~閑話~ シュナがいなくなったその後で(3)
「二人とも止めないか…」
「そうですよ、喧嘩はよくありません。それに周りをよく見てください。どうやら私達は星読みの一族の方たちを怒らせてしまったようです。困りましたね。争いごとはなるべくなら避けたいのに…」
沈痛な表情の勇者に、聖女はのほほ~んと状況を分析している。
「貴様ら!! 誇り高き我ら一族を散々馬鹿にしおって!! このまま無事に帰れるとはおもうなよ。くくくっ…ここは最北の辺境にある山岳地帯。ここで遭難し死を迎える冒険者はけっして珍しくないからな」
「おや、セリフが三流悪役みたいですよ。え~と、つまりは我々を始末して口封じをするとでも?」
「くくくくっ…そうだ。お前たちはこの村には来なかった。もし、春に帝国からの使者が来た場合そう伝えればいいことだしな」
魔法使いの軽口を、父さんは笑い飛ばしていた。
族長である父さんの判断は正しい。こいつらが下界で要らぬことを話せば、帝国がでてきて面倒なことになるのは目に見えている。
気がつけば父さんの合図で、じりじりと強力な魔法を使える者たちはあいつらを取り囲んでいく…だが突然!?
ヒゥゥビュオオオオオオー
強風が吹いたかと思うと、奴らを取り囲んでいた一族の魔法を使える者たちは無残にも地面に転がっていた。皆、地面に叩きつけられ、苦悶の顔を歪ませ悲鳴を上げている。
「ちっと、やりすぎたか?」
「見たところ…死者は出ていないので大丈夫でしょう。正当防衛ですし、神も快く許してくださいますよ」
大剣を地面に突き刺した戦士に、聖女は涼しい口調で答えていた。
僕はそのとき、剣の風圧だけで一族でも優秀な魔法の使い手たちをなぎ倒したのだと理解する。
魔法使いや聖女、それに魔法が使える勇者の動きには注意を払っていた。けど、魔法の使えない戦士ごときなら接近戦さえ気をつけていれば、大したことはないと思い込んでいた。完全な盲点をつかれたのだ。
「もう一度言う。俺たちが探しているシュナという子はどこにいる?」
勇者の静かな問いかけに、族長である父さんはシュナがいるミケーネ山の洞窟の場所を教えたのだ。
あいつらはそれを聞くと僕たちにはもう用はないとばかりにあっさりと踵を返しミケーネ山の洞窟へと向かっていく。
父さんはあいつらの後ろ姿を見ながら薄っすらと笑みを浮かべていた。僕も内心ほくそ笑む。これで奴らに会うことは二度とないだろう。ミケーネ山は不思議なことに冬至の日だけは晴れ渡っている。けど、冬至を過ぎればすぐに山は猛吹雪になるだろう。あいつらは山で凍死して、二度と僕たちの前に姿は現さないと思っていた。
それなのに、ようやく春が訪れた五の月の下旬ごろ。
顔も見たくないあの勇者一行は、再びこの村を訪れたのだ。
僕は顔を青くして信じられないものを見るような目であいつらを凝視していた。一族にも動揺が広がり、族長である父さんも驚きのあまり固まっていたのだ。




