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三。変わり

その剣が振り下ろされる時。僕は恐れを感じなかった。

ただ、目を見開いた。無意識に剣をナイフで受け、相手の剣を巻いて弾き飛ばし、鎧の隙間から首を切った。手応えはなかった。敗残兵の泣き別れした首と体は溶けて地面に染み込んでいった。とても赤かった。

レニは今に飛び出しそうな構えのままで止まっている。ヴィレはトリガーに指をかけ今にハンマーを落とそうとしている。唖然としているようだ。


「今、何が。あれ。今、僕はどうやった?」


気がつけば体が動いていた。不思議なことに、僕の意思に関係なく動いたように思う。初めての体験だった。体が勝手に動いて行く。スルスルと、敵の間を駆け抜け、適格に急所を刺して征く。やはり手応えがなく物足りない。見た目との違いがより一層違和感を掻き立てる。残り21体だ。


「おま、お前。全然戦えるじゃないか。一体でも倒せれば十分だったんだが」

「心配する必要なかったですね。焦りすぎたみたいです」


ヴィレが銃を構え、レニが今にも飛び出しそうな姿勢で止まり、呆気にとられている。僕が戦えている事に驚いている。そしてすぐ、ヴィレが二発発砲してボロボロの頭を吹き飛ばす。どちらも貫通しており、鎧ごと溶けてなくなった。踏み込んだレニが一体殴り飛ばし三体巻き込んで溶けていった。残り15体。


「ヴィレ!レ二!あの、こいつらなんなんだ!」


僕はそういいながら、無様な敗残兵どもを、全くといっていいほどに動かない的たちを、サクサクと切り裂いていく、ちょっと物足りない。残りは12体。所詮は無惨にも自らの目的を果たせず逃げ帰ってきた無様な者たちだ。僕は記憶をどうしたら取り戻せるかを常日頃、と言っても2週間ほどだが、ずっと考えていた。本懐を果たそうとする僕が、果たせなかった者共に負けるはずがない。自然にそう思った。


「ここは人の感情が歪んだ世界なんです!危険すぎて普通は人間が行くような場所ではないのですよ!」

「元は人だ。過去ここで死んだヤツらの成れの果て。そんで長時間居ると精神と人間性がおかしくなるな

な。」

「じゃあなんて僕を連れてきたんですか!?」


ヴィレが4発発砲、全て頭を吹き飛ばした。ヴィレはリロードを開始する。残り8体。レニが兵を両手に一体づつ掴んで振り回し、それぞれぶつける。残り4体。僕も一体切りつけた。残り3体だ。皆、粛々と敵を処理していく。


「ここは夢ってよばれてる。リヒ眠らせてくれたろ?」

「帰ったらもっとちゃんとした説明してくれるんだろうね!?」


残りの三体がリロード中のヴィレへ向かっていく。ヴィレは溜息を付き、手を向かってきた敵へ伸ばし、手首から何かが発射された。一体の頭に細い風穴が空いた。僕が一体切り、レニが一体殴った。


「もちろん。時間があればだけど」


鎧は全て溶けて消えていった。僕はヴィレ達の方へと歩く。ナイフへ変えるときに引き抜き、戦闘中指にかけていたピンをナイフの柄についた穴へと戻すと、小さな箱へと戻った。その箱をポケットへ入れる。ヴィレが言う。


「デルン。全然戦えるんじゃないか。驚いたぞ。」

「僕も何がなんだかわからないんだ。体は勝手に動くし、なんだか考え方も変わった気がして。」

「そういうのは気にしたら負けだな。そういう事はよくある。自分を失った奴なら、なおさらだろ」


そういうものか。腑に落ちないが、ひとまず納得しておこう。少しづつ考えていけば良い。僕に常識が無いというのはくどい。また、教えてもらおう。


「肝心の依頼の進捗が全く進んでませんよ!早く配置につかないといけませんからね!」

「そうだった。ちょっと新人研修に時間をかけすぎたかな?ははは!さっさと行こう、走ろうか」

「新人研修は先に済ませてくれれば、僕も苦労しないし時間も減らないんですよ。僕もう疲れてるんですよ。」


急に息が切れる。ゾーンの類だったのだろうか、集中していた分の疲れがどっと体に押し込まれて、潰れてしまいそうだ。なんて。


「なら置いていって良いか?」

「もちろん駄目に決まってるでしょう!」


僕は疲れた体にムチを打ち、着いていく。でもこの疲れは今すぐに倒れるってほどではないので、少し大げさだったかもしれない。弱音を吐いても変わることは無いんだ。


(※)


