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男装を強いられ男として生きてきた公爵令嬢は、2回目の人生はドレスを着て、令嬢ライフを謳歌したい  作者: 江本マシメサ
第二章 ヴィルオルとの再会

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ディルクの主張

 貴族高等学校は制服はなく、私服で通う。

 お見合いの場である意味合いが強いので、身なりから何から整え、結婚相手として見てもらうのが目的らしい。

 これまで学校といえば制服が基本だったので、少し戸惑いを覚える。

 寮生活は自分自身でなんでもしなければならないので、一人で着ることができるドレスを何着か仕立ててもらう。

 中にはメイドや従僕同伴で寮生活を送る者もいるようだが、私は身の回りのことは自分でできるので断った。


 着実に入学準備を進める中、騎士隊の宿舎暮らしで家にいなかったディルクが帰ってきた。


「姉上! 貴族高等学校に入学されるというのは本当ですか!?」

「ああ、本当だよ」

「そんな!」


 ディルクはずっと私が家にいると思っていたらしい。


「せっかく姉上の結婚話を潰して回っていたのにどうして?」

「ん?」

「あ!」


 ディルクは口を手で押さえるも、すでに遅い。


「私の結婚話を、ディルクが潰していたのか?」

「いや、その、まあ……」

「どうしてそんなことをしたんだ?」

「だって、候補に挙がっていたのがしようもない奴らばかりだったから!」


 なんでも酒癖の悪い者や、賭博癖のある者、浮気癖に遊び癖、性格の悪さなど、ディルクが認められるような男は皆無だったという。


「姉上に苦労してもらいたくなくて、妨害していたんだ」

「どうやって?」


 父親が進めようとしている結婚話を邪魔するなど、ディルクには難しいだろう。父も把握していなかったので、極めて特殊な方法でやったに違いない。


「まさか、拳で物を言わせたのでは?」

「いやいや、ないない、違います!」

「本当に?」

「誓って!」

「だったらなぜ、私から目をそらす? 何かやましいことがあるのだろう?」

「そ、それは……」


 詳しく話を聞いたところ、想定もしていなかった真実が明らかとなった。


「というわけで、姉上がとんでもない女性だと、その、言いふらしました!」

「ディルク……」


 話を聞いているだけで頭が痛くなった。

 なんでもディルクは私がとんでもない乱暴者で、大の男嫌いだと言いふらし、婚約者候補達を怖がらせていたという。


「なんてことをしてくれたのか」

「だって、どいつもこいつも姉上にふさわしくない男ばかりで、このまま結婚したら姉上が嫌な気持ちになることは目に見えていたから!!」


 私を思っていろいろ手を回してくれたのだろう。

 けれども皆、貴族に生まれたからには、ある程度妥協して結婚相手を決めている。

 両親のように政略結婚だが愛し合う夫婦というのは稀なのだろう。


「私は結婚に関して、覚悟は決めていた。性格の不一致も、トラブルも、不貞も、何もかもあるだろうと想定もしていたのだ。私達の両親のように、仲のよい夫婦などほとんどいないだろう」

「そんな……」


 尊重できるような相手との結婚なんて、そもそも望んでいない。

 大事なのは、結婚という実績を積むこと。


「貴族女性として生まれた私には、結婚という義務を果たさなければならない。そもそも結婚に幸せなんて望んでいないから、相手についてあれこれ気に病むことはない」


 きっとディルクが認める結婚相手なんて、この世に存在していないだろう。

 私のために、しなくてもいい苦労と心配をかけてしまった。


「ヴィルオル卿ならば、姉上の結婚相手として相応しいのに」

「ヴィルオル?」


 まさか彼の名前が話題に出るとは思わなかった。


「バーベンベルク公爵子息には、すでに婚約者がいるだろうが」


 一回目の人生のとき、ヴィルオルには婚約者がいた。

 カルーラ・フォン・ギルマン――美しい伯爵令嬢で、ヴィルオルともお似合いだったのを思い出す。


「いない」

「え?」

「婚約破棄になった」

「なぜ?」

「ヴィルオル卿の婚約者だったカルーラ・フォン・ギルマンは、うちの小隊長と結婚したから」

「ディルクの部隊の小隊長というのは、四十でやもめの?」

「はい」


 なんでもカルーラ嬢の初恋相手あったらしい。

 ヴィルオルが後押しする形で恋が成就したようだ。


「だから今、ヴィルオル卿には婚約者がいないんだ。だから、姉上が立候補すれば――」

「無理だ」


 長年、バーベンベルク公爵家とリウドルフィング公爵家が交わることはなかった。

 両家が不仲だったこともあるからだろう。


「父が、バーベンベルク公爵が認めるわけがないだろう」

「ですが」

「この話は終わりだ。私はすでに貴族高等学校への入学が決まっている。結婚相手くらい、自分で見繕ってくるから、ディルクは心配しないでくれ」


 ディルクが認めてくれるような、立派な男性を探してこよう。

 そう言って安心させようとしたのだが――。


「そもそも、そのような立派な男性はすでに婚約者がいるはずです。貴族高等学校に入学しなければならなくなった者など、売れ残りも同然かと」


 ズバズバと胸が苦しくなるようなことを言ってくれる。

 けれどもその言葉にめげている場合ではない。

 真面目に結婚相手を探さなくては。


「宝探しみたいなものだ」

「ゴミ山から、金を探しだすというのですか?」

「そこまでは言っていない」


 とにかく、皆から祝福されるような相手を探さなくては。

 がぜん、やる気が出たのだった。

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