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第62話 犯人は現場に来るもの

 リンゼルの聖剣技はストーントータスの甲羅ごと胴体を貫いたことでその四肢は力尽きるように崩れ落ちていく。

 目は光を失い、口から舌をだらりと垂れた表情は完全に息の根が止まったことを知ったラギナはそのまま上を見上げると彼女が空を背にしてこちらを見ていた。


「完全に仕留めたぞ。やったな」

「──んっ」


 下にいるラギナに向かってガッツポーズをするように空いている片腕を構えて答える。

 突き刺した長剣を引き抜いて軽快にストーントータスから降りるとその亡骸を見つつラギナに近寄った。


「陽動してくれてありがとう。ラギナが動きを止めてくれなかったらしっかりと狙えなかった」

「これぐらい問題ない。気にするな」

「ふぅ……。ともかく、これでここら辺を騒がせていたモンスターはこれでなんとかなったね」

「今回ので落ち着くといいがな。しかし……こんなのがここまで来るなんてな……」

「何か気になるの?」

「以前も似たようなことあってな。その時もそこでは見ない大型のモンスターを見たんだ。大型は謂わばそこの主だ。そんな奴が自分の生息域を出るなんて考えられん。つまりは()()()()()()()()()()に違いない」

「なるほど、やっぱりそうなのか……。でもあっち側は今の私たちでも簡単に踏み入れない。根本的な問題解決はまだまだ先になりそうだな……」

「俺一人だと流石に時間が掛かるからな。何、焦る必要は──」

「あああーっ!!」


 二人の会話を遮るような叫び声に思わずビクりと体が反応してしまい、そのまま声の方向に顔を向けると凹んだ地帯の上からこちらを覗き込む一人の女性が見え、彼女はこちらに向かって指をさしているようだった。

 短パンにチューブトップという露出の多い服装から見える肌は赤みがかっており、それが魔族であるということをすぐに分かる。

 毛先が跳ねているショートカットの髪型はオレンジ色を中心に黒色のメッシュがアクセントになっている。

 そんな髪の毛の中には額から短い角が先を見せており、それがオーガ族の者であると二人は理解した。


「こんなところにいたのかよぉ、コイツーっ!」

「オーガ族? こんなところに何故……」

「ううん? ウルキアと人間がなんでいるんだ? まっ、いいか、お前らそこ動くなよー!」

「な、なに? 彼女は何を言ってるんだ?」


 二人は動くなと言われたのを素直に聞いてその場に立ち止まっているとオーガ族はこちらの方に地面をうまく滑って下りながら向かってくる。

 二人の近くまで寄ってきた彼女はリンゼルとほぼ同じの身長であるが、泣きホクロのあるその顔は何処か娘のような幼さがあった。


「ふぅ~……。それで、お前らがコイツをやったのか?」

「……そうだが?」

「ふ~ん? ウルキア族が人間と組んでか?」

「何か悪いのか? コイツはこの一帯を暴れていたんだ。だから俺らはコイツを討伐しただけだ」

「あー……なるほどね……。まぁちょっとこっちが遅かったってことか……」

「遅かった?」

「ああ。アタシ、コイツを仕留め損ねたんだよ。頑張って追ってたんだけどコイツ、デカすぎるだろ? 中々追いつかなくて結局見失ってずっと探してたんだよ。まさかこんな所まで来てたなんてなぁ」

「ラギナ、多分だが……」

「ああ……分かってる」


 リンゼルの僅かな言葉と目の合図でラギナも察する。

 恐らくこのオーガ族が暴れた原因でこのストーントータスがここに来たのだろうと。

 亡骸になった顔を手で叩きながらそれを見るオーガ族の体つきはよく見るとしっかりとした筋肉が見える。

 仕留めたきっかけの甲羅にあった癒えてない傷は彼女のモノだというのが自身たっぷりな様子もあって嘘ではないことを感じさせるには十分だった。


「これは本当ならアタシの獲物だったんだがなぁ~」

「一つ聞いていいか?」

「ん? 何?」

「もしかしてだが、あっち側でこういうことをしていたのか?」

「そうだよ。強くなるためにね。自分で言うのもアレだけど大分暴れたね。うん、うん」

「そ、それは困る。多分そのせいでこういうモンスターが住処を追われてこっちまで被害が出ているんだ」

「──……あっ?」


 ラギナと話していた時とは打って変わり、リンゼルの言葉にオーガ族の娘は低い声と共に目を細めて睨みつける。

 明らかに敵意を向けたことを見てラギナも何かが起こる前に彼女を庇うように少しだけ身を乗り出した。


「別にそっちで問題起こってもアタシには関係ないし。確かにコイツを仕留め損ねたのはアタシが悪いけど、だからって人間の方で起きた問題に魔族のアタシが何かしないといけないの?」

「それでもこっちで暮らす者たちは困っていたんだ。皆、貴方のようには強くはない。だから……」

「えっ、何? もしかしてアタシのこの感覚っておかしな感じなの? じゃあ言わせてもらうけど、こっちから見たらアンタたちの方がおかしいけど? てかさ、なんでそんなに魔族と仲良くしてんの?」

「それは色々あって……」

「まぁいいや。本当は獲物取られて少しイラったけど、それはもうどうでもよくなった。なぁ?」

「……俺か?」


 睨みつけていた顔はラギナに向けられると打って変わって少しあどけない表情になる。

 リンゼルとは明らかに態度の違う様子を見ていると、彼女の握りこぶしがラギナの胸にトンと軽く叩かれて見上げた。


「ウルキア族でその白毛。これってつまり、アンタってラギナでしょ?」

「……そうだが?」

「やっぱりね。まさか四英雄の一人がこんな場所で会えるなんて思っても見なかったよ」

「何が言いたい? 俺に用でもあるのか?」

「ある。アタシと戦ってほしい」


 見上げる彼女の煌めく目の中に闘志が沸き起こっているのを見てラギナは深いため息をする。

 胸に当てられたこぶしを優しく握り、そしてゆっくりと離すと隣にいたリンゼルが慌てた顔で口を動かした。


「ラギナ、彼女に構うことはない。戦う理由なんてないはずだ」

「ああ? なんだお前、こっちは獲物を取られて苛ついてんだ。本当ならこの火照りをその貧弱な体で解消させてもらおうと思ったのにさ。でもここにそれ以上のヤツがいたなら、このチャンスを逃す奴なんて魔族なら一人もいないよ」

「…………」

「アタシはね、強くなる為に里を離れて修行してるんだ。この気持ち、魔族の性が分かるお前になら分かるだろ?」

「……確かに、理解はできる。いいだろう、相手してやる」

「ラギナ!?」

「ホントか! よっしゃっ!」

「ただし、相手をするのは俺だ。この人間には手を出すな。それと俺が勝ったらこの周辺で暴れるのはやめてもらう。いいな?」

「分かった。くぅ~楽しみだなぁ~」

「……いいのか? わざわざ相手にする必要なんてないんだ」

「いや、恐らくあの子は納得すればそれで大人しくなると見た。わざわざ声を掛けてきたのがそれだ。それにあの子も何か事情があるっぽい」

「それなら猶更話し合えば……」

「俺たちのこういう部分はどうにも出来ん時があって、ここで断ったら変に燻ぶらせるだけだ。そういう時は戦うことも必要だ。それで何かが通じることもある」

「……わかった。貴方を信じる。でも無茶しないで」

「ありがとう」

「なぁなぁ、そっちの話は終わった? こっちはもう始めたいんだけど?」


 オーガ族の娘はすでに戦いの体勢を整えており、うずうずとした様子は待ちきれないようでもあった。

 彼女の催促を聞いてリンゼルは巻き込まれないよう離れた位置に移動するのを見てラギナも戦いの体勢になって相手を睨む。

 お互いから醸し出す殺意はリンゼルの視点から見て駄々洩れであり、その異様さは人間同士の戦いとは違うことに思わず身震いをした。


「言っておくがこれは殺し合いじゃないぞ。それでも大ケガは覚悟してもらうが」

「分かってるって。でもそのつもりで本気で行かせてもらうから」

「……ホントに分かってるのか?」

「ラギナ、アンタを負かしてアタシは更に上を行く。オーガ族のコルネアの名を知らしめるためにね!!」

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