「それで、僕たちはどうすれば良いんですか?」

「戦争かな。」

「戦争って・・・もうずっと起きてないと聞いたけど。最後のは1700年も前なんだろ?」

「そうだ。ここも、1700年前にできたんだよ。その戦争の残滓が多く残ってしまってるんだ」


慰霊碑みたいなものでもあるのだろうか。それとも、元戦場の朽ち果てた地でもあるのか。これはないか。1700年前の焼け野原が残っているわけもない。それくらい昔の戦争であれば、遺恨も残ってはいるはずもない。戦争をしていた国自体もなくなっているそうだし。


「その残滓って、どういうものなんだ?」

「見ればわかるよ。そろそろだ」


切り立った崖の上へと到着した。古びた、しかしとても大きな砲が一門ある。見渡しがとても良いから、大砲を使うにはもってこいだ。とても素晴らしい立地だ。


「使うのか?これ。」

「はい。勿論、これを用いて敵を撃滅します。」

「ぶっ放せば今回の依頼は終わりだ。」


それほど簡単な依頼であるのなら、僕を連れてくる必要もなかったのではないだろうか。そういえば、僕の新人研修だったか。撃たせてもらえるのだろうか。


「砲身を点検して、一発空砲を撃つだけだ。どうだ、やってみるか?」

「なら、早く始めない?僕でもできるしょうし」

「もう点検は終わらせましたよ。」


速い。見学なら見学といったほしいものだ。大砲の中を見る暇もなく点検が終わってしまった。


「流石だな。あとは・・・」

「空砲か。」


そっちだ、と言わんばかりにヴィレが指さした。指された場所にあった空砲を詰めた。旧バーミリオン3式大砲だな。砲身は美しく、念入りに手入れされている。常に手入れされ続けてきたのだな。これほど古い大砲が今の今まで綺麗に残っていたとは、素晴らしいな。良し撃とう、今すぐ撃とう、さあ撃とう。その素晴らしき爆発を私に聞かせておくれ。その楽しみを邪魔する声がする。


「ちょっとまて!それ実包だ!」

「てェッ?!」


と、ヴィレに止められたが、僕の手をはもう勝手に砲に火を点けていた。大砲が轟音を響かせる。素晴らしき轟音を響かせ、砲弾が天高く放たれる。やはり見事な大砲だな。私が設計しただけはある。大砲に付属している観測用望遠鏡で使い、着弾地点を確認する。着弾地点では火柱が立っており、先程見たモノに近い鎧を着た兵士共が、陣地ごと蹴散らされていた。やはり素晴らしき火力だ。なんとも、ああなんとも良い物か。やはり、もう少し改良し、量産し、全ての砦に配備させておけばよかっただろうか。望遠鏡で砦があったであろう、あたりを見渡す。もう全てなくなってしまっている。残滓が残ってると言っていたのに、残念だ。


「撃つの空砲でしたよね・・・」

「バカ!まあいいさ。どうせその位置に実弾も撃つ計画だったからな。」

「偶然にしては着弾位置が完璧ですね。調整はしましたが。最後の微調整は自分でしましたよね。従軍経験でもあるんですか?」

「そういった覚えはない、と思います。先の鎧との戦闘も、考えるよりも体が動いていて、とても不気味なんです。」


ずっと、僕は僕である。それには確信を得ているのに、たまに僕の中に誰かがいる。私のことが、とても鬱陶しい。たまに出てきてはすぐに引っ込む。戦いにわくわくとして、血が沸くようになってしまうのがとても鬱陶しい。そもそも、僕は戦いたくないのに。研究とかのほうが性に合っている。と、思う。

何も覚えていないくせに。そう思うのは、なぜなんだろうか。


「やっぱり何も、思い出せないか。適当に戦わせれば、火事場の力かなんかで思い出すと思ったんだけどな。」

「記憶喪失の人間に行う仕打ちじゃないと思うんですけど・・・」

「ヴィレ、そろそろ。あちらも準備がてきたそうです。」


レ二がヴィレに耳打ちする。ヴィレが真面目な顔になった。いや、ちょっと笑っているような。

さっきからヴィレもレ二も、何か変だ。僕に何か隠している感じがした。

少し、いやずっとだ。僕の思考も行動も、ずっと違和感しかない。ここに連れて来られてからずっとだ。


「よし、仕事は終わりだ。早く帰ろう。

「はい。時間もないですからね。」

「レ二、鈴を。」


レニが鈴がリンと鳴らした。反響するように、同じ鈴の音がうるさいほど鳴り響く。僕は余りのうるささに耳を塞ぎ、倒れこんだ。僕は目の前が真っ暗になった。


(※)


