李はそれでも立ち上がる
「とぼけったって通じないよ。やせ我慢はせずに素直に認めたらどうだい。アンタはもう限界なのさ」
「何を言っているの?」
思わず訊ねるとサソリンダは吐き捨てるように答えを返した。
「この子はもう限界ってことさね」
李を見ると顔が真っ青になり、身体が細かく震えている。
額からは大量の汗が流れどう考えても普通の状態ではない。
「ホーラみな。こいつはアタシの毒に参っちまったのさ」
「下手な考えはやめてほしいね。ボクは全然……平気だよッ」
タックルを慣行してサソリンダからダウンを奪うと彼女の身体を反転させて顎を両手で固定し一気に身体を反らすキャメルクラッチを極めた。
「判断力が鈍っている証拠だよ。アタシにはそんな技効果ないってのにさあっ」
李の身体の真後ろにはサソリンダの尻尾がある。尾の先が光ったかと思うと李の左太腿に突き刺さった。
「グ……アアアアアッ」
血が噴き出し服が破れて李の引き締まった太腿が紫色に染まっていく。
紛れもなく毒の影響を受けている。強引に尻尾を引き抜くも技のかかりが甘く脱出されてしまった。
ボタボタと血が滴って李の体勢が崩れる。
サソリンダは彼女の腹に膝蹴りを食らわせ前屈みにさせると胴を掴んで上空に放った。
それを跳躍で追いかける。
この流れはマズい。
「李、気をつけて!」
私の言葉が届いたのか彼女が反応を示した。けど、初動が遅かった。
身体を尻尾で巻き付けられ締め上げられてしまう。
「スコーピオンドライバー!」
解き放たれた李は凄まじい勢いで落下して脳天をマットに激突してしまう。
先ほどヨハネスが倒されたパターンと全く同じだった。
「終わったわね」
「……いや、まだだよ……」
私は目を見開いた。李は上体を起こして子鹿のように足を震わせながらもダウンを拒否して立ち上がってきた。寝ていたほうが楽になれるのにあえて困難な道を彼女は選んだ。
「みんなを守るためにも寝てなんていられないよ……」
「どうやらアンタ、よっぽど死にたいらしいねぇ」
「ボクの力を侮るなよ」




