ホテルの部屋に到着してから最初にすべきことは何かしら?
長い道のりを歩いてようやく到着したホテルは観光地らしく立派なもので、受付で券を渡すと二部屋のスイートルームへと通された。
部屋割りはヨハネスと星野、美琴とメープル、ムース、李の4人でわけられている。
部屋に入るとスターの言葉通りにメンバーカラーのスーツケースに各々の荷物が入っていた。
「ふっかふかですわぁ」
ムースは目を輝かせてキングサイズのベッドにダイブし、枕に頬ずりする。
「気が早いわね。まずはケースを開けてから食事にいきましょう」
「ねぇ美琴様。このベッドの柔らかさなら夜のお楽しみも倍増ですわね」
「ムースさん、今日はダメですよ。みなさんの迷惑になってしまいます」
「まあ厳しいですわ。こういうときこそ交流を深めないといけませんのに」
平常運転のムースにメープルは肩をすくめ、耳を傾けていた李は会話のあまりの内容にボッと顔中に血液が集まり真っ赤になった。
「君は相変わらず大胆だね」
李の言葉にムースは軽く頬を膨らませ。
「李様もわたくしを見習ってもっと積極的にアピールされたらいいですのに。わたくしはもちろんこと、大抵の玩具どもなら色仕掛けは有効ですわよ。ねぇ、美琴様」
「え、えっと……そう、ですね……?」
非常にぎこちない形で美琴は同意した。顔には苦笑が刻まれている。
「残念だけど、ボクの最愛の人は色仕掛けで動じるような人ではないからね」
ふうと息を吐いた李にはどこか諦観があった。
彼女はカイザーに片想い中だ。
あまりにも難儀な相手に惚れたものだとメープルは思ってからパンと手を叩く。
音につられて皆の注目が集まったことを確認し、彼女は口を開いた。
「まずはケースの中身の確認。それから食事にするわよ」
「はいっ!」
素直に返事をする皆にメープルは満足そうに頷いた。
こうしてみると妹がたくさんできた気持ちになって嬉しさがこみあげてくる。
もっとも喜びばかりではなく苦労も絶えないが。
部屋を出る際にメープルは李に耳打ちをした。
「あとで話があるのだけれど、いいかしら?」
「悪いけど告白ならお断りだよ」
「違うわよ。もっと大事な話」
「わかったよ。お風呂の時間でね」
「お姉さま、李様! 参りますわよ!」
「ごめんなさい。すぐ行くわ」
メープルは慌てて美琴たちを追いかけた。