おはようございます。僕は今、身動きが取れません。目が見ず。縛られております。なんででしょうか。僕は何もしていないのに。僕が不審人物であることは認めよう。確かに、僕が異常であることも認めましょう。勿論、僕も自らが不審者であることは理解している。でも、縛られるような謂れはない。声が出ない。口が塞がれている。息がし難いので、早く剥がしたい。


「起きたね。おはよう。元気かい?」

「――!―――――――――!」

「答えられないよね~?はははははっははははっ!!」


どのような人物かわからぬよう、ボイスチェンジャーを使ったのか歪んだ声で。気が狂っているとしか思えない調子で、嗤って言った。むしろ面白いほどの声の調子だ。僕まで笑いそうになる。


「とりあえず拘束解くね~!くくっ!ははははは!」


腕、足、口、目。全ての高速が一気に解かれる。口はテープでふさがれていたので、口回りが痛い。急に視界が開かれまぶしい。バタン、と扉が開く音がした。聞き覚えのある声がする。


「ちょっとカイ姉さん今回のは洒落になりませんよ!」

「たは~!!!おかし~~!!!!涙出てきた~!」

「カイ、ふざけすぎるな。本当に悪戯好きが治らんな」

「いいじゃんハス爺。あっちの兄妹もノリノリだったじゃな~い?ふふっ」


見たことのな長髪の人が腹を抱えて笑っている。その周りに老人と青年と少年と、レニらしき人が見える。まだ、視界ははっきりせず少しぼやけている。先程開いたと思われる扉の外に、ヴィレらしき人影が見えた。


「いや、オレはそんな乗り気じゃねぇし」

「ボクはたのしかったよ~?」


青年というには低い声と少年の子供らしい声が聞こえる、彼らは兄妹らしい。つまり少年ではなく少女だった。視界がはっきりとしてきた。どうやら、僕は、この兄妹と未だ抱腹絶倒している人の悪戯に巻き込まれていたようだ。


「それで、僕は何をされていたわけで・・・?」

「悪戯ですよ、通過儀礼みたいなものですね。新人が来るたびにこうなんですから。リヒの時の悪戯では、新任祝いのケーキを爆発させたんですよね・・・」


不憫だ。でも、その場面の想像がつく。ずっと笑っていたり、騒いでいる声が聞こえる部屋でヴィレが言った。


「デルン、紹介しよう。俺の部下でお前の先輩に当たるバカ共」

「バカとは何だ、バカとは!」

「地獄耳が。先輩に当たる素晴らしき者共だ。」


黒く長い髪で長身の女、白髪を結わえた老紳士。筋骨隆々な男と、その面影のある小さくぼーっとしているような少女。ヴィレとレニ以外は、事務所でたまに見た面々だ。事務室へ入って来たのは、ヴィレとレニの二人だけだったので、他は面識はほぼ無い。


「まだ笑ってる黒いのがカイ、白いジジイがハス。デカいのがジンで、ちっちゃいのがデリだ。」


悪戯を終えた面々が紹介される。リヒが、事務所の人数は僕を入れて8人と言っていた。これで全員である。にしても、紹介が適当だ。ただ、そんな紹介の仕方はとても友好的(フレンドリー)なので、彼らの信用を物語っているように思う。


「レニとリヒ以外には言ってなかったか。デルンは記憶喪失で発見者の俺が引き取ったんだ。」

「僕が彼らを紹介されていないってのはまだわかりますけど、僕の事も全く説明してないんですか?!」

「ああ、名前だけしか伝えてない。」


笑いも止み、呆れた雰囲気があたりを支配する。皆、慣れているのだろう。僕も呆れる事に慣れてきてしまったみたいだ。

この話からあとがきに簡単なキャラ紹介を書こうと思う。適当に書いているから整合性が取れなくなっても知らん。

3話はキャラ紹介その2だ。1は2話につけておく

キャラ紹介その2と3

:ヴィレ(ヴィータ・"アメジスト")

回転式拳銃を使って戦う。弾切れの時は手首につけた機械から暗器を飛ばすぞ。かなり適当な性格で、青い目がとても特徴的。その性格とは裏腹に隠し事が多く、ちゃんとする時はちゃんとするタイプの人だ。ヴィレはあだ名らしい。21歳

:レ二・モイライ

尖った篭手で相手を殴る。デスマス調のしっかりとした性格。ヴィレへの信頼も、ヴィレからの信頼も厚い相棒のような立ち位置の子。綿あめなどが好き。20歳

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