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第66話 己の心に決着を──①

「えーっと、この辺に出てくる巨大サソリの殻と肉、そのエキス。大鷹の翼に掘れた鉱物と骨……まぁまぁじゃないですか? やっぱりあっちじゃ珍しいモンばっかでさぁ」

「こっちは薬が無くてな。いくらオーガ族の体が丈夫とはいえ、結局病や強い毒には叶わん」

「それじゃあそれと香料とかどうですかい? リラックスできるやつとか。今ここにいる人たちに評判いいと思いますが……まぁまた来ますぜ。それ以外も品持ってくるんで。きっと気に入りますぜ」

「それは楽しみだな」


 バドと他のオーガ族に囲まれながらキッカは忙しそうにサンプルとして持ってきた品の一部を見せつつ、手に持った羊皮紙とペンでメモを取っていく。

 商人としての手ごたえを感じているキッカの顔はとても嬉しそうな表情をしており、遠目で見ていたラギナも彼は根っからの商売人ということを改めて感じていた。


「なぁバド、ちょっといいか?」

「あん? まだ何かあるのか?」

「コルネアのことだ。あれからここに戻ってきてないのか?」

「つい最近だな。すぐにどっか行っちまったが。何か焦ってる感じだったぞ」

「何処に向かったかわかるか?」

「さぁそこまでは……」

「わかった。ありがとう。キッカ、そろそろ出るぞ」

「あいよ!」


 オーガ族と交換した品をそそくさと袋に詰めると、それを背負ってラギナの背中に乗る。

 普段自分よりも背が高い彼らが今の状態だと誰よりも高い位置で見下ろせることに優越感を感じているようだった。


「それじゃあ、また来ますぜ! そんときは頼みますよ~!」


 キッカは後ろを振り向きながら手を振って彼らと別れの挨拶を済ませると門の外へと二人は出る。

 ほくほく顔のキッカを他所にラギナは静かに膝を折って地面に指を触れた。


「それじゃあ帰りましょうぜ。いい成果を言えそうだ」

「いや、まだだ。やることが残っている」

「え? こんなところにまだなんかありましたっけ?」

「コルネアのことだ。今から彼女を探しにいく」

「はぁ?」


 ラギナの言葉にキッカは信じられないような表情を彼の真横まで見せてそれを主張する。

 だがそんな彼の様子にも臆することなく、彼女が残した僅かな痕跡を見つけようとしていた。


「ちょっと待ってくださいよ。なんであっしらがそいつを探しに行かなきゃならんのですか!?」

「これは俺個人の問題だ。だからお前は先に帰っていいぞ。あの通路を使うのは……まぁ何かあったら俺が口をきいてやる」

「いやいやいや、こっから徒歩で!? あっしを置き去りにするなんて正気ですかい!?」

「お前はこういうのに慣れてるだろ。戻れるなら時間は掛かってもいい。それにいつまで俺を乗り物扱いしてるんだ。そろそろお前の足で歩け」

「いやまぁ確かにそうですけどぉ……。というかそいつが何処にいるかっていうツテはあるんですかい?」

「憶測だが絞ることは出来る。前に出会った場所、つまり人間側に近い中央には多分いかない。そういう約束したからな。それに一番近いのは鉱山脈のところだが、そこはドワーフがいるらしい。わざわざそんな場所に行ってトラブルを起こすとは思えん。つまり──」


 ラギナは立ち上がり、谷になっている下を覗いた先には渓流になっており、そしてそれが向かっている方向に顔をゆっくりと動かした。


「行くなら森の方だ。この先に続いているところだな。それならここからあまり遠くはない」

「……でもそれ、予想でしょう?」

「そうだ」

「はぁ~~~……まぁいいでしょう。こうなった以上、旦那についていきますぜ。ちなみにそいつに会う理由ってなんですかい?」

「彼女は前に戦った時、俺が本気じゃなかったせいで燻っている。あの時は気が付かなかったがリンゼルにそれを指摘されてな。まぁ勝手なんだが俺の気持ちの整理をつけるためでもある」

