ヨハネスがこんなに食べるなんて予想できないわよ……
ホテル内のビュッフェは時間帯も影響しているのか閑散としていた。
その中で六人用の席に腰かけたスター流のメンバーだけが異様に目立っていた。
星野は何度もカレーライスとカレーパンをお代わりし、美琴はおにぎりばかりを食べ、李は激辛の麻婆豆腐やチャーハンなどの中華料理を、ムースはスイーツばかり取っている。
極端な偏食者が多い中でヨハネスだけは唯一各国の料理を満遍なく取っているのだが、その量が凄まじい。
大皿に山のように盛り付けられたライス、パスタ、パン、二リットルのオレンジジュースに牛乳。
ソーセージを三十本、ハムを二十枚、ベーコンを四十枚、スクランブルエッグを山盛り、野菜サラダもサラダボウル六杯分、鳥の丸焼きを二羽、豚の丸焼きを一頭ぺろりと平らげている。
彼の腹を凝視し食べる前と同様に痩せている現実にメープルは我が目を疑った。
ヨハネスが大食いであるという風の噂で耳にしておりそれ故にジャドウから煙たがられているという話は知っていたが、実際に目の当たりにするとこれほどのものかと驚愕してしまう。
丁寧に口を拭って彼は言った。
「お代わりしてこようかな。それともデザートを食べようかな」
「ちょ、ちょっと待って。あなたまだ食べるつもりなの?」
「これでもまだ二割ぐらいしか食べていないから、まだまだ入るよ」
「嘘でしょ……」
底知れぬ食欲に戦慄しながらも黙って見守るしかない。まるでバキュームだ。
近頃は大食い女子がブームになっているが、ヨハネスが大食い大会に参加すればぶっちぎりで優勝するに違いない。女子の間に紛れたとしても違和感はないだろう。
なにしろ彼の美貌は普通に接している分にはメープルでさえ見惚れ、性別を忘れてしまいそうになるほどのものだからだ。
プレートをもって歩く彼はそれだけで絵になりそうだった。