これからのこと
――ガツガツガツガツ…ポリポリポリ
「そんなに慌てて食べなくても大丈夫なのに…でも、よかった。その木の実、気に入ったみたいだね」
「キャウ!」
灰色のもふもふした子犬は本当に美味しそうに、口いっぱいに木の実を頬張っていた。よほどお腹を空かせていたとみえる。怪我が心配だったが食欲があるのは良いことだ。口の中いっぱいに頬張る姿はリスを連想させ、シュナは思わずほっこりとした気分になる。
――あれからシュナは、子犬を抱えて再び古の神を祀る祭壇の間まで戻ってきていた。
ここに来るまでの間、全ての分かれ道に目印を刻んで歩いていたのが幸いだった。そのお陰で難なく祭壇の間まで戻ることができたのである。
子犬がいた空洞に残る選択肢だが…それはまったく考えてはいなかった。怪我の手当てをするためほんの少しの間休みはしたが、あそこは長くいるところではない。すきま風が入って寒いし岩があるだけだし、少し調べはしたが外に繋がる小さな隙間があるだけでそれ以外に特になにも無かった。
それに一度引き上げたとはいえあの冒険者らしき人達が戻ってくるかもしれない。外は凄い吹雪だし、戻ってくる可能性などほぼないが…なんか落ち着かないし、念のために移動しようと思ったのだ。
それに祭壇の間ならお供え物の食べ物もあるし、工夫次第で道具だって作れるかもしれない。本音を言えば古の神様へ捧げる供物を頂くことに抵抗がないわけではない…。
でも――僕はこれからこの子犬と共に生き残ることを、本気で考えようと思ったのだ。
それにはなんとかこの極寒の冬を乗り越えなければいけない。傷の手当ても大事だが、箱の中に食べ物がどれくらいあるのか確認したかったのだ。石の蓋を開け中を覗くと、大まかに見積もって…ぎりぎり二、三か月分の食糧はあるようだ。
一番多いのは木の実。次に乾燥させた山の果実。後は干し肉が少しだけみたいだ。
でも一番有難かったのは腐敗防止や殺菌作用のある乾燥させた草を下に敷き詰めていたこと。この草は、薬にも食べ物にもなる乾燥させた薬草だ。殺菌作用があるし、怪我の治療にも使えてとてもありがたい。
僕はこれから先のことを一生懸命に考えていたんだけど、でも…育ち盛りであるもふもふの子犬の興味は食べ物だった…。
先ほど僕がポケットから取り出した、数個の木の実がよほど美味しく気に入ったとみえる。
食糧の確認のため箱の中から同じ種類の木の実を取りだすと、それが視界に入った途端、一生懸命にふさふさの尻尾を振って、目を潤ませ僕の顔をじーと見ていたのだ。
結局、そのうるうるとした視線に僕は敗北したのだ。自然な流れとして結局は、その日の眠る前の食事はその木の実になったのである。