「……え? そんなことの為に?」

「悪いか?」

「なんていうかそのぉ……。へへっ、あっしにはよくわかりませんや、そういうの」

「わかったならさっさと行くからな」

「うわわっ!? 勝手に走らないでくださいよ! お、落ちる~~!!」


 ラギナの急発進に背中に乗っているキッカは振り落とされそうになりながらもオーガ族の里を後にしていく。

 向かう場所は渓流の先にある森。オーガ族がよく森に入る場所として使われているが今の森は虫たちの争いによって治安が悪い。

 そんな場所を敢えて修行の場所に選べば、彼らの争いに巻き込まれる可能性がある。

 ラギナは急いでコルネアがいるであろう場所に向かっていった。



 ──渓流から川に変わり、その周辺が森になっているその中にコルネアは焚火の前に座っており、そこでいくつもの草と粘土を固めたものを作っていく。

 ビスケットほどの大きさに固めたそれを見て、出来上がったことに頷くとコルネアは立ち上がりながら体を伸ばしていた。


「う~~~~ん。ふぅ、出来たぞ。よし、さっさとやるか」


 コルネアは出来たそれを焚火に放り投げると、黒い煙を立ち上げながら燃えるそれはすぐに効果が表れてくる。

 黒い煙は独特の匂いになっており、鼻を嗅いでそれが効いていることを知ると気合を入れていった。

 燃やしたそれはモンスターを興奮させる作用があり、おびき寄せる為のモノであった。

 主に狩りなどに使う誘導目的のモノだがこれを敢えて自分のいる位置で焚いたのだ。


「さ~て、どっからでも来い!」


 山脈の時にも使ったこれは量を多めにしていおり、焚火の中から漂う黒い煙が段々とその量を増してくる。

 風は無いが、それでもこの周辺にこの匂いが時間と共に広がっているというのを空気が変わっていくのを感じてそれを知る。

 やがて獣道の中から腐った肉塊に黄色い花弁に黒い斑点が浮かんでいる花がびっしりと生えたモンスターたちがコルネアの前に現れた。

 恐らくこの森にも戦乱の影響で発現したモンスターなのだろう。寄生先として媒介にしているそれはその被害者であり、今はこの花に操られている哀れな死体だった。


「ネクロフラワー? な~んだ、こいつらかよ」


 軽口を叩くコルネアを他所にネクロフラワーは口の部分が開くと内部に蓄えていた花粉を吐いてくる。

 空気の色が変わるほどの量はそれは触れた肌に違和感を感じさせるとそこから発疹が発症し、不快な痒みと痛みが肌の下から感じてくる。

 汚染された花粉は生物にとって毒であり、触れてしまった箇所は薬水などで洗い流すなどして対処しなければ命を奪ってしまうだろう。

 だがこれはあくまで耐性のない生物、例えば脆弱な人間などを基準にしたものである。

 しかし相手はオーガ族、元々頑丈な体の中にある強い生命力はこの程度の毒などただ痒い程度のものであった。


「おりゃあ!!」


 握りこぶしを作り、一気に接近して叩き込む。

 ネクロフラワーの体が貫通し、穴になったそこから血肉が噴きかかってもコルネアには関係はない。

 むしろ複数現れたこのモンスターたちに対してどれくらいの速さで倒せるか試すほど彼女には余裕があった。


「まだだ……。もっと、もっと速く! そして強く!」


 胴体を貫く正拳突きや首を跳ね飛ばす回し蹴り、そして欠損させたそれらを一つの箇所に纏めると思い切りぶん殴る。

 もはや欠損しているネクロフラワーたちは満足に動くことすらできず、コルネアの生命力を込めた一撃によって完全にバラバラになると肉片が周囲に飛び散っていった。

 誘き寄せたモンスターを一掃したがコルネアの目は未だに鋭い。すでに倒したモンスターには目もくれておらず、その先にはラギナが見えていた。

 戦っている最中でも彼の影がどうしてもチラついてしまう。そのイラつきをこれにぶつけても心は未だに燻っていることにコルネアは大きくため息を吐いたのだった。

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