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第71話 子守り役

「──それで、貴方がその……」

「コルネア、です。リグさんからここに行けって言われて……」

「リグ……。ああ、そういうことですか。それならコルネアさん、どうぞこちらに」


 工房でリグと話した後、コルネアは少し開けた原っぱの方に向かわされるとそこにはすでに誰かがいた。

 長身で細い体をしており、少し薄い服に身にまとっているのはエルフのクローディアで、彼女の体に合わせたような長い金髪が太陽の光で煌めいている。

 幸薄そうな雰囲気だったがリグは彼女には既に話を通していると言われており、コルネアは詳細は聞かされないまま彼女の隣を歩いていた。


(この人、何もかもデっ……。いや、やめとこ……)


 自分の小さく引き締まった肉体と彼女のと比べてこのまだと憂鬱になりそうになったのですぐに気持ちを切り替える。

 そんなことよりもコルネアは"ある事"が気になって仕方なかった。原っぱの向こうにいる小さな影、それは近づくにつれて人間の子供たちであると知った。


(ううっ……。多分、間違ってなかったらコレって……)

「リグが言ってました。いつかこれを受けてくれる人を見つけるって。特に今は一人、見なくてはいけない子がいて手が離せなかったんです。本当に助かりました」

(ガ、ガキ共の面倒だ……うわぁ……)


 子供たちの面倒を見てくれると知ったクローディアの笑顔にコルネアの顔は思わず引きつってしまう。

 当然コルネアにこんなことの経験はなく、どちらかといえばコルネアは世話を掛けるほうであった。

 しかし隣にいるクローディアのほんわりとした雰囲気に断ることも出来ず、コルネアはそのまま子供の面倒を見ることになってしまった。


「今はお昼が過ぎているので夕暮れまで見るのをお願いします。それでは私はこれで」


 クローディアは一礼をした後、そのまま自分の家の方に戻ってしまうのを見てコルネアも覚悟を決める。

 どうせ暇を持て余してたんだ。やるならやろう、という気持ちになるとそのまま原っぱで遊ぶ子供たちに向かっていった。


「うわーーーい! ……あれ? なんだ?」

「魔族だ。最近来たっていう」

「うーわ、肌赤っか」


 コルネアを見て遊ぶのをやめてこちらを見ていたのは以前森に迷い込んでしまった悪ガキのエディ、クリス、オッドンの三人組が立っている。

 村は発展する段階でしかも手が足りていない。残った村の大人たちが暇になることはなく彼らを見る人が必要だったのだ。


「こ、こんにちわ」

「……チワ」


 こんにちわ、の挨拶も子供に対して慣れていないコルネアはぶっきらぼうな言い方になってしまい、無意識に強張らせている顔は子供たちを委縮させるには十分であった。

 それにすぐ気が付いたがすでに遅く、彼らとのファーストコンタクトが失敗したことを察したコルネアの心の中は焦りを見せていた。


(や、やべっ、いつもの癖でつい……。ていうか、アタシが子供の世話って……。あのドワーフ絶対向いてなさそうなのを知ってこういうこと言っただろ。アタシじゃなくて他に適任が適任いるだろって)


 そう思っても受けてしまった以上コルネアはやり遂げるしかない。コルネアは彼らと同じ目線になるように膝を折ってしゃがむといつもは低い声を少し声を高めにして話しかけてみた。


「あー……なんだ、お前らいつも何して遊んでたんだ?」

「……え、えっと色々……。今日は俺たちのお宝を見に行こうとしてて……」

「お宝? なんだそれ、どういうのなんだ?」

「えーっと……」

「おい、言うなよ……」

「……アタシはそのお宝を取りに来たんじゃなくてそれを見せてほしいなぁって。近くにあんのか?」

「も、森の方……」

「森か。よっしゃ、一緒に見に行こうぜ」

「えっ……」


 三人組はコルネアの言葉に戸惑いと少しの不信感を抱いていたがお宝というのを言ってしまった以上、もうバレてしまったと観念したのかその場所に向かって彼らの後をついていくことになった。

 木々が生える森の入り口、その少し奥側に向かっていく三人組が迷子にならないように注意をしているとやがてエディが声を出した。


「あれ? ここじゃない」

「え? この木の下じゃないの?」

「その下に埋めたんだけど、あれ~?」


 大きい樹木の下に三人組は根っこの方を見て呟いている。どうやらここがそのお宝の隠し場所らしく彼らの視線を見るに根っこの近くに埋めたのが分かる。

 だがそこを掘り返してもそれは見つからない。やがて彼らが隠したお宝を失くしたことに口論になりそうな雰囲気を察したコルネアは彼らに近寄ると隠した場所に指を示しながら聞いた。


