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男装を強いられ男として生きてきた公爵令嬢は、2回目の人生はドレスを着て、令嬢ライフを謳歌したい  作者: 江本マシメサ
第二章 ヴィルオルとの再会

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図書室にて②

「何を読んでいたのですか?」

「あー、魔物の本、を」

「ご令嬢が魔物に興味を持つなんて珍しいですね」


 邪竜について調べていました! なんて言えるわけがなく。適当に誤魔化しておく。


「いや、父がよく魔物を討伐したと自慢していたものだから、どんなものかと思って調べていてね」

「そうでしたか。たしか父君は、魔法騎士でしたよね?」

「ああ」

「やはりお強いのですか?」

「武闘大会では何回か優勝しているようだが、実戦は見たことがないんだ」

「そうでしたか」


 一回目の人生では、十八歳の頃には父の実力を上回っていて勝つことができた。

 二回目の人生では、ほとんど父と関わっていないので、現在の実力のほどはまったくの不明である。

 弟ディルクに関してはどんどん実力を付け、父といい勝負だと聞いている。きっと大人になる頃には、父よりもずっと強くなるだろう。


「知りたい情報は見つかりましたか?」

「まあ、だいたい」

「もしも詳しく調べたいのであれば、ここよりも中央図書館のほうがいいかもしれません」

「さっき、本の虫妖精も同じことを言っていた」


 コンラートは幼少期から本が友達だったらしく、家にあったものを読み尽くしてからは、各地の図書館から本を借りていたらしい。


「使用人は毎日私の代わりに図書館通いをすることになって」


 ここ一年ほどは、実際に図書館へ足を運べるようになったという。


「おかげさまで、本棚を少し見たら、その図書館のレベルがわかるようになってね」


 貴族高等学校の図書室もざっと見て周り、どれほどのレベルなのか瞬時に見抜いたようだ。


「ここの生徒は基礎的な知識を学びにきているようだから、専門的な本があっても宝の持ち腐れとなると思われます」

「生徒が望むような本が揃えられている、というわけか」

「はい」


 図書室や図書館といっても、さまざまなランクがあることはわかった。


「実はこの本、私も幼少時に読みました。掲載されている魔物と脳内で戦って、英雄になった気分でいたんです」

「奇遇だな。実は私も似たようなことをした覚えがある」


 私の場合は一回目の人生で、父を悪の魔王に仕立てて剣で戦っていたのである。

 父は訓練になると思ったのか、嬉々として付き合ってくれた。

 二回目の人生では幼少期のディルクが父を同じような悪の親玉にし、戦いを挑んでいたのを思い出す。


「父相手に急所に拳を叩き込んで、勝利してしまったんだ。当時の私は四歳……怖い物知らずだった」


 そんな過去の栄光を聞いたコンラートは楽しげな様子で笑い始める。

 出会ってからずっと暗い表情を見せていたのだが、やっと明るい表情を見せてくれた。 

「あなたみたいに話していて楽しい女性は初めてです」

「それは光栄だ」


 ここでふと気付く。コンラートならば邪竜について書かれた本を知っているかもしれない。そう思って聞いてみようとしたのだが――。


「コンラート、少し聞きたいことがあって」

「ほう、それは図書室で話さないといけないものだろうか?」


 背後に気配を感じ、急いで振り返る。

 そこにいたのは眼鏡をかけたヴィルオルだった。


「ヴィルオル、いつの間に!?」

「お前が父君の急所に拳をぶちこんだ話をしていた辺りだ」


 なんでもうるさかったので、注意をしにきたという。

 一応、会話をしてもいいか本の虫妖精に許可を取っていたのだが、それは誰もいない図書室に限定するものだろう。


「すまなかった、すぐに退室しよう」


 これまで眠っていたリーベはヴィルオルの声を聞いて起き上がる。

 野菜スティックでも持ってきたと思ったのか、ヴィルオルに近づいて何かくれと言わんばかりに歯をガチガチ鳴らしていた。


「リーベ、君は昼食を食べただろう?」

「こいつ、俺を食事係だと思っているな」

「すまない。リーベ、帰ろう」


 リーベを抱き上げ、借りていた本を近くにいたトンボの本の虫妖精に託し、コンラートと共に図書室をあとにした。


「すまなかった、私がお喋りなあまり、ヴィルオルに怒られてしまって」

「いえいえ、お気になさらず。それはそうと、さっき何か言いかけていませんでした?」

「あー……」


 誰もいない図書室ならば聞けた話題も、人通りが多い廊下では口にしないほうがいいだろう。


「すまない、忘れてしまった。きっとたいした話題ではなかったのだろう」

「そうでしたか。もしも思い出したら、いつでも聞いてくださいね」

「コンラート、感謝する」


 このあと、コンラートは午後からの授業に備え、自習室で予習をするという。

 生徒の鑑だ、と思ったのだった。


 ◇◇◇


 魔法史の再試験を受けるフローレスを激励したあと、下校するために教室を出た。

 窓から夕陽が差し込み、床を赤く染めている。

 途中、廊下に貼ってあるクラブ活動の勧誘のチラシがある掲示板の前で立ち止まった。

 多くの男性と知り合うためには、クラブに所属したほうがいいのかもしれない。

 園芸クラブに、遊戯盤クラブ、討論クラブにお茶会クラブ――学校内には五十以上のクラブが存在するという。

 その中で、気になるクラブを発見した。

 竜大好きクラブ――ここならば、邪竜の情報を得ることができるのではないか。

 見学大歓迎、とあったので、クラブ舎を見学させてもらうことに決めた。

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