みんなで温泉!なのだけれど、ヨハネスとムースが心配ね
食事が終わって部屋ですこし休息をとってからメープルたちは入浴道具や着替えをもって大浴場へと向かった。
「温泉! いつもは狭いお風呂ばかりでしたから、今日は思いっきり足を伸ばせますわ!」
「フフッ。嬉しそうですね」
「美琴様やメープル様と一緒に入浴できるんですもの。嬉しいに決まっていますわ。あ、そうですわ。美琴様のお背中を誠心誠意洗って差し上げても構いませんわ」
「それではお願いしますね」
「……そのついでに濃厚なスキンシップを……」
「何か言いましたか?」
「いえ。なんでもありませんわ」
慌ててごまかすムースだが美琴の耳にはバッチリ願望は聞こえていただろう。
それをとがめないあたり彼女の寛容さは度を超えている。
特に問題もなく男湯と女湯に別れようとしたところで、メープルがヨハネスを引き留めた。
「あなた、男湯に入るつもりなのかしら」
「何か問題でもある?」
「いえ、その……そうね。問題はないのだけれど、男の目に気を付けてね」
口ごもりながら言うとヨハネスは腹を抱えて笑って。
「安心してよ。僕が襲ってきた狼たちを食べてしまうから」
「それはそれで問題ね」
「僕がいますから大丈夫ですよ」
無表情で星野が告げた。
彼がいればヨハネスも無防備に色香を振りまくことを自制するだろうか。
いや、マイペースに湯に浸かっている様が想像できるだけに若干の不安もあるが、ここは星野を信じるしかない。
「頼んだわよ」
「任されました」
ふたりは男湯の暖簾をくぐって消えていった。