「なぁ。ここにそのお宝っつーのがあるのか?」

「そうだよ。ちゃんとここに隠したのに。もしかしてオッドン、どっかにやったのか?」

「なんでそうなるんだよ。違うって」

「でもお前、アレほしそうにしてたからなぁ。本当は独り占めするつもりだったんだろ?」

「だから違うって!」

「あー待て待て、落ち着けって。とにかくここに埋めたってことは間違いないんだな?」

「そうだよ」

「なるほどね……」


 コルネアは根っこの土を触ると他と比べて柔らかいのを感じると掘り返されていなければここにあるのは間違いないようだった。

 そうと分かれば喧嘩になりそうな三人組を止めつつ、大きい樹木から離れさせるとコルネアは深呼吸をして集中した。


「はぁぁ……、オラッ!」

「うわぁっ!?」


 コルネアの手加減した正拳突きが樹木に当たると大きな音と衝撃を出しながら少し傾いていく。

 すると根っこの部分が地面から露出するとそのお宝は土塗れになってコルネアたちに姿を見せた。


「あ、あった! 根っこに引っかかってる!」

「お宝……これって剣か?」


 それは突き立てられるように樹木の根っこに絡まっている剣であり、取ってみると刃はなまくらであることが分かる。

 どうしてこれが埋めたらこんな感じになっているのかを疑問に思いながらも、コルネアはその剣を軽々と恰好を付けながら振りつつ三人の方に渡した。


「ほらよ。これがお宝なんだろ?」

「そうだよ! よかったーちゃんとあって」

「だから言ったじゃん。ここにちゃんと隠したって」

「……っていうか、こんな剣どこで拾ったんだ」

「リグのおっちゃんのところからだよ。俺たち隠れて持ってきちゃったんだ。それでここに隠した」

「あ~~……そういうことね」


 要はこのなまくらの剣が気になった子供たちが勝手に持って行って遊んでたが、それをどうするか悩んだ結果ここに隠したんだろうと推測できる。

 目をキラキラと輝かせている彼らを見て、コルネアも少し感化されそうになった時、ふと後ろに迫る影に気が付いて振り向くとそこには樹木の体をしている魔族、トレントのトリンが少し悲しそうな顔でコルネアたちを見下ろしていた。


「うおっ、トレントか、びっくりした……」

「お前たち、大きな音聞こえてここに来たら。何してる? 木、痛い言ってる。殴った?」

「あ、いや、そのぉ……」

「ここの木たちトリン世話してたから殴るのよくない。分かる?」

「す、スマセン……」

「もうやらないでね」


 少し傾いてしまった樹木とトリンの言葉に申し訳ない顔で謝るとそのまま何処かへと去っていく。

 お宝が根っこに絡まったのはトレントの能力を影響を受けた結果、成長して根を伸ばしたからだろう。

 少し気が落ち込んだ雰囲気だったがそれを払拭するようにコルネアは三人に声を掛けた。


「まぁ、なんだ。許してくれたし、そんなにしょぼくれんなよ。ともかくさ、それで遊ぶつもりだったんだろ?」

「う、うん……」

「だったらさ、それ持ってアタシの背に乗りなよ。走ってやるからさ」

「え、いいの?」

「ああ、いいぜ。アタシも昔こういうのごっこ遊びやったことあるからな。ほら、剣持って遠慮しないで乗れって」


 剣を持つエディに向かってコルネアは背を向けて乗るように促す。

 エディは恐る恐る彼女の背中に乗るとしっかりと自分の肩を掴んだのを見て思い切りこの周辺を走り回った。

 高い位置で風を切るような感覚にエディは思わず剣を掲げて雄たけびをあげる。それは物語で勇者が馬に乗って凱旋してきたような気分になると他の二人もそれをしたいようにせがんできてコルネアは快く了承した。

 コルネアと子供たち、間にあった見えない壁はすでになくなっておりオーガ族の筋力を使って三人とも背に乗せて走るコルネアたちには笑顔があった。

 ──そして勢い余って森の外まで走り、盗られたなまくらの剣がリグにバレて彼らが怒られるのはまた別のお話。

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