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八。異常行動

「それで。俺達はどれを殺せばいいんだ?いっそ喧嘩両成敗ってのでもいいが」


乗り込んできた奴らの推定リーダーがそう言った。横槍が入るなんて思ってもいなかった。ここ現実へ滲み出した夢の爆心地だ。この城の周りには、【私】以外へ襲いかかる兵士達がいたはずだ。元の国の全軍、数にして20万程度の護衛団がいたはず。突破してきたのか。いやあり得ない。あるいは、ワープでもしてきたのだろうか。城の前に?


突破できないように門は切り崩した。人が入っても死ぬように、逃げられないように火も放った。何故ここに入ってこれる。全力疾走したところで、一酸化炭素中毒で死ぬはずだ。私が眠っている間に技術はそこまで進歩したのか。確かに現代技術の片鱗は垣間見たが、まさかここまでとは。


観測する。夢なら、現実ではありえなこともできる。なるほど、それでか。私も馬鹿だな。一番わかりやすく、一番納得できない方法があった。前提条件がそもそも間違っていたのだから、見誤った事の馬鹿馬鹿しさに自己嫌悪。

自我が強ければ、ここではなんだろうとできる。それを忘れていただなんて。馬鹿すぎる。


自己暗示。たったそれだけで、ここでは何でもできる。そう望め。なんでもできると望め。たとえ、それが現実にありえないものだとしても。ここは夢なんだから、どんな夢物語だろうが叶う。どんな我儘だって叶う。ただ叶うと望めばいいだけだった。


精神をすり減らせば、不条理に改変ができる。まるで、夢のように。


「私の傷は、治る。はあ、こんな基礎的な事を忘れていたなんて―――クソ。」

「朦朧としていたな?夢うつつか。夢の内でもその区別がついてなかったとはね」

「俺たちはそっちのけってか?」

「というか、アタイらに気づいてねぇな?」


聞こえているが無視する。状況なんてのはどうでもいい。私は私と決着をつけれればそれでいいんだ。自分勝手がなんだ、夢なら自分勝手な奴の荒唐無稽な望みの方が叶うんだから、私は我儘で駄々を言うぞ。


「邪魔するんじゃないぞ!!!これは!私だけが壇上に上がっていいんだ!」

「なんだコイツ!自分勝手な奴だな!」

「大声を上げるな無礼者が!鬱陶しい、早々と失せよ!」


(~~~~~)


いつも通り、騒がしく修羅場に入場する。荒々しく、統一性がない。まあ、個性的といえば良い点だが、蛮族と言われればそれまでだ。だから、蛮族らしい提案をする。


「それで。俺達はどれを殺せばいいんだ?いっそ喧嘩両成敗ってのでもいいが」


さて。わけがわからない状況なのは良く分かった。二人同じ顔の女が居やがる。ドッペルゲンガーとか言うやつか?どちらにしろ面倒な事だ。そのうえ、泥と灰にまみれた方は話が通じなさそう形相をしている。玉座の方にいるいかにも貴族だか皇族だか言う見た目の奴は人を寄りつけぬ威圧感がある。


どっちの奴とも戦いたくねぇ。ただでさえ、隣の王族を誘拐しろって面倒な依頼を受けたんだ。ついでに歴史的建造物が燃えて面倒だってのに。どうやれば解決するのか見当もつかない。


異夢みたいに、本来あるべき状況にないなら、其の原因を取り除けば戻る。だが、今の状況は初見だ。原因を断つといっても、どれが現況なのかすら検討もつかない。私が知らないって事は、どこだろうと把握していない異常事態ってことだ。


「私の傷は、治る。はあ、こんな基礎的な事を忘れていたなんて―――クソ。」

「朦朧としていたな?夢うつつか。夢の内でもその区別がついてなかったとはね」


同じ見た目の癖して、話し方とか雰囲気とか違いすぎる。どうやら、俺たちとはまだ敵対はしていない。


「俺たちはそっちのけってか?」

「というか、アタイらに気づいてねぇな?」


それなら好都合。トレナとボンプへ目くばせをし、三秒後に突入を確認しあう。


3。


2。


1。


今だ。トレナがグレネードを偉そうにしてる方へ投げ、爆発。煙が正面へ充満する。煙の内にボンプが飛び込み、その煙を纏い武器と服へ変化させる。煙は未だ残っている。それを煙幕として、俺は手前の傷ついている方へとか駆け出す。


「邪魔するんじゃないぞ!!!これは!私だけが壇上に上がっていいんだ!」


レッドカーペットの中央に立つボロボロの女は、爆発を直に受けたらしい。傷だらけだが、それがどうも美しい。どうやら戦いを邪魔されたくないらしい。俺たちはお前も、お前と同じ顔をした奥の野郎もぶっ飛ばしに来てるんだ。ダメージを受けたらしいのは好都合。


「なんだコイツ!自分勝手な奴だな!」

「大声を上げるな無礼者が!鬱陶しい、早々と失せよ!」


奥の野郎も手前の奴と同意見だそうだ。お前ら敵対してたはずだろう。その同じ顔をした両名が俺たちへと向かってくる。奥の奴が早い。奥の奴の風貌がいかにも王のような服へと変化する。宝剣とも言えそうなギラギラと輝く古風な片手剣を持ち豪速で突っ込んでくる。


ボンプがその剣を受け、俺達をかばうように、俺達が壊してきた壁を通り、その先、直線状の壁を壊し、城外へと飛び出す。その衝撃で、今いる謁見の間へと風が吹く。


「アンタ!」


トレナが恐怖と心配で絶叫し、ボンプを追いかける。俺も青ざめる。今この場で戦えるヤツがそっちに行ってどうする。お熱い事で、心底うらやましいね。それはそれとして。

クソ。想定外だ。城外には戦闘不能状態の奴らを退避させてある。きっとまだ現実へ逃げれていないだろう。一応突入前に呼んでおいた研究所の職員もそろそろ到着するころだろう。ああもう、研究所の学者どもは戦えないんだぞ。


「お前な・・・!面倒な事スンじゃねぇよ!」

「邪魔して面倒なのはお前だ乱入者が!」


ちょっとデカいナイフを構え、乱暴に突っ込んでくる。感情に任せた、とても殺意の籠った一撃。直線的過ぎて幼児でも冷静になれば躱せそうなほどだ。さっき突き抜けていった王様みたいなのに勝てるはずもない。


「ああああああああああ!!」

「さては弱いな?お前」


これだけ言っておこう。当たり前だが、俺には子供を切る趣味はない。今いるこの城とこの状況は、見知らぬ異常事態だからマニュアルなんてない。想定以上に弱い。ありえない事が起これば人は動揺するものだが、それを夢だからで済ますには人の精神はあまりに脆弱だ。


俺は向かってくるそれをとりあえず敵と認識する。俺は蛮刀を取り出し、構える。構えといえど、滅茶苦茶なもので、もし型に厳しいの師範代などが見れば卒倒するような、盗賊のような構えだ。


俺は向かってくるナイフを下へ弾き、姿勢を崩した敵へ蛮刀を打ち据える。背中への打撃でショックを受けたのだろう、敵は倒れうごかなくなった。


「これで終われば話は早いんだがな?俺は早く外に出ないといけないんだけど。」


ひゅうひゅうと、か細い呼吸の内からぎりぎり聞こえる声がする。


「あ・・・れは、私が・・・殺すんだ。邪魔・・・するんじゃな・・・い。」

「実力不足だ。俺にも勝てないようじゃね。協力しても良いってんなら、アレの止めはお前にやるよ。」

「交渉、せ・・・成立だ」


傷が治るように想像したんだろう。王と戦って受けたであろう傷も治っていく。だが、リアリストなんだろう。傷の治りが遅い。少しずつ回復して、動けるようになったころ。俺達は外へ向けて移動する。


(※)


この城、縦にも横にも大きすぎるんだよ。壁をぶち抜いて落ちてもいいが、壊した壁の先に火がある。そのせいでどうにも使えない通路が多すぎる。移動中に空いた時間を消費をしながら自己紹介。


「私はエルナート。ただのエルナートで良い。」

「俺はアーテレイア・デーアリム。クソッタレの燃涙だ。」

「・・・ボムティアの生き残りか。」

「物騒な奴らが居たもんだな。そもそも遺伝じゃねぇらしいが」

「いや、体質だろう。そういう種族だったはずだ。それよりも、あれの止めを譲るってのは本当だろうな。」


取引の確認。止めを譲るというだけの取引だが、悪くはないだろう。こういう異常現象は、現実の歴史で起こったことの再現が行われることがほとんどだ。そして解決するには劇のように、歴史を再現する必要がある。ミスれば、全員現実へ吹き飛ばされて最初からだ。死なないだけマシだな。だから、今の状況も手順があるはずだ。というのが夢に最も詳しい研究者たちの結論。故に、俺もそれになぞらえて行動する。


「それは本当だ。俺達も何がなんだかわからねえんだ。アレはなんだ?知ってることがあれば教えろ。」

「アレは皇帝デュルアだ。あれは人の体を奪ってまた戦争でも始める気なんだ。」


これはイベントじゃない。今実時間で起こっている出来事だ。実際に、本物の皇帝が動いている。


目覚めないって話じゃなかったか。あのバカ研究員共、想定を外しすぎなんだよ。夢の事を専門に研究するとか言っておきながら、突き止められたのは何もないじゃないか。どうして夢ができたとか、どうして夢の近くで技術発展が起こるんだとか、全く持って解明できてない無能集団が。


「面倒な事だな、本当に!ここを作った奴だろ?殺したらここは消失するんじゃないか?」

「ここはあれの夢からできた終わらない戦場の箱庭だ。だけど、外部から人が入ってきて内部の情報は多くの人が持っている。一度でもここに入ったことのある人間が全員死なない限りここは消えない。」


「つまり?」

「アレが死んだら、集団認識を基にする空間に代わる・・・はずだ。」


憶測ね。コイツは渦中に居ながらもその全体を把握していないわけだ。本当に面倒だ。誰も状況を理解していないままじゃないか。最悪だ。でも、とりあえず戦うしかないらしい。そういうことであれば、後のことはお偉い人に任せて暴れた方が気も晴れて得だな。


「じゃ、ぶちのめしに行くか」



「首は私がもらうからな」

「くどい。わかってるって」


(~~~~~)


「大声を上げるな無礼者が!鬱陶しい、早々と失せよ!」


俺に向かってくるのは奥の奴。俺だって、煙を鎧や武器にして体に纏える。見た目が変わったが、そういうことは慣れっこなんだ。俺と同様に、見た目のような機能を持つ服をどうにかして作ったのだと考えた。少し強化される程度だと思った。踏み込みを見た瞬間、俺は既に防御を固めた。普通に受け止められると思った。振り下ろされた剣を腕で受け止める。


「クッ!」


息をこぼす。その攻撃は以外にも重かった。受け止めた衝撃で俺の体は浮きあがり、煙のように勢いに任せ飛ぶ。ダメージはないが、衝撃は全く予想外の強さだった。


「アンタ!」


トレナのその声を最後に聞いた。そのまま、俺は勢いのまま部屋を突き破り、壁を貫いてゆく。


「へ、へえ・・・?見た目に寄らず力あるんだな?」

「ガタイが良いだけの愚図愚鈍がぬかす。ここは私の夢だぞ?」


確かに俺の頭が悪いのは認めよう。俺はお偉いさんのお抱えみたいなものだが、腹芸などできないし、政略とか面倒だ。力だけを使って持ってなんでもやる。最終的に面倒な事は上司へ丸投げしている。だが、バカなわけではない。この夢という場所がどのようにできたかくらいは知っている。研究者たちは、世界戦争時代の皇帝デュルアがここを作ったとした。一般には公表されていない情報だが、我々は一般人が思ってるより夢に対して情報を持っている。一般人の知る夢の知識は十年は昔の物だ。


「皇帝デュルア!?」


気が付けば、俺と相手は城の外まで飛んでいた。俺は煙を纏った腕で受け止めた剣を弾き、皇帝デュルアから空中で距離を取る。その瞬間周りを見渡す。今俺は俺達が入ってきた正門らしき物の上空にいる。地面を見れば、先ほど逃がした怪我人、門の前にるバックアップ員。そして後から合流したであろう白衣の集団。ここには非戦闘員しかいない。


「そうとも。私がお前たちのいう、世界最大の汚点。戦皇帝デュルア=ヴィルヘルム・ホーエンツォ・エルナートだ。最も、デュルア=ヴィルヘルム・ホーエンツォと呼んでほしいが。もう一人の私の方はエルナートと呼んであげてほしい。まあ、どうせお前は死ぬのだし覚えなくてもいい。」

「へえ・・・?おしゃべりな事だッな!」



纏った煙を一方向へ噴射しデュルアの視界を塞ぐと同時に、噴射の反動で城と正門を重なるように見た場合の左側へと飛んで行く。また距離を取り地面へも煙を噴射して安全に着地する。


「これで一矢報いたかね?」

「煙幕程度でか?笑わせるな」


俺の腕の周で固めた煙や、纏った煙を使い切った。俺の姿はロングコートに戻る。


「特異な能力だな。火ではなく煙を操るのだな。」

「東ん方だと、火のない所に煙は立たぬって言うらしいぜ?」


俺は煙草を取り出し、身体から発した火花で火をつける。それを一度吸い込む。そして、煙草と灰を地面へと落とす。タバコは俺を囲むように円形の火を噴き、煙も同様に噴き出す。俺はそれを服の形に纏う。元の服の上に煙が滞留し、輪郭がおぼろげになる。


「ここからがラウンド1だ。先手は譲ってやったんだ、次は俺が殴る番だ!」

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