


 肥料として畑に撒いたら、たわわに実る農作物が育つという。


「俺はこんなもののために、一時間半も発掘作業していたというのか」

「いやいや、偉大なる発見だろう」


 この地に竜がいて、暮らしを営んでいたという何よりの証だろう。


「しかし、糞があったということは、他にも化石があるのだろう」


 私も挑戦したいところだったが、日が暮れてくる。

 今日のところは戻ったほうがよさそうだ。


 ヴィルオルとクラブ舎に戻ったあと、レポートを書いて本日の活動は終了となる。

 採れたての竜糞の化石は、クラブ舎の二階に飾られることとなった。


「ゆくゆくは、全身の化石を探して展示したい」

「いいな」


 二階にも本がたくさんあって驚く。その中に、〝秘術・竜魔法〟という題名の本があるのに気付いた。


「どうした?」

「いや、竜魔法という言葉が気になって」

「ああ、言葉の通り、竜族が使う魔法のことだ」


 通常、竜形態のさいはブレス攻撃が主だという。

 けれども人の姿を取っているときは、竜魔法と呼ばれる固有魔法を使うようだ。


「ヴィルオル、君も使えるのか?」

「まあ、ほどほどに」


 ただ、剣で戦ったほうが強いらしく、実戦で使うことはないようだ。


「借りて読んでみるか?」

「いいのか?」

「ああ」


 ヴィルオルが手に取って私に差しだしてくれたが、触れようとした瞬間、バチン! と音を立てて弾かれてしまった。


「なっ――!?」


 もしや、本に拒絶された!?

 確認しようと手を伸ばしたが、ヴィルオルは私が触れられないよう手を引っ込めてしまった。


「もしかしたら、一族の者しか触れることができない本かもしれない」

「その可能性はあるな」

「手は? ケガなどしていないか?」

「ああ、このとおり平気だ」


 もう一度確認してみたいと言ったものの、ヴィルオルから「止めておけ」と言われてしまった。